先日、韓国の研究者らが発表した、夢の常温常圧超伝導体の再現に成功したとの報告は、過去に類似の報告が数多くもたらされてはきたものの、再現性がなく、実際に超伝導状態が確認出来なかったことから、少しの期待と多くの懐疑のまなざしと共に迎えられた。だが、もしかしたら我々は、歴史の瞬間に立ち会っている可能性もある。
「LK-99」と名付けられたこの化合物は、研究者らによると常温・常圧の状態で超伝導の特性を示す「常温常圧超伝導体」であるとして、先週プレプリントサーバーarXivに発表された。科学会ではこの報告の正当性を確かめるために、研究が進められているが、2つの研究機関から予備的な試験の結果として、実際に発見者らが主張したような超伝導特性を示す特徴が認められたとの報告がもたらされているのだ。
超伝導体とは、平たく言えば電気を損失なく伝導させることができる化合物の事を指す。従来の超伝導体は、氷点下を遙かに下回る超低温や、室内環境での再現が難しい超高圧下でしか超伝導特性を示さない物だった。特別な条件下ではなく、我々が普段過ごしているような常温・常圧付近で超伝導特性を示す物質の発見は人類の長年の夢であった。電力損失のない送電網や、量子コンピュータ、核融合炉、リニアモーターカーなど、影響を与える範囲は計り知れない。まさに世界が根本から変わる程のインパクトを秘めている。
そして、その偉業がまさに達成されたかもしれない。すでに2つの研究チームが、予備テストではあるが、超伝導の主張を確認しているのだ。アメリカのローレンス・バークレー国立研究所の研究者Sinéad Griffin氏は、元の論文を熟読し、エネルギー省のスーパーコンピューティング能力を活用してLK-99のシミュレーションを行った。この複雑かつ単純な化合物は、鉱物であるラナルカイト(Pb₂SO₅)とリン化銅(Cu₃P)を組み合わせ、4日間、多段階、少量バッチ、固体合成プロセスで焼き上げたものである。
シミュレーションの結果、Griffin氏はarXivにプレプリントの形で解析レターを発表し、その中で、得られた物質が、電子が何の抵抗も受けずに通り抜ける超伝導経路を示すはずであることを確認した。興味深いことに、この超伝導経路は、化合物の非常に特定の領域、すなわち結晶格子の最もエネルギーの高い領域にしか形成されないことに彼女は気づいた。
物理学では、系は可能な限り低いエネルギー状態で安定を保つ傾向があるとされているため、「シェイク&ベイク」製造の各試みで生成される超伝導物質の量は比較的少ないことになる。そこで期待されるのは、製造プロセスをさらに改良することで、超伝導体そのものを製造するために必要な、より大量の超伝導体を得ることである。
更に、中国の華中科技大学の研究者が超伝導体の製造プロセスの再現に成功したと主張し、その証拠としてX(旧Twitter)に動画を投稿した。
上の動画は、マイスナー効果がこの材料の超伝導特性を証明する証拠であると紹介されている。マイスナー効果とは、超伝導プロセスによって磁場が放出されることを指す。ビデオで浮遊材料を紹介しているのはこのためで、LK-99のマイスナー誘導磁場と相互作用しているのだ。
こうした話題を受けて、市場では既にLK-99の成功に反応を示す動きも出てきている。アメリカの送電網インフラ大手のAmerican Superconductor Corporationの株価は急騰しており、前日比60%を超えて更に上がっている状況だ。
企業名がSuperconductor(超伝導体)からなのか、常温常圧超伝導体が実用化された際のコスト削減が見込まれる分野から7日は不明だが、この動きは面白い。
今回の再試験の結果で部分的な超伝導性を確認出来たことに関しては、高純度化するために更なる改良が必要と研究者らは考えているようだ。
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