Intelの次世代グラフィックスカード「Arc B580」の公式発売を目前に控え、Geekbenchによる初のベンチマーク結果が公開された。テストデータによると、同GPUはNVIDIAのRTX 4060やAMDのRX 7600 XTと同等の性能を発揮しているようだ。
ベンチマーク結果の詳細分析
今回のベンチマークテストは、最新のIntel Core Ultra 9 258Kプロセッサと48GBのDDR5-8400メモリを搭載した、ハイエンドな検証環境で実施された。この構成はB580の潜在能力を最大限に引き出すことを意図したものと考えられる。テスト環境がこのように最適化されていることは、実際の一般ユーザー環境での性能とは若干の乖離が生じる可能性があることを示唆している。
具体的な数値を見ていくと、Arc B580はOpenCLベンチマークで98,343ポイントを記録した。これは前世代のArc A580と比較して約10%の性能向上を示している。さらに注目すべきは、Vulkanベンチマークでの103,445ポイントという結果だ。この数値は前世代モデルから約30%の大幅な性能向上を実現しており、IntelのGPUアーキテクチャが特にVulkan APIでの処理効率を著しく改善させていることを示している。
APIごとの性能差も興味深い特徴を示している。RTX 4060との比較では、OpenCLテストでは若干の劣勢を示したものの、Vulkanテストでは約6%のリードを確保している。この結果は、IntelのGPUアーキテクチャがVulkan APIとの親和性が特に高いことを示唆している。一方、AMD RX 7600との比較では、両方のAPIテストにおいて優位性を示したが、これは各社のアーキテクチャ設計の違いが顕著に表れた結果といえる。
ただし、これらの合成ベンチマークの結果は、使用されたドライバーのバージョンに大きく依存する可能性がある。Intelは過去にドライバーの最適化によって大幅な性能向上を実現してきた実績があり、今回のテストで使用されたドライバーが最適化された最新版であったかどうかは明らかにされていない。この点は、製品の実際の性能評価において重要な変数となる可能性がある。
価格性能比における競争力
B580は米国では250ドルという価格設定で、競合製品であるRTX 4060やRX 7600と比較して約50ドル安価に位置付けられている。さらに、12GBのVRAMを搭載しており、次世代のRTX 5060が8GBのVRAMにとどまると予想されることを考慮すると、高解像度ゲーミングにおいて優位性を持つ可能性がある。
Intelは自社の性能評価において、B580がラスター処理性能でRTX 4060を32%、RX 7600を26%上回るとしているが、これらの数値は今回のGeekbenchの結果とは若干の乖離が見られるのが現状だ。この点については、今後のドライバーの成熟につれて改善が見られることを期待したい。
また、日本における価格も、AsRock B580 Steel Legendが52,980円、B580 Challengerが49,980円と、RTX 4060シリーズが現在4万円台前半で売られている事を考えると、海外に比べて割高感が否めないのも残念な所だ。VRAMが12GBである点は評価できるが、もう少しこなれて来た頃が買い時だろうか。
Xenospectrum’s Take
今回のベンチマーク結果は、IntelがGPU市場で本格的な競争力を獲得しつつあることを示している。しかし、Geekbenchのような合成ベンチマークは、実際のゲームパフォーマンスを完全に反映するものではない。
特に注目すべきは、IntelがXeSS Frame Generationという独自のAI支援型フレーム生成技術を実装していることだ。これはNVIDIAのDLSS Frame Generationに匹敵する可能性を秘めており、AMDのFSRに対して技術的優位性を確保できる可能性がある。
ただし、ドライバーの安定性という歴史的な課題が依然として存在する。12月12日の製品発売後、実際のゲームベンチマークやユーザーレビューを注視する必要があるだろう。
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