Microsoftは2月28日をもって、Microsoft 365に付属するDefender VPNサービス(プライバシー保護機能)を終了することを発表した。この決定は、同社が先月Microsoft 365の料金を12年ぶりに値上げした直後に下されたもので、機能の削減は値上げの正当性に関して疑問を投げかける物と言えるだろう。
Defender VPN終了、利用率低迷で幕引き
Microsoftは、セキュリティ対策アプリ「Microsoft Defender」に搭載されていたVPN機能「Privacy Protection」を、2025年2月28日に終了することを発表した。同社はサポートページで、サービス終了の理由について「利用状況と機能の効果を定期的に評価しており、顧客ニーズにより合致する新しい分野に投資するため」と説明する。
Defender VPNは、「Microsoft 365 Personal」および「Family」の加入者向けに提供されていた機能であり、Windows、macOS、iOS、Androidで利用可能であった。公共Wi-Fi利用時のセキュリティ保護を目的とし、月間50GBまでのデータ通信がVPN経由で保護されるものの、通信速度は上限を超えると256Kbpsに制限されていた。また、YouTube、Netflix、Amazon Prime Videoなどの動画ストリーミングサービスや、WhatsApp、Facebookなどの一部アプリはVPNの対象外となる制約もあった。
知られざるVPN機能、ユーザーの反応
Defender VPNは、2024年9月にはセキュリティ機能が強化され、危険なWi-Fi接続を自動検知してVPNを有効にする機能が追加された。しかし、Microsoftによる積極的なプロモーションは行われてこなかったため、VPN機能の存在自体が広く認知されていたとは言えず、今回のサービス終了発表を受けて、SNSなどでは「DefenderにVPN機能があったことを初めて知った」という声も散見される。
サービス終了の背景には、ユーザーの利用率低迷があったと推測される。競合のVPNサービスと比較してデータ容量制限や対象外アプリが多いなど機能面で制約が多く、VPNサービスとして積極的に選ばれるには至らなかったと考えられる。
価格改定直後のサービス終了、ユーザーに不満の声も
今回のVPN機能の終了は、Microsoft 365の価格改定が発表された直後であることも、ユーザーの不満を招く可能性がある。Microsoftは、AI機能「Copilot」の搭載を価格改定の理由の一つとするが、一方で既存機能が削除されることは、ユーザーにとってサービス品質の低下と捉えられかねない。
もっとも、Defender VPNは機能面で制約が多く、代替サービスは容易に見つかるとも言える。Windows、macOS、iOSユーザーは特に対応は不要で、2月28日以降VPN機能が利用できなくなるだけだ。ただし、Androidユーザーのみ、VPNプロファイルを自身で削除する必要がある。
代替VPNサービスの選定と自作VPNという選択肢
サービス終了後、Defender VPNユーザーは代替のVPNサービスを探す必要がある。市場には多くのVPNサービスが存在するが、選択肢が多いため、何を基準に選べば良いか迷うかもしれない。一般ユーザーであれば、無料VPNから試してみるのも良いだろう。有料VPNであれば、NordVPNやExpressVPNなどが定番として挙げられる。
技術に詳しいユーザーであれば、自作VPNという選択肢もある。Raspberry PiとPiVPNなどのOSSを利用すれば、自宅にVPNサーバーを構築可能だ。PiVPNはWireGuardプロトコルを利用しており、高速かつセキュリティも高く、Windows、macOS、iOS、Androidなど主要なプラットフォームに対応している。
XenoSpectrum’s Take
Microsoft Defender VPNのサービス終了は、同社が事業戦略の見直しを図っていることの表れと言えるだろう。今後は、VPN機能よりも、マルウェア対策やID盗難保護といった既存のセキュリティ機能の強化に注力していくと考えられる。
ユーザーとしては、今回のサービス終了を機に、自身のVPN利用目的を改めて見直し、よりニーズに合ったVPNサービスを検討する良い機会となるだろう。無料VPN、有料VPN、自作VPNなど、様々な選択肢の中から、最適なVPNサービスを選び、安全なオンラインライフを送ってほしい。
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