TSMCの先端プロセスは、SamsungやIntelと言った他ファウンドリと比較して旺盛な需要により、生産能力はフル稼働状態にあるが、こうした需要の高い先端プロセスについて、同社は海外展開と電力価格の上昇によるコスト圧力から、値上げを検討している様だ。
TSMC1社への強い依存が浮き彫りに
TrendForceによると、TSMCのN5(5nm)、N4(4nm)そして最先端のN3(3nm)プロセスの生産ラインは現在フル稼働状態にあるとのことだ。TSMCの先端プロセスは、NVIDIAのHopperやBlackwellといったAI向けGPU、iPhoneのA17 Proや今年後半に登場するQualcommのSnapdragon 8 Gen 4等のハイエンドスマートフォン向けSoC、そしてCopilot+ PCの登場による新たなノートPC向けSnapdragon Xシリーズチップや、AMDのRyzen AI 300、IntelのLunar Lakeなど、業界を牽引する全ての製品の生産を担っている状態であり、どれもこれもが需要が高い製品ばかりである。
こうした旺盛な需要を受け、TSMCの先端プロセスの稼働率は2024年後半には100%を超えると予想され、2025年まで強い需要が続くとTrendForceは見込んでいる。
特に3nmプロセスの需要はすさまじい物があり、AppleやNVIDIAなどの主要な顧客7社が全ての生産枠を確保しているため、2026年まで受注は埋まっている状況とも言われている。こうした状況を受けて、TSMCは2025年にはN3プロセスの価格を5%程度引き上げることを検討していると、台湾の経済紙「工商時報」は伝えている。また、5,4nmプロセスもAIアクセラレータ需要により同様に値上げが見込まれるとのことだ。
加えて、TSMCの先端パッケージングの需要も旺盛なようだ。NVIDIAが世界一の時価総額を記録するなど、AI半導体需要は極めて高い状態が続いており、特にTSMCの先端パッケージング技術「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」については、AIアクセラレータは、HBMとの統合でこれに強く依存していることから、NVIDIA、AMD、Broadcom、Amazon、Marvellによる受注合戦が繰り広げられている。だが、TSMCのCoWoSについては、NVIDIAがその生産枠の半分を握っており、TSMCからの値上げをすんなり受け入れることで他社にその枠を譲ろうとせず、競合他社よりも多くの製品を出荷し、シェアを握ろうとしているようだ。
CoWoS生産能力の不足は2025年まで続く見込みで、その需要は60万枚にも及ぶ可能性があると言う。TSMCは生産能力の増強を図っているが、それでも2025年の供給量は53万枚に留まると見られており、その差は7万枚の供給不足になると見込みだ。工商時報は、2025年のCoWoSパッケージングの年間価格が10%から20%の上昇を予想している。
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