クラウドセキュリティ分野で急成長を遂げているスタートアップWizが、Googleの親会社Alphabetからの約230億ドル(約3.4兆円)規模の買収提案を拒否したことが明らかになった。
交渉決裂は“独占禁止法”への懸念など複数の要因
この買収の可能性は今月初めに大きく報じられ、Alphabetによる買収としては過去最大となるはずだった。 Wall Street JournalとCNBCの報道によると、WizのAssaf Rappaport最高経営責任者(CEO)は社内メモで「このような畏敬の念を抱かせる提案をお断りするのは難しいことですが、私たちの優秀なチームとともに、その選択に自信を持っています」と述べている。
Wizは2020年イスラエルで設立されて以来、急速な成長を遂げており、年間経常収益(ARR)は2022年8月の1億ドルから、現在は5億ドルを超えるまでに拡大している。現在は本社をニューヨークに移しているが、 Crunchbaseによると、Wizは総額19億ドルの資金を調達している。 同社は今後、10億ドルのARR達成と株式公開(IPO)を目指すとしている。
買収交渉の決裂には、複数の要因が影響したとみられる。CNBCの情報源によると、「独占禁止法と投資家の懸念」がWizの決定に影響を与えたという。Googleは現在、米国で独占禁止法訴訟に直面しており、EUでも技術産業規制の遵守に関する調査を受けている。こうした状況下で、買収が規制当局の承認を得るのは困難だと判断された可能性がある。
また、Wizの経営陣は独立企業としての成長に自信を持っているようだ。同社のクラウドセキュリティプラットフォームは、Fortune 500企業の40%以上に採用されており、日々2,300億件のセキュリティスキャンを500万以上のクラウドワークロードで実行している。
今回の買収交渉の決裂は、テクノロジー業界における大型M&Aの難しさを浮き彫りにしている。2023年末にはAdobeが200億ドルのFigma買収を規制圧力により断念しており、大手テック企業による買収には厳しい目が向けられている。
一方で、Wizは独自の買収も進めており、2024年初めにはGem Securityを買収している。Rappaport CEOは2024年をサイバーセキュリティ業界の統合の年になると予測しており、業界の再編が今後も続く可能性がある。
Sources
- The Wall Street Journal: Google Talks to Acquire Cybersecurity Startup Wiz Fall Apart
- CNBC: Wiz walks away from $23 billion deal with Google, will pursue IPO
コメント