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Alphabet、レーザー通信技術Taaraを独立企業としてスピンオフ – 次世代インターネット接続の新時代へ

2025年3月18日

Alphabetの先端研究部門「X」から生まれたレーザー通信技術プロジェクト「Taara」が独立企業としてスピンオフし、Series X Capitalが主導する資金調達ラウンドを完了した。Taaraは鉛筆の太さのレーザービームで最大20Gbpsのデータを20km伝送できる技術を開発しており、従来の光ファイバー敷設が困難な地域にインターネット接続を提供する。

スピンオフと技術基盤

Taaraは2017年にAlphabetの先端研究開発部門「X」(通称「ムーンショットファクトリー」)内のコネクティビティプロジェクトとして立ち上げられた。この技術は同じXラボが手がけていた高高度気球によるインターネット提供を目指した「Loon」プロジェクト(2021年に終了)から派生した光学レーザー技術を基盤としている。

Xラボの責任者Eric “Astro” Teller氏は「我々が創り出すものの多くにとって、Alphabetの外部に独立することには多くの利点があります。市場資本との迅速な連携や戦略的投資家の呼び込みが可能になり、より速くスケールできるのです」と説明した。

資金調達の具体的な条件は明らかにされていないが、Financial Timesの報道によるとAlphabetはTaaraの少数株主として残るとされている。カリフォルニア州サニーベールに拠点を置く同社は現在24人のスタッフを抱え、積極的な採用活動を行っている。

革新的な光通信技術

Taaraの主力製品「Taara Lightbridge」は交通信号機サイズの無線通信システムで、鉛筆の太さほどの不可視レーザービームを使用してデータを送信する。このシステムはセンサー、光学部品、ミラーを利用して1.5インチ(約3.8cm)のレシーバーに正確にビームを照準する仕組みだ。

最大20Gbpsの速度で20kmの距離データを送信可能で、各ユニットは約40Wの電力しか消費しない。従来の光ファイバー敷設には多大な費用と時間がかかる場合があるが、Taaraのシステムは数時間で設置可能という大きな利点がある。

だが最近、同社は「Taaraチップ」と呼ばれるシリコンフォトニックチップを発表した。このチップは従来の機械部品の多くを排除し、ソフトウェアによる光ビームの操作を実現している。CEO Mahesh Krishnaswamy氏によれば「第一世代のTaara Lightbridgeはミラー、センサー、ハードウェアを使用して物理的に光を操作していますが、この新しいチップは大型の可動部品なしに、ソフトウェアを使用して光ビームの操作、追跡、修正を行います」とのことだ。

グローバルな実用展開

Taaraはすでにオーストラリア、ケニア、フィジーを含む12カ国以上でインターネットサービスを提供している。注目すべき事例として、コンゴ川を挟んだブラザビルと民主共和国コンゴの首都キンシャサの間に構築された5kmのレーザーリンクがある。このエリアではインターネットコストが非常に高いとされている。

T-Mobileはアルバカーキ気球祭やコーチェラ・フェスティバルといった大規模イベントでTaaraを使用し、混雑した移動体通信網を補完している。気球祭では移動式基地局(COW)にTaaraを搭載し、コーチェラ・フェスティバルではヤシの木に偽装したタワーに設置された。

また、カリブ海のLiberty Networks、インド農村部のBharti Airtelなども以前からTaaraのユーザーとして名を連ねる。Vodafoneは最近スペインで緊急事態対応用のドローンにTaaraノードを搭載したテストを行った。

Starlinkとの競合と市場戦略

TaaraはElon Musk氏のSpaceX社が運営する衛星インターネットサービス「Starlink」の競合として位置づけられている。Starlinkは約7,000の衛星を展開し、昨年470万の加入者から推定93億ドルの収入を生み出したとされる。

両者の技術アプローチは大きく異なる。Starlinkは衛星から地上に向けて電波信号を送信するのに対し、Taaraは地上のタワー間でレーザービームを使ってデータを伝送する。「我々は典型的なStarlinkアンテナより10倍、場合によっては100倍多くの帯域幅をエンドユーザーに提供でき、しかもそのコストの一部で実現できる」とKrishnaswamy氏はWired誌に語っている。

Starlinkが消費者に直接サブスクリプションを販売するのに対し、TaaraはBharti AirtelT-Mobileといった大手通信会社と提携し、既存の光ファイバーネットワークを遠隔地や密集都市部に拡張することに焦点を当てている。「既存のインフラを補強し加速するバックボーンと考えてください」とKrishnaswamy氏は説明する。

将来展望と革新的なチップ技術

Taaraは現在のチップをさらに発展させ、次世代バージョンでは数百から数千の発光体を搭載する計画だ。テストでは、2つのチップ間で1kmの距離において10Gbpsのデータ送信に成功しており、この技術は2026年に発売予定の次期製品に組み込まれる。

「チップの範囲と容量の両方を拡張する計画です」とKrishnaswamy氏は述べている。このチップは過小サービス地域のインターネットネットワーク、データセンターネットワーク、自律走行車両ネットワークなどをサポートするメッシュネットワークに展開される予定だ。

Tellerは、より多くの人々がオンラインになるにつれて、世界は従来の電波周波数帯域を使い果たし、電磁スペクトルのさらに上部にシフトする必要があると指摘する。「光によるデータ移動を最初に実現するビジネスになれば、世界全体がスペクトルのその部分に移行したとき、Taaraは非常に良い位置にいるだろう」と述べている。

「接続性は非常に大きな問題です…まだ30億人が取り残されています」とKrishnaswamy氏はStarlinkとの競争について語り、「実際、私たち二社の両方に多くの余地があると思います」と付け加えた。


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