米Intelが受けたCHIPS法に基づく78億6500万ドルの助成金契約により、同社の製造部門売却に厳しい制限が課されることが明らかになった。同社が製造部門を分社化する場合でも過半数の支配権を維持することが求められ、米国の半導体製造基盤を守る狙いが鮮明になった形だ。
製造部門の支配権維持が必須条件に
Intelに対する補助金契約では、Intel Foundryと呼ばれる製造部門を分離して非公開企業とする場合、同社は少なくとも50.1%の所有権を維持しなければならないとされている。さらに、同部門を上場企業として分離する場合でも、Intelが筆頭株主でない限り、単一の第三者が35%以上の株式を保有することが制限されるとのことだ。
この規制は製造部門だけでなく、Intel本体にも及んでおり、第三者が35%以上の所有権または議決権を取得することも制限されている。また、IntelとIntel Foundryの間のウェハー購入契約は維持されなければならず、これによって製造部門の財務的な安定性を確保する狙いがある。
さらに、Intel Foundryの所有権や支配権に関する重要な変更は、すべて米国の国家目標に沿ったものでなければならない。ただし、これは対米外国投資委員会(CFIUS)による承認が必要な一般的な規制の範囲内とされている。米商務省の広報担当者によると、このような支配権に関する条件は直接助成金を受けるすべての企業との間で交渉されており、Intelに特有のものではないとしている。
巨額投資計画と研究開発義務
Intelは助成金契約の条件として、米国内での大規模な投資と研究開発の実施を義務付けられている。2024年から2028年までの5年間で、少なくとも350億ドルを米国内での研究開発に投資することが求められており、これは同社の技術革新能力の維持・強化を目的としている。
さらに同社は、アリゾナ、ニューメキシコ、オハイオ、オレゴンの4州において、合計12の最先端製造施設(ファブ)と先進パッケージング施設の建設・整備・運営を進めることが求められている。これらのプロジェクトの総投資額は900億ドルに達する見込みである。これほどの規模の設備投資と研究開発投資は、Intelが米国の半導体製造基盤の中核を担うことを実質的に確約するものとなっている。
助成金契約の条件に従えば、Intelはこれらの投資計画を予定通り実施し、最先端チップの製造を米国内で継続することが求められる。契約条件に違反した場合、助成金の返還を求められる可能性があり、支配権の変更に関する取引を行う際には米商務省の承認が必要となる可能性も示唆されている。
Xenospectrum’s Take
この規制はIntel CEOのPat Gelsinger氏が9月に表明した製造部門の分社化戦略に大きな制約を課すことになった。米政府は巨額の助成金を通じて、実質的にIntelの経営の自由度を制限し、国内の半導体製造能力の維持を確実なものにしようとしている。皮肉なことに、政府支援を受けることで、Intelは自社の構造改革の選択肢を狭めることになったと言えるだろう。
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