回転するブラックホールの重力場は強力で奇妙である。それは空間と時間を自身に巻き戻すほど強力であり、運動や回転といった単純な概念さえも覆されるほど奇妙だ。これらの概念がどのように作用するかを理解することは困難だが、それによって天文学者はブラックホールがいかにして途方もないエネルギーを生成するかを理解することができる。例えば、フレームドラッギングの概念を考えてみよう。
ブラックホールは、物質が極めて高密度に収縮し、時空がそれを事象の地平面内に閉じ込めることで形成される。つまり、ブラックホールは我々が慣れ親しんでいるような物理的な物体ではない。物質でできているのではなく、かつてそこにあった物質の重力的な痕跡なのである。回転する物質の重力崩壊についても同じことが言える。回転するブラックホールについて語る時、それは事象の地平面がコマのように回転しているということではなく、ブラックホール近傍の時空が、かつて回転していた物質の重力的なこだまへとねじれているということを意味する。ここで状況は奇妙になる。
ブラックホールに球を落下させると仮定しよう。軌道を描いたり回転したりするのではなく、ただ真っ直ぐ落下させるだけである。球は直線的にブラックホールへ落下するのではなく、落下するにつれてその経路は軌道へと変化し、近づくにつれてますます速くブラックホールの周りを回るようになる。この効果はフレームドラッギングとして知られている。自由落下中であるにもかかわらず、ブラックホールの「回転」の一部が球に伝達されるのである。球がブラックホールに近づくほど、この効果は大きくなる。
arXivに掲載された最近の論文は、この効果によってブラックホールの磁場から周囲の物質へエネルギーが伝達される仕組みを示している。ブラックホールはしばしば電離したガスと塵からなる降着円盤に囲まれている。円盤の物質がブラックホールの周りを公転する際、強力な磁場を生成することがあり、これが物質を超高温に加熱する可能性がある。この磁場によって生成されるパワーの大部分は公転運動によるものだが、フレームドラッギングが追加的な力を与えることがある。
本質的に、ブラックホールの磁場は降着円盤の全体的な運動によって生成される。しかし、フレームドラッギングのおかげで、円盤の内側部分は本来よりも少し速く動き、外側部分は少し遅く動く。これらの間の相対運動により、電離した物質が磁場に対して相対的に移動し、一種のダイナモ効果を生み出す。フレームドラッギングのおかげで、ブラックホールは予想以上の電磁エネルギーを生成する。この効果は恒星質量のブラックホールでは小さいものの、超大質量ブラックホールの場合は十分大きく、クエーサーのパワースペクトルの隙間を通してこの効果を観測できる可能性がある。
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