Googleが長年計画していたサードパーティCookieの廃止を撤回し、Chromeブラウザでの継続使用を決定したことが明らかになった。この決定は、広告業界からの強い反発と収益への懸念を受けてのものだ。Googleは代替案として、ユーザーがCookieの使用を選択できる新しい機能を導入する方針を示している。
Googleの大きな方針転換に広告業界からの働きかけ
Googleは2020年1月に、プライバシー保護の観点からChromeブラウザでサードパーティCookieを段階的に廃止する計画を発表していた。当初は2022年までに完全廃止する予定だったが、広告業界からの懸念を受けて何度も延期され、最終的には2025年第1四半期までに廃止する計画となっていた。
しかし、GoogleのプライバシーサンドボックスVPであるAnthony Chavez氏は今回の発表で、「サードパーティCookieを廃止する代わりに、ユーザーがWeb閲覧全体に適用される選択を行える新しい体験をChromeに導入する」と述べている。この新しいアプローチでは、ユーザーがいつでも選択を調整できるようになるという。
この決定の背景には、広告業界からの強い反発がある。広告技術企業や出版社、業界団体は、GoogleのPrivacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)と呼ばれる代替案の準備状況に懸念を示していた。Privacy Sandboxは、個々のユーザーを追跡せずに、最近の閲覧履歴に基づいて関心のあるトピックにユーザーを分類し、それを広告主と共有する仕組みだった。
しかし、広告業界はこの新しい仕組みが出版社やプログラマティック広告プレイヤーの収益に与えるリスクを懸念していた。広告技術企業のCriteoは、サードパーティCookieが廃止された場合、出版社のChrome広告収入が60%減少すると予測していた。広告業界としては歓迎すべき方針の転換だ。しかし、ユーザーがどのように反応するかは不透明だ。Pew Research Centerの調査によると、消費者の81%が個人データ収集のリスクがメリットを上回ると考えているという。
特に、今回のGoogleの決定は、プライバシー擁護派からの批判を招いている。電子フロンティア財団(EFF)のスタッフ技術者Lena Cohen氏は今回のGoogleの対応について、以下の様に批判している:
「Googleの発表は、ユーザーのプライバシーよりも利益を優先する彼らの継続的なコミットメントを強調するものだ。 SafariとFirefoxは、Googleが同じことを約束した2020年以来、デフォルトでサードパーティCookieをブロックしている。 サードパーティCookieは、広告会社やデータブローカーがユーザーのオンライン活動に関する情報を収集し、販売することを可能にする、最も普及しているトラッキング技術の一つです。 他の主要なブラウザが何年もサードパーティCookieをブロックしているにもかかわらず、GoogleがサードパーティCookieを許可し続けるという決定は、広告主導のビジネスモデルの直接的な結果です。 Googleの収益の80%近くがオンライン広告によるものであり、Chromeがユーザーのプライバシーよりも広告主の利益を優先する理由は明らかです」。
Googleの新しいアプローチの詳細はまだ明らかになっていないが、Chromeに組み込まれたグローバルなCookie同意システムのような形になる可能性がある。ユーザーがサードパーティCookieのオプトインとオプトアウトを選択できるようになるとみられている。
この決定は、オンライン広告業界に大きな影響を与える可能性がある。Googleはオンライン広告市場で支配的な地位を占めており、その方針転換は業界全体に波及するだろう。一方で、プライバシー意識の高まりとEUのGDPRなどの規制強化の流れの中で、Googleがどのようにユーザーのプライバシーと広告収益のバランスを取っていくのか、今後の動向が注目される。
Sources
- Google: A new path for Privacy Sandbox on the web
- Bleeping Computer: Google rolls back decision to kill third-party cookies in Chrome
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