複数の国際的な気候観測機関は1月11日、2024年が観測史上最も暑い年であったことを一斉に発表した。世界気象機関(WMO)の分析では、地球の平均気温は産業革命前と比較して約1.55℃上昇し、パリ協定が警戒する1.5℃の閾値を年間平均で初めて超過した。気候変動の加速を示す重要な年となり、その結果が科学界に衝撃を与えている。
複数機関による確認で強まる信頼性
気候変動の監視において世界をリードする複数の研究機関が、それぞれ独自の分析手法で2024年の気温データを検証した結果、いずれも観測史上最も暑い年であったという結論で一致した。欧州連合のコペルニクス気候変動サービス(Copernicus Climate Change Service: C3S)の分析では、2024年の世界平均気温が産業革命前(1850-1900年)と比較して1.60℃上昇。この数値は、パリ協定が定める1.5℃という重要な閾値を年間平均で初めて超えたことを示している。
世界気象機関(The World Meteorological Organization: WMO)も独自の総合分析を実施し、1.55℃(±0.13℃)の上昇を確認した。WMOの分析は特に重要視されており、6つの主要な国際データセットを統合することで、より包括的な評価を可能としている。米国の代表的な研究機関であるNASAとNOAAも、それぞれ1.47℃、1.46℃という若干低めの上昇を報告しているが、この差異は主として産業革命前の基準期間(1850-1900年)の気温データの解釈方法の違いに起因している。
NASAのGavin Schmidt氏によると、機関間でみられる温度上昇値の違いは「ほぼ完全に海面温度データセットの使用方法の違いによるもの」だという。英国気象局とイースト・アングリア大学の気候研究ユニットが共同で実施した分析(HadCRUT)では、1.53℃(±0.08℃)という数値を報告しており、これら主要機関の推定値の中間に位置している。
「これらの観測結果は、地球温暖化が冷徹な事実であることを改めて証明している」と国際連合事務総長のAntónio Guterres氏は警鐘を鳴らす。WMO事務局長のCeleste Saulo氏も「気候の歴史が私たちの目の前で展開されている。記録更新は1年や2年ではなく、10年連続で起きている」と述べ、事態の深刻さを強調している。
特筆すべきは、これらの機関が今回、データ公表のタイミングを意図的に揃えたという点だ。C3Sの気候戦略リーダーであるSamantha Burgess氏は「過去10年間の各年が、観測史上最も暑い10年に入っている。我々は今やパリ協定で定義された1.5度の限界線上で綱渡りをしている状態であり、直近2年間の平均はすでにこのレベルを超えている」と説明している。この状況について、C3S所長のCarlo Buontempoは「人類は自らの運命を握っているが、気候変動への対応は科学的証拠に基づいて行われるべきだ」と述べ、今回の複数機関による一致した観測結果の重要性を強調している。
これら複数の独立した研究機関による分析結果の一致は、地球温暖化の実態をより確固たるものとして示している。わずかな数値の違いはあるものの、それらは主として解析手法の違いや、特に19世紀の気温データの扱いの違いに起因するものであり、温暖化の全体的なトレンドや2024年が記録的な暑さであったという結論に影響を与えるものではないことが、各機関の詳細な説明によって明らかにされている。
異常な温度上昇の具体的な証拠
2024年の地球温暖化は、その規模と持続性において前例のない特徴を示している。コペルニクス気候変動サービス(C3S)の詳細な分析によれば、7月22日には世界平均気温が17.16℃という史上最高値を記録。さらに特筆すべきは、年間を通じて11ヶ月もの間、月平均気温が産業革命前と比較して1.5℃以上高い状態が継続したことだ。
この異常な温暖化は、時期的な特徴も示している。2024年の前半は特に顕著な高温を記録し、1月から6月までの各月がそれぞれの月における過去最高気温を更新した。後半も依然として高温が続き、7月から12月にかけては、8月を除いて各月が2023年に次ぐ2番目の高温を記録。8月については2023年と同値の最高気温となった。これは、単なる一時的な異常ではなく、持続的な温暖化傾向を示す証拠として専門家たちに受け止められている。
海洋温度の上昇も、かつてない規模で進行している。中国科学院大気物理研究所のLijing Cheng教授が率いる7カ国31機関の科学者54名による共同研究では、海洋の温暖化が史上最高レベルに達していることが確認された。年間平均海面温度は20.87℃を記録し、1991-2020年の平均より0.51℃も高い値となった。より深刻なのは、表層だけでなく深度2000メートルまでの海水温も記録的な上昇を示していることだ。2023年から2024年にかけての海洋上層部の熱量増加は16ゼタジュールに達し、これは2023年の世界の総発電量の約140倍に相当する膨大なエネルギーである。
大気中の水蒸気量も記録的な水準に達し、1991-2020年の平均と比較して約5%高い値を示した。これは2016年と2023年の過去最高記録をさらに1%以上上回る数値である。高温と高湿度の組み合わせは、人体への熱ストレスを増大させる要因となっている。7月10日には、地球表面の約44%の地域が「強度」から「極度」の熱ストレス状態に置かれ、これは平均的な年間最大値と比較して5%も広い範囲に及んでいる。
温室効果ガスの濃度も上昇を続けており、2024年には二酸化炭素が422ppm、メタンが1,897ppbという新記録を達成した。特に二酸化炭素については、前年比2.9ppmという近年では比較的大きな増加を示している。ECMWFのCAMS所長であるLaurence Rouil氏は、「我々のデータは温室効果ガスの着実な世界的増加を明確に示しており、これらは依然として気候変動の主要な要因となっている」と指摘している。
極地の海氷にも顕著な変化が見られた。南極周辺の海氷面積は、2023年に続いて記録的な低水準を維持し、6月から10月にかけては2023年に次ぐ過去2番目の低さを記録。11月には観測史上最小を記録した。北極圏においても、9月の月間平均海氷面積は観測史上5番目の低さを記録している。これらの変化は、極地における温暖化の影響が着実に進行していることを示す重要な指標となっている。
これらの多面的なデータは、2024年の温暖化が単なる偶発的な現象ではなく、複数の要因が組み合わさった結果であることを示している。特に深刻なのは、これらの変化が相互に関連し、さらなる温暖化を促進する可能性があるという点だ。専門家たちは、これらのデータが気候システムの重大な転換点を示している可能性を指摘している。
パリ協定目標への影響と今後の展望
今回の観測結果は、パリ協定が目指す「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」という目標に対して重要な意味を持つ。ただし、専門家らは単年での1.5℃超過が直ちに目標の達成失敗を意味するものではないと指摘する。
「個々の年が1.5℃の限界を超えることは、長期的な目標が達成不可能になったことを意味しない」とGuterres事務総長は説明する。「しかし、軌道修正のためにはこれまで以上の取り組みが必要だ。2024年の記録的な暑さは、2025年における画期的な気候変動対策の必要性を示している」
C3S所長のCarlo Buontempo氏は「人類は自らの運命を握っているが、気候変動への対応は科学的証拠に基づいて行われるべきだ」と述べ、迅速かつ断固とした行動によって気候の将来的な軌道を変更できる可能性を指摘している。
Sources
- Copernicus Climate Change Service: Copernicus: 2024 is the first year to exceed 1.5°C above pre-industrial level
- National Oceanic and Atmosheric Administration: 2024 was nation’s warmest year on record
- NASA: 2024 Was the Warmest Year on Record
- Met Office: 2024: record-breaking watershed year for global climate
- World Meteorological Organization: WMO confirms 2024 as warmest year on record at about 1.55°C above pre-industrial level
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