高解像度・高リフレッシュレート時代の新たな映像伝送規格となるHDMI 2.2が、2025年1月のCES(Consumer Electronics Show)で発表される見通しとなった。HDMI Forumが、ラスベガスで開催される同展示会での重要発表を予告している。
新規格発表の詳細が明らかに
HDMI Forum(HDMIの規格策定を行う団体)は2025年1月6日、ラスベガスのマンダレイベイ・カンファレンスセンターでプレスカンファレンスを開催する。この発表は、映像・音声伝送の次世代スタンダードを示すものとして業界から注目を集めている。
現行のHDMI 2.1規格は、2017年の発表以降、文字バージョンのアップデートのみで基本仕様を維持してきた。同規格は48Gbpsの総伝送速度(実効42Gbps)を実現し、テレビやゲーム機、PCなど、家庭内のあらゆる映像機器で採用されている。しかし、高解像度・高リフレッシュレート時代の到来により、その限界も見え始めていた。
具体的には、現行規格ではDisplay Stream Compression(DSC)と呼ばれる映像圧縮技術なしでは、8K(7,680×4,320ピクセル)および10K(10,240×4,320ピクセル)の解像度は30Hzまでしかサポートできない。さらに5K解像度で120Hz、8K解像度で60Hzといった高リフレッシュレート環境では、必ずDSCによる圧縮が必要となる。この圧縮処理は、わずかながら画質劣化や遅延の原因となる可能性がある。
新しいHDMI 2.2規格は、こうした制限を解消することを目指している。HDMI Forumの発表によれば、新規格は「より高い帯域幅」を実現し、「様々な高解像度とリフレッシュレート」をサポートするという。これは、現在DSCが必要な環境でも、圧縮なしでの伝送が可能になる可能性を示唆している。
「次世代HDMIテクノロジーと帯域幅を拡大した新仕様は、幅広い高解像度と高リフレッシュレートに対応し、新しいHDMIケーブルでサポートされます」
また、テレビ、映画、ゲームなどのコンテンツ制作者に向けて、より質の高い選択肢を提供することも強調されている。これは、プロフェッショナル用途での無損失伝送や、将来的な8K/10Kコンテンツの制作・配信インフラの整備を見据えたものと考えられる。
ただし、この進化には新しいケーブルが必要となるようだ。現行のHDMI 2.1対応ケーブルは「Ultra High Speed HDMI Cable」という名称で展開されているが、HDMI 2.2では新たな規格のケーブルが必要となることが、上記の発表では示唆されている。この点は、ユーザーの追加投資が必要となることを意味している。
なお、具体的な仕様や新ケーブルの名称については、1月6日のプレスカンファレンスで明らかにされる見通しだ。業界からは、DisplayPort 2.1との競合を意識した仕様になるのではないかとの見方も出ている。
新世代GPUとの連携も視野に
注目すべきは、NVIDIAのGeForce RTX 5000シリーズ(開発コードネーム:Blackwell)やAMDのRadeon RX 8000シリーズといった次世代GPUとの密接な関係だ。両社ともCES 2025で1月6日にプレスイベントを予定しており、HDMI Forumの発表と時期が重なる。
新規格の実装には新しいケーブルが必要となることが明らかにされている。現行のHDMI 2.1対応ケーブルは「Ultra High Speed HDMI Cable」という名称で展開されているが、HDMI 2.2ではさらに上位の規格となることが予想される。
Xenospectrum’s Take
新規格の登場は、8K・10K時代の本格的な幕開けを告げるものだろう。特筆すべきは、DSCなしでの高解像度・高リフレッシュレート伝送の可能性だ。これは単なる数値上の進化ではなく、映像品質における質的な転換点となる可能性を秘めている。
ただし、新たなケーブルが必要となる点は、ユーザーにとって悩ましい。USB-C問題の二の舞とならないよう、明確な規格表示と互換性の担保が望まれる。また、発表時期がNVIDIAとAMDの新GPU発表と重なる点は、PCゲーミング市場における高解像度・高リフレッシュレート需要の高まりを示唆している。
皮肉なことに、多くのユーザーが4K60Hzですら使いこなせていない現状で、さらなる高解像度・高リフレッシュレートの規格が登場することになる。ただし、技術の進歩は常に現在の需要を超えて進むものであり、それが次世代のイノベーションを牽引するのだろう。
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