英国の競争規制当局が、AppleとGoogleのモバイルブラウザ市場における支配的地位について調査を開始する方針を示した。Competition and Markets Authority(CMA)は、両社のブラウザ戦略が消費者の選択肢を制限し、イノベーションを阻害している可能性があると指摘している。2025年に施行される新しいデジタル競争法に基づき、包括的な調査が実施される見通しとなった。
規制当局が指摘する競争阻害の実態
CMAの独立調査グループは、特にAppleのiOSプラットフォームにおける制限的な施策に懸念を示している。調査報告書によると、Appleはプログレッシブウェブアププリ(PWA)の機能を制限することで、アプリストアを介さないWebアプリの展開を実質的に困難にしているとされる。この制限により、Webページの高速読み込みなど、イノベーティブな機能の実装が妨げられているという。
さらに、GoogleとAppleの間で締結されている収益分配契約の存在も焦点になっている。この契約により、iOSデバイスにおけるデフォルト検索エンジンとしてGoogleが設定され、両社のモバイルブラウザ市場における競争意欲が著しく低下している可能性が指摘されている。専門家の試算によると、Googleは年間約200億ドルをAppleに支払っているとされる。
新たな規制枠組みと両社の対応
2025年3月までに最終報告書が提出される予定の本調査は、新たに制定されるDigital Markets, Competition and Consumers Act(DMCC)に基づいて実施される。DMCCは、デジタル市場における反競争的行為を防止することを目的としており、EUのDigital Markets Actに類似した規制枠組みを提供する。
両社の反応は対照的だ。Appleは調査結果に強く反発し、DMCCに基づく市場介入がユーザーのプライバシーとセキュリティを損なう可能性があると主張している。一方、Googleは自社のAndroidプラットフォームのオープン性を強調し、消費者の選択肢拡大に貢献してきたと反論している。
Xenospectrum’s Take
この調査は、デジタルプラットフォームの支配力に対する世界的な規制強化の流れを反映している。特に注目すべきは、AppleのPWA制限が明確な調査対象となった点だ。PWAはアプリストア手数料からの解放を意味し、Appleの収益モデルを直接脅かす存在となりうる。両社の「相互利益的な」検索エンジン契約も、実質的な両社による独占形成のツールとして機能している可能性が高い。皮肉なことに、消費者の利便性向上を謳う両社の戦略が、結果として市場のイノベーションを抑制している構図が浮き彫りとなったわけだ。
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