高効率ペロブスカイト・ナノクリスタルが次世代超高精細LEDの開発を変革する可能性

2024年9月2日

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ディスプレイ技術の世界に大きな変化が起きるかもしれない。Seoul National UniversityのTae-Woo Lee教授らの研究チームが、次世代ディスプレイの鍵となる可能性を秘めたペロブスカイトナノクリスタルLED（PeNC-LED）の開発に成功した。この新技術は、超高精細ディスプレイの実現に向けた大きな一歩となる可能性がありそうだ。

ペロブスカイトの太陽光発電以外の新たな可能性

ペロブスカイトといえば、これまで主に太陽電池の光吸収材料として知られてきた。しかし、その優れた光吸収・発光特性にもかかわらず、発光デバイスやディスプレイへの応用は限られていた。その理由は、ペロブスカイト材料特有の課題にあった。

ペロブスカイトの結晶格子内では、原子の大規模な変位が起こりやすく、これが動的な乱れを引き起こす。この乱れが、材料の発光効率を低下させる原因となっていた。つまり、吸収したエネルギーを効率よく光に変換する能力が制限されていたのだ。

しかし、Tae-Woo Lee教授らの研究チームは、この課題を克服する新しいアプローチを開発した。彼らは、ペロブスカイトナノクリスタルの表面に共役分子多足(CMM)を統合するという画期的な方法を用いた。

Lee教授は次のように説明する。「CMMはペロブスカイト表面に強く吸着し、主にファンデルワールス相互作用と水素結合によってペロブスカイト表面付近の格子運動を制限します。これにより動的な乱れが減少するのです」。

この新しいアプローチにより、ペロブスカイト格子が強化され、発光効率が向上した。研究チームは、この技術を用いて高効率のペロブスカイトナノクリスタル発光ダイオード(PeNC-LED)の開発に成功した。

開発されたLEDは、26.1%という驚異的な外部量子効率を示した。Lee教授は「この値はペロブスカイトナノクリスタルLEDの中でも最高レベルの効率です。特に重要なのは、デバイス構造の工学的改良ではなく、材料自体の本質的な発光効率を向上させることで達成された点です」と強調する。

次世代超高精細ディスプレイへの応用

PeNC-LEDの開発は、単に高効率を実現しただけではない。この技術は、これまでに体験したことのない最高品質の超高精細（UHD）ディスプレイの開発を促進する可能性を秘めている。

研究チームが開発したPeNC-LEDは、高品質なUHDディスプレイに使用される緑色光と同じ波長域で電界発光を示す。研究チームは「電界発光（EL）の発光波長がRec. 2020標準のグリーンプライマリカラーに近接しています。これらの結果は、CMM埋め込みPeNCが、鮮やかな超高精細ディスプレイを開発するための効率的な次世代純緑色発光体として強力な可能性を持っていることを示しています」と述べている。

Rec. 2020は、国際電気通信連合（ITU）が定めた規格であり、UHDディスプレイの最適な色空間、解像度、フレームレート、ビット深度などの標準仕様を定義している。PeNC-LEDがこの規格に近い性能を示したことは、次世代ディスプレイ技術への応用可能性を強く示唆している。

Lee教授は、この研究の意義について次のように語る。「この研究は、ペロブスカイト発光体の本質的な限界を克服するための新しい材料ベースのアプローチを提示しています。高効率で長寿命のペロブスカイト発光デバイスの開発と、次世代ディスプレイの商業化に大きく貢献すると予想しています」。

共同研究者であるペンシルベニア大学のAndrew M. Rappe教授も、「私たちは分子の力を利用してペロブスカイトを強化し、より優れた発光体にすることができることを示しました。分子化学、物理学、力学、光学の力を組み合わせることで、明るくエネルギー効率の高い未来へと導く新しい材料を発明しています」と述べ、この研究の革新性を強調している。

現在、Lee教授のスタートアップ企業であるSN Display Co. Ltd.は、2022年と2023年のCES（Consumer Electronics Show）でテレビとタブレットディスプレイのプロトタイプを展示し、業界関係者から大きな注目を集めている。この技術の商業化に向けた取り組みは着実に進んでおり、近い将来、私たちの目の前に革新的な超高精細ディスプレイが登場する日が来るかもしれない。

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