Intelは2月24日、ASML社製の最先端High-NA EUVリソグラフィ装置2台を使用して1四半期で3万枚のウェハーを処理したことを明らかにした。この早期導入は、次世代14A製造プロセスへの重要な準備段階であり、半導体製造技術における競争力回復を目指すIntelの戦略的取り組みを示している。
3万枚のウェハー処理とHigh-NA EUV技術の優位性
Intelの上級主任エンジニアであるSteve Carson氏は、サンノゼで開催された会議で、オレゴン州ヒルズボロ近郊のD1開発施設に設置された2台のASML製High-NA(高開口数)EUVリソグラフィ装置を用いて、1四半期で3万枚のウェハーを処理したことを明らかにした。
これらの装置は、各マシンが推定3億5000万ユーロ(約550億円)と言われる高価な最先端機器である。技術的には、従来のLow-NA EUVシステムが1回の露光で13.5nmの解像度を実現するのに対し、High-NA装置は8nmという大幅に向上した解像度を達成している。
Carson氏によれば、これらの新型装置は以前のEUV世代と比較して約2倍の信頼性を示しており、「一定のペースでウェハーを処理できていることはプラットフォームにとって大きな恩恵だ」と述べている。特筆すべき点として、従来の装置では3回の露光と約40の処理ステップが必要だった工程が、High-NA装置では1回の露光と「一桁」の処理ステップに削減されている。
18Aから14Aへ:High-NA EUV技術の展開計画
現在Intelは、今年後半に新世代PCチップとともに量産が予定されている18A製造技術を使ってHigh-NA装置のテストを行っている。同社は次世代の14A製造技術(約1.4nmクラス)での本格的な量産にこれらの装置を導入する計画だが、具体的な量産開始時期は未発表のままだ。
ASMLはこれらのTwinscan EXE:5000システムを「前生産ツール」として分類しており、大量生産用ではないとしている。しかし、Intelによる3万枚という処理数は研究開発用途としては非常に大きな数字であり、同社がHigh-NA EUV時代のリーディングチップメーカーになるという意思の強さを示している。
半導体業界における競争戦略と先行利益
Intelは歴史的に見ると、前世代のEUV装置導入では完全生産までに7年を要し、その間にTSMCに主導権を奪われる結果となった。今回のHigh-NA EUV技術に対する積極的な姿勢は、この教訓を踏まえた戦略転換を示唆している。
一方、TSMCなどの競合他社はHigh-NA EUV技術の採用にやや慎重な姿勢を見せている。Intelが競合他社に先駆けてこの技術を採用することの意義は大きく、フォトマスク用ガラス、ペリクル、特殊化学物質など、将来的に業界標準となり得るHigh-NA EUV製造の様々な側面を開発できる優位性がある。
さに、ASMLはIntelエンジニアからのフィードバックを基にTwinscan EXE:5000 High-NA EUVツールの開発を進めており、これは時間の経過とともにIntelに競合他社に対する優位性をもたらす可能性がある。
Source
コメント