GoogleがサードパーティーCookie廃止の計画を撤回したことを受け、Web技術の標準化を行なう非営利団体W3C(World Wide Web Consortium)が強い批判を表明している。W3Cは、この決定が長年の共同作業を台無しにし、Web上のプライバシー向上の取り組みを後退させると懸念を示している。
W3C、GoogleのサードパーティーCookie存続決定に異議
W3Cの技術アーキテクチャグループ(TAG)のメンバーであるHadley Beeman氏は、「サードパーティーCookieは廃止されなければならない」と題したブログ記事を発表した。この中でBeeman氏は、Googleの決定が「青天の霹靂」であり、「サードパーティーCookieなしでWebを機能させるために我々が共に行ってきた多くの作業を台無しにする」と厳しく批判している。
W3Cコミュニティは、Chromeのプライバシーサンドボックスチームと数年にわたり協力し、サードパーティーCookieに関するプライバシーの懸念に対応しつつ、広告主も満足させるアプローチの開発に取り組んできた。Beeman氏は「プライバシーサンドボックスチームと常に意見が一致していたわけではありませんが、一緒に大きな進歩を遂げてきました」と述べている。
サードパーティーCookieには、ショッピングやシングルサインオンなどの利点もあるが、Beeman氏はデメリットの方が大きいと主張する。「サードパーティーCookieは、監視や広告ターゲティングの目的で、複数のサイトにまたがるブラウジング活動を見えないように追跡するために使用される可能性があります。この隠れた個人データの収集は、誰のプライバシーも損なうものです」と彼女は警告している。
さらに、W3Cは、サードパーティーCookieがもたらす社会的な影響にも警鐘を鳴らしている。例えば、収集されたデータが政治的メッセージのマイクロターゲティングに利用される可能性があり、これが社会に悪影響を及ぼす可能性があるとPrivacy Internationalなどの組織が指摘していることを挙げている。また、英国の情報コミッショナー事務局(ICO)などの規制当局も、サードパーティーCookieのブロックを呼びかけている。
W3CのTAGは既に、WebからサードパーティーCookieを削除する必要性を強調する調査結果を発表している。Beeman氏は、Googleの撤回がサードパーティーCookieに代わる技術の開発を遅らせる可能性があると懸念を示した。
一方で、Movement for an Open Webの共同創設者Tim Cowenは、W3Cの立場に疑問を投げかけている。Cowenは、標準化団体の役割は中立的な技術標準に合意することであり、特定の企業の力を強化するソリューションを擁護することではないと主張する。さらに、もしCookieが本当に問題であるならば、W3Cは第三者が使用するCookieだけでなく、全てのCookieの削除を提唱すべきだと述べている。
W3Cは、Googleに対して今回の決定を撤回し、サードパーティーCookie廃止への道筋に再びコミットするよう強く求めている。この問題は、Webのプライバシーとユーザー追跡の在り方について、業界全体で深刻な議論を巻き起こしている。今後、広告業界、技術企業、プライバシー擁護団体、そして規制当局の間で、どのようにしてユーザーのプライバシーを保護しつつ、Webの経済モデルを維持していくかについて、激しい議論が展開されることが予想される。
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