モジュール式設計で知られるFrameworkが、初のデスクトップPC「Framework Desktop」とAMD Ryzen AI 300シリーズ搭載の「Framework Laptop 13」、そして初のコンバーチブルノートPC「Framework Laptop 12」の3つの新製品を発表した。特にデスクトップPCは、4.5リットルの小型サイズながらAMD Ryzen AI Maxプロセッサを搭載し、ゲーミングからAIワークロードまでをカバーする高性能が特徴だ。
Framework Desktop — モジュール設計の小型ハイパフォーマンスPC
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Frameworkの初のデスクトップPCとなる「Framework Desktop」は、同社の「修理可能で、アップグレード可能で、長期間使用できる」という製品哲学をデスクトップ市場に拡張する試みである。第3四半期に出荷が開始される予定で、現在1,099ドルから予約受付中だ。
高性能コンポーネントと独自設計
Framework DesktopはAMDの最新プロセッサ「Ryzen AI Max」を採用している。このプロセッサは、最大16コアCPU(5.1GHzブースト)、Radeon 8060S統合GPU(NVIDIA RTX 4060〜4070相当)、そして50 TOPS対応のNPUを搭載し、Windows Copilot+対応PCとしての要件も満たす。
注目すべきは冷却設計で、4.5リットルという小型筐体ながら、Cooler MasterとNoctuaと共同開発した120mmファンにより、120W持続電力(ブースト時140W)での動作を可能にしている。
標準的なmini-ITX形状のマザーボードを採用しており、ユーザーが独自のケースに移設することも可能だ。ポート構成は背面に2基のUSB4、2基のDisplayPort、HDMI、5Gbit Ethernetを備え、前面にはノートPC製品と同様の拡張カードスロットを2つ装備している。
モジュール式設計の例外と理由
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興味深いのは、通常Frameworkが重視する「モジュール式設計」に例外を設けた点だ。Framework Desktopのメモリはマザーボードにはんだ付けされており、ユーザーによる交換ができない。これは、AMD Ryzen AI Maxの256-bitメモリバスによる256GB/sという高速なメモリバンド幅を実現するための技術的制約だとFrameworkは説明している。
「メモリモジュールを装着できるようにする技術的方法を見つけるためにAMDと数ヶ月協議したが、最終的に256-bitメモリバスで高スループットを実現することは技術的に不可能と判断した」と創設者のNirav Patel氏は述べている。
この制約を補うため、同社はメモリ価格を「他のブランドよりも合理的」に設定している。最上位構成(Ryzen AI Max+ 395・128GBメモリ)でも1,999ドルという価格設定は、同じメモリ容量のMac Studioの4,800ドルと比較しても競争力がある。
AIワークロード向けの高性能
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Framework Desktopの大きな特徴は、AIワークロードに対する高い処理能力だ。大容量メモリと高速メモリバンド幅を活かし、「Llama 3.3 70B Q6」などの大規模AIモデルをリアルタイムの会話速度で実行可能だとしている。USB4と5Gbit Ethernetを活用して複数のシステムを接続すれば、「DeepSeek R1 671B」のような超巨大モデルも実行できるという。
カスタマイズオプション
前面パネルは21個のカラーカスタマイズ可能なタイルで構成され、サイドパネルは黒色または透明を選択可能。LANパーティや移動時に便利なキャリーハンドルもオプションで用意されている。タイルデザインはオープンソース化されており、ユーザーが3Dプリンターで独自のタイルを作成することもできる。
Framework Laptop 13 — AMD Ryzen AI 300シリーズ搭載モデル追加
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既存のFramework Laptop 13に、AMDの最新プロセッサ「Ryzen AI 300シリーズ」を搭載したモデルが加わった。本日から予約受付が開始され、4月から出荷が始まる予定だ。
主要スペックと改良点
- プロセッサ: Ryzen 5(6コア)、Ryzen 7(8コア)、Ryzen 9 HX 370(12コア、最大5.1GHz、16 GPUコア)
- メモリ: DDR5-5600(2スロット、最大96GB)
- ストレージ: PCIe 4 M.2 2280スロット(最大8TB)
- ディスプレイ: オプションで2.8k 120Hz 13.5インチ 3:2マットディスプレイ
- バッテリー: 61Wh
- 接続性: Wi-Fi 7(AMD RZ717モジュール)
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放熱システムは大型10mmヒートパイプとHoneywell PTM7958相変化熱インターフェース材を採用し、パフォーマンスを最大限に引き出す設計となっている。キーボードも改良され、スペースバーやシフトキーなどの幅広キーの構造が見直され、スピーカー音量を上げた際のビビり音を低減している。
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アップグレードパスの維持
重要なのは、2021年の初代モデル(第11世代Intel Core)から現在のLaptop 13所有者まで、全ユーザーがこれらの新コンポーネントでアップグレードが可能な点だ。これはFrameworkの長期サポート哲学を体現している。
AMD Ryzen AI 300シリーズモデルのDIYエディションは899ドルから、完成品は1,099ドルから。前世代のAMD Ryzen 7040シリーズ搭載モデルも引き続き生産され、749ドルからの新価格で提供される。
Framework Laptop 12 — 耐久性重視の初コンバーチブル
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Frameworkが初めて手がけるコンバーチブル(2-in-1)モデルとなるFramework Laptop 12は、12.2インチのタッチスクリーンを搭載し、学生向けに耐久性を重視した設計が特徴だ。4月から予約が開始され、2025年半ばに出荷予定。
堅牢設計と使いやすさ
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5つのカラーバリエーションが用意され、各色にマッチしたスタイラスもオプションで提供される。本体は衝撃吸収TPU素材をPC/ABSプラスチックにオーバーモールドする二重構造となっており、内部には金属構造も備えることで堅牢性を確保している。
「修理のしやすさ」にも重点が置かれており、Frameworkの製品の中でも「最も修理が簡単」と位置づけられている。
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主要スペック
- プロセッサ: 第13世代Intel Core(i3およびi5)
- メモリ: DDR5-5200(最大48GB)
- ストレージ: NVMe(最大2TB)
- ディスプレイ: 1920×1200、400 nit以上の明るさ、タッチスクリーン&スタイラス対応
- 接続性: Wi-Fi 6E
詳細な仕様と価格は今後公開される予定だ。
Frameworkの製品哲学と業界への影響
Frameworkは創業から5年を経て、「消費者向け電子機器は修理可能で、アップグレード可能で、長期間使用できるべき」という当初は「論争的」と見られていたミッションの実現に自信を深めている。
特に従来のデスクトップPCはすでにモジュール式でアップグレード可能であるため、Frameworkがデスクトップ市場に参入する意義については業界から注目されている。Tom’s Hardwareは、Framework Desktopを「標準的なコンポーネントを多数採用しながらも、小型サイズと高性能を組み合わせた独自の市場ポジション」と分析している。
また、これらの製品は基本的にDIYエディションとして提供され、ユーザー自身による組み立てを前提としている点も特徴的だ。Framework Desktopについては「最も組み立てやすいPC」を目指して詳細なガイドとビデオを提供する予定としている。
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