YouTubeが小規模クリエイターの成長を支援するための新たな機能「Hype」を発表した。この機能は、ファンがお気に入りのクリエイターの動画を積極的に推奨することで、そのクリエイターの露出を増やし、新たな視聴者層の獲得を支援するものだ。
Hype機能の概要と目的
Hype機能は、YouTubeのMade on YouTubeイベントで発表された一連の製品アップデートの一部である。この新機能の主な目的は、小規模クリエイターがより多くの視聴者にリーチできるよう支援することだ。
YouTubeのプロダクトマネジメントディレクターであるBangaly Kaba氏は、「Hypeは、コミュニティが新進気鋭のクリエイターへの愛と興奮を表現し、新しい動画を応援するための方法を提供します」と述べている。
Hype機能の特徴は以下の通りだ:
- 50万人未満の登録者を持つクリエイターの動画が対象
- 動画公開から7日以内にHypeを付けることが可能
- 視聴者は週に3回までHypeを付けられる
- Hypeの数に応じて、週間ランキングの上位100位にランクイン
- 各国ごとにカスタマイズされたランキングを提供
この機能により、ファンは単に動画を視聴し「いいね」を付けるだけでなく、お気に入りのクリエイターの成功に積極的に貢献できるようになる。YouTubeの調査によると、18〜45歳の視聴者の75%以上、Z世代の視聴者の80%以上が、小・中規模のクリエイターのチャンネル成長を支援したいと回答している。
YouTubeは、Hype機能の開発にあたり、ユーザーフィードバックを重視した設計プロセスを採用した。初期のコンセプトには、24時間以内のHype集中や、コメントへの「応援」機能など、さまざまなアイデアが含まれていた。しかし、ユーザーテストの結果、より単純で理解しやすい仕組みが好まれたため、現在の7日間のウィンドウとHypeリーダーボードという形に落ち着いた。
Hype機能の詳細
Hype機能は、単純な「いいね」ボタンの延長線上にあるのではなく、クリエイターとファンの関係性を深める新たな仕組みとして設計されている。具体的な仕組みは以下の通りだ:
- Hypeボタンは「いいね」ボタンの下に配置される
- Hypeを付けても、ユーザーの推奨動画や検索結果には影響しない
- 小規模クリエイターには「小規模クリエイターボーナス」としてポイント倍率が適用される
- 最もHypeを集めた動画には特別なバッジが付与される
YouTubeは、Hype機能のベータテストをトルコ、台湾、ブラジルで実施した。その結果、わずか4週間で5万以上のチャンネルにわたり、500万回以上のHypeが付けられた。特筆すべきは、18〜24歳の若年層がベータユーザーの30%以上を占めたことだ。これは、若い世代がクリエイターの成長に積極的に関与したいという強い意欲を持っていることを示している。
将来的には、YouTubeはHypeの購入オプションを導入する計画だ。これにより、ファンは週3回の制限を超えてHypeを付けることができるようになる。同時に、これはクリエイターにとっての新たな収益源となる可能性がある。ただし、YouTubeがこの収益からどの程度の手数料を取るかについては、現時点で明らかにされていない。
Hype機能は、クリエイターが自己宣伝なしに視聴者を増やせる新たな手段として期待されている。YouTube側も、ユーザーからのフィードバックを基に機能の改善を続けていく姿勢を示している。今後、ベータテスト国以外の市場にも順次展開される予定だ。
Xenospectrum’s Take
YouTubeの新機能「Hype」は、クリエイターエコノミーに新たな風を吹き込む可能性を秘めている。この機能は、単なる視聴者参加型のツールではなく、小規模クリエイターの成長を支援する戦略的なプラットフォーム機能として位置づけられる。
特に注目すべきは、Hype機能が若年層に強く支持されている点だ。これは、次世代のコンテンツ消費者が、より能動的にクリエイターの成功に関与したいという欲求を持っていることを示唆している。この傾向は、今後のソーシャルメディアプラットフォームの設計に大きな影響を与える可能性がある。
一方で、将来的に導入される予定のHype購入オプションには、慎重な設計が求められる。ファンの熱意を収益化することは理にかなっているが、同時に小規模クリエイターが不当に不利にならないよう、バランスの取れた仕組みづくりが重要だ。
YouTubeのHype機能は、若年層で積極的に見られる自分の“推し”を他者に積極的に勧め、応援したいと言う“推し活”をYouTubeが機能として取り入れた物と言えるだろう。そして、YouTubeのアルゴリズムに依存しない新たな露出獲得手段として、クリエイターに希望を与えるものだ。しかし、その真価が発揮されるかどうかは、今後の運用とユーザーの反応にかかっている。YouTubeが継続的に機能を改善し、クリエイターとファンの双方にとって有益なツールに育てていくことを期待したい。
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