Gigabyteが静かにWebサイト上で、PCIe 4.0インターフェースを採用した新たなThunderbolt 5アドインカードを発表した。この製品は、既存のデスクトップPCにThunderbolt 5規格を追加できる新たなソリューションとなるが、その新規性と共に価格もまた注目を集めそうだ。
Gigabyteの新製品発表とThunderbolt 5の概要
Thunderbolt 5は、前世代のThunderbolt 4の2倍となる80Gbpsの双方向転送速度を実現する次世代接続規格だ。さらに特筆すべきは、特定のデバイスを検出した際に発動する「オルタネートモード」だ。このモードでは、片方向で120Gbpsもの驚異的な転送速度を実現する一方、反対方向では40Gbpsの速度を維持する。ただし、この超高速モードは現時点で2メートルまでのケーブル長に制限されている。
Gigabyteが発表したThunderbolt 5カードは、その特徴と性能において目を見張るものがある。このPCIe 4.0カードは、柔軟性を高めるために5つの高速接続ポートを搭載している。具体的には、2つのUSB-Cポートと3つのMini-DisplayPort出力を備えている。
USB-C接続は、それぞれ2台の4K 144Hzモニターをサポートする能力を持つ。一方、DisplayPort出力は、DisplayPort 2.1規格を介して8K 60Hzモニターを駆動することが可能だ。さらに、各USB-Cポートから最大5台のデバイスをデイジーチェーン接続できるほか、Power Delivery 3.1規格により最大100Wの電力伝送をサポートしている。
この製品の心臓部には、IntelのJHL9580(通称Barlow Ridge)コントローラーが搭載されている。このコントローラーは、PCIe 4.0 x4ホストインターフェースを採用しており、前世代のThunderbolt 4コントローラーがPCIe 3.0に制限されていたことを考えると、大きな進歩と言える。また、JHL9580は、USB 3.2 Gen 2×2(20 Gbps)もサポートしており、これは以前のThunderboltコントローラーにはなかった機能だ。
しかし、この高性能には代償が伴う。IntelのJHL9580の価格は19ドルと、2020年に発売されたJHL8540 Maple Ridgeコントローラーと比べて8ドル以上高い。そのため、Thunderbolt 5アドインカードは、従来のThunderbolt 4カードよりもさらに高価格になると予想される。
競合製品との比較
Gigabyteの新製品は市場に初めて登場したThunderbolt 5対応カードというわけではない。ASUSも同様のアドオンカード「ThunderboltEX 5」をWebサイトで公開している。ASUSの製品は、3つのDisplayPort 2.1ポートと2つのUSB-Cポートを特徴とし、さらに130Wの急速充電をサポートしている点でGigabyteの製品と一線を画している。
ASUSは、デイジーチェーン接続の能力についてもより詳細な情報を提供している。各USB-Cポートは、3つのデバイスと2つのモニターを同時に、あるいは4つのデバイスと1つのモニターを接続できるという。この柔軟性は、複数のデバイスを同時に使用する必要があるユーザーにとって魅力的な選択肢となるだろう。
これらのアドオンカードは、主に自作PCユーザーをターゲットにしているように見える。特に、Thunderbolt 4のみをサポートする比較的安価なIntel Alder Lake Core Ultra 200マザーボードを選択したユーザーにとって、魅力的な製品となるだろう。
現時点では、入手可能な唯一のThunderbolt 5マザーボードは、ASUS ROG Maximus Z890 Extremeだけだ。日本での価格は本稿執筆時点では不明だが、海外では1,000ドルで発売されていることから、日本での価格も10万円を超えてくる高価な物となるだろう。Gigabyteも、Thunderbolt 5サポートをフラッグシップモデルのZ890 AI Topマザーボードに限定している。このような状況下で、これらのアドオンカードは、ローエンドのマザーボードをアップグレードする際のコスト効率の高い選択肢となる可能性が高い。
Thunderbolt 5の将来性と用途
Thunderbolt 5の登場は、PCの接続性を大きく高め、様々な用途での有用性が期待出来る。初期の採用者にとって、Thunderbolt 5は主に追加ディスプレイと高速外部ストレージの接続に活用されるだろう。しかし、この規格の真価はそれだけにとどまらない。
理論上、将来のThunderbolt 5デバイスは最大240Wの電力供給をサポートする可能性がある。これは、高性能ノートPCや電力を多く消費するデバイスの充電を大きく改善させるだろう。
また、Thunderbolt 5は外部GPUのサポートも予定されている。これにより、グラフィック処理能力の拡張が必要なユーザーに新たな選択肢を提供することになるだろう。ただし、空いているPCIeスロットがある場合は、直接GPUを内蔵する方が効率的かもしれない。
さらに、Thunderbolt 5の高速データ転送能力は、大容量データの取り扱いが必要な映像制作や科学研究などの分野で大きな恩恵をもたらすと予想される。例えば、先行して発表されたSabrent Rocket XTRM5やOWC Envoy Ultraなどの外部Thunderbolt 5ドライブは、それぞれ48〜50Gbps(約6GB/秒)の読み取り速度を誇っている。これは現在の標準を大きく上回る性能だが、将来的にはさらに高速なドライブの登場も期待される。
Sources
- Gigabyte: THUNDERBOLTS 5
- via TechPowerUp: Gigabyte Releases Thunderbolt 5 Add-in Card with PCIe 4.0 Interface
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