Googleは次期モバイルOSとなるAndroid 16の開発者向けプレビュー第1弾を公開した。Android開発責任者のMatthew McCullough氏が「アプリとデバイスのイノベーションを加速させるため、APIリリースの頻度を上げていく」と説明するように、2025年のリリーススケジュールを前倒しし、年2回のAPIリリースを実施する方針を打ち出している。
新プラットフォームの核心はプライバシー保護
Android 16の最も注目すべき新機能は、プライバシーを重視した写真選択機能の抜本的な強化にあるようだ。従来の写真選択ツールをアプリのビュー階層に直接組み込めるようになり、アプリ開発者はユーザーのメディアライブラリ全体へのアクセス権を求めることなく、シームレスな写真・動画選択機能を実装できるようになった。
この機能改善の背景には、多くのアプリが特定の機能を提供する際に、必要以上の権限を要求してきた課題がある。たとえば、プロフィール画像の設定のためだけに、端末内のすべての写真へのアクセスを求めるケースが一般的だった。新しい写真選択ツールは、ユーザーが明示的に選択した写真や動画のみへの一時的なアクセスを可能にし、プライバシーとユーザビリティの両立を実現している。
さらに注目すべきは、この機能がAndroid 4.4まで遡って対応する予定であることだ。これはGoogle Play システムアップデートとGoogle Play サービスを通じたモジュラーシステムコンポーネントの組み合わせによって実現される。開発者は近日リリース予定のJetpackライブラリを使用することで、プラットフォームバージョンの違いを意識することなく、この新機能を実装できるようになる。
プライバシーサンドボックスの最新バージョンの統合も、プライバシー保護強化の重要な一歩となる。特筆すべきは新たに導入されるSDKランタイムで、これによってSDKをアプリから分離された実行環境で動作させることが可能になる。この分離により、サードパーティSDKによるユーザーデータの収集と共有に対して、より強力な保護機能を提供できるようになった。
こうした一連のプライバシー強化策は、単なる機能追加ではなく、Androidプラットフォームのプライバシーアーキテクチャーそのものを再構築する試みと言える。特に写真選択の新機能は、開発者にとってはより統一的な実装が可能になり、ユーザーにとってはアプリごとに異なる写真選択体験が統一されるという二重のメリットをもたらす。
医療データ連携機能の実装で医療アプリのエコシステムを拡大
Android 16で注目される新機能の一つが、Health Connect APIの大幅な機能拡張である。この新APIは、FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)形式での医療記録の読み書きをサポートし、ユーザーの明示的な同意のもと、医療アプリやデバイス間でのシームレスなデータ共有を実現する。
これまでのHealth Connectは主にフィットネストラッカーやウェアラブルデバイスからの健康データ連携に限定されていたが、今回の拡張により、電子カルテや処方箋情報といった本格的な医療記録まで取り扱えるようになる。これはAppleのHealth機能に見られるような包括的な健康管理プラットフォームへの進化を目指す動きとして注目される。
現在、この機能はアーリーアクセスプログラムの一環として提供されており、開発者は申請によって早期のアクセス権を得ることができる。医療データの取り扱いという性質上、Googleは慎重なアプローチを取りながら、段階的に機能を拡充していく方針を示している。
年2回のAPIリリースで加速するプラットフォーム進化
Android 16では、プラットフォームのリリーススケジュールが大きく刷新される。これまでQ3(第3四半期)に行われていた主要リリースをQ2(第2四半期)に前倒しし、さらにQ4(第4四半期)に新たなAPIリリースを追加する二段階方式が採用される。
具体的には、2025年Q2の主要リリースでは、アプリの互換性に影響を与える可能性のある計画的な動作変更が含まれる。一方、Q4のリリースでは新しい開発者向けAPIの追加、機能の更新、最適化、バグ修正が中心となり、アプリに影響を与える動作変更は含まれない予定である。
プラットフォームの安定化時期は2025年3月を予定しており、開発者はこの時点から正式リリースまでの数カ月間で、アプリの互換性テストを完了させる必要がある。この前倒しは、新バージョンのAndroidを搭載したデバイスをより早期に市場投入したいデバイスメーカーの要望に応えるものでもある。
さらに、四半期ごとのアップデートも継続される。Q1とQ3のアップデートは、APIリリースの間を埋める増分更新として位置づけられ、継続的な品質向上を目指す。Googleは、デバイスパートナーと積極的に協力し、Q2リリースをできるだけ多くのデバイスに展開することを目指している。
対応デバイスは最新のPixelシリーズを広くカバー
Android 16開発者プレビュー1は、Googleの最新Pixelデバイスを幅広くサポートしている。対応デバイスには、2022年以降に発売されたすべてのPixelシリーズが含まれる。
対応機種:
- Pixel 6シリーズ
- Pixel 6
- Pixel 6 Pro
- Pixel 6a
- Pixel 7シリーズ
- Pixel 7
- Pixel 7 Pro
- Pixel 7a
- Pixel 8シリーズ
- Pixel 8
- Pixel 8 Pro
- Pixel 8a
- Pixel 9シリーズ
- Pixel 9
- Pixel 9 Pro
- Pixel 9 Pro XL
- Pixel 9 Pro Fold
- タブレット/フォルダブル
- Pixel Tablet
- Pixel Fold
ただし、Android 15 QPR2(Quarterly Platform Release 2)ベータ版がインストールされている端末に対して、Android 16開発者プレビュー1を直接インストールすることはできない点に注意が必要である。この場合、デバイスのデータを完全に消去(ワイプ)する必要がある。Googleは今後のベータ版インストールを予定しているユーザーに対して、開発者プレビュービルドへの円滑な移行のため、ベータ版のインストールを避けることを推奨している。
このように、開発者プレビューの対応デバイスは比較的新しいPixelシリーズに限定されているが、これは開発初期段階での品質確保とバグ修正に焦点を当てるためだ。正式リリース時には、他のAndroidデバイスメーカーの端末にも順次展開される予定となっている。
Source
- Android Developers Blog: The First Developer Preview of Android 16
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