GoogleのAndroid Video and Image Codecsチームの一員であるArif Dikici氏によって、VLCの開発チームによって作られた”libdav1d“として知られるAV1デコーダがAndroidに採用されることが明らかになった。これにより、Android 12以降のすべてAndroidデバイスは、2024年3月のGoogle Playシステム・アップデートを受けた後、このAV1コーデックのネイティブ・ソフトウェア・サポートを受けることになる。
デコーダとは、特定のファイル形式(AV1やmp4)に圧縮されたファイルを復元して元のサイズに戻すプログラムのことだ。スマートフォンやPC、タブレットなどで動画を視聴する際には、何らかのデコーダを介する必要がある。限られたネットワークの帯域幅を節約するためにも圧縮効率の高い方式が求められているのが現状だ。
AV1は、その高い圧縮率に加え、オープンかつロイヤリティフリーである事から、次の業界標準になる物と目されている。
だが、AV1自体の利用は可能ではあったが、QualcommのSnapdragon 8 Gen 2等、ここ1~2年以内に販売された一部のハイエンドチップでしか、スマートフォンではハードウェア・デコードに対応していない。そうした事情もあり、AV1は普及が妨げられていた。
だが、今回AndroidがVideoLAN(VLCのメーカー)の「dav1d」と呼ばれる、ソフトウェア・デコーダーを使用出来る様になり、ハードウェアデコーダに頼ることなく、多くのデバイスでAV1のサポートが可能になるのだ。
Androidは最高のAV1ソフトウェアデコーダーdav1dを歓迎します。公式発表です!Android SまでのすべてのAndroidデバイスは、この新しいコーデックを受信しました。ほとんどのデバイスは、dav1dを使用して720p30をソフトウェアでデコードできます。今のところ、アプリはdav1dにオプトインする必要がありますが、まもなくデフォルトのAV1ソフトウェアデコーダーになります。
Dikici氏によれば、「ほとんどの」デバイスは少なくとも毎秒30フレームの720pをサポートできるという。
このアップデートにより、AndroidスマートフォンでAV1コーデックのサポートが改善されるが、デフォルトでは新しいコーデックは有効にならない。ソフトウェアデコーディングによってAV1をサポートするためには、アプリが「今のところ」オプトインする必要があるという。
そして今回オプトインしたアプリのひとつが「YouTube」だ。現在では互換性のあるすべてのデバイスでAV1を使用している。これは一見するとメリットのようにも見えるが、一部デメリットもある。それは、先述したとおり、ハードウェア・デコードではなく、ソフトウェア・デコードという点だ。
デバイスがAV1のハードウェア・デコードに対応しているならば、CPUやGPUと言った消費電力の高いコアに頼ることなく、AV1のデコードに最適化され、省電力なハードウェア・デコード専用のコアでデコーディングすることにより、省電力かつ高品質な映像を楽しむことが出来る。だが、ソフトウェア・デコードの場合は、CPU等にデコーディングを行わせる事より、デバイスによっては電力使用量が増える可能性があるのだ。一部のユーザーはこの件に関して懸念を表明している。
こうした懸念を受け、VideoLANはこの点に関する改善が今後行われるかもしれないと述べている。
Sources
- LinkedIn: Arif Dikici
- via 9to5Google: Android adds new software-based AV1 decoder to most devices, YouTube uses it
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