国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構は、日欧共同で実施している、超伝導磁石を使って高温プラズマをドーナツ型のチャンバーに閉じ込める、新しい核融合炉JT-60SAにおいて、初のプラズマ生成(初めてのトカマクプラズマの生成)に成功した事を発表した。世界最大かつ最新鋭のこの原子炉は、核融合エネルギー研究を推進し、国際熱核融合実験炉(ITER)プロジェクトを支援することを目的としている。
15年以上にわたる建設と試験を経て、2023年10月26日に最初のプラズマが達成された。「これは、この装置が基本的な機能を果たしていることを世界に証明するものです」と、Fusion for Energyのプロジェクト・マネージャーであるSam Davis氏は語った。このEUの組織は、日本の国立量子科学技術研究開発機構(QST)とJT-60SAおよび関連プログラムで協力している。
JT-60SAとは?
この核融合炉は、プラズマを摂氏2億度まで加熱し、これまでの大型トカマクよりもはるかに長い約100秒間維持するように設計されている。これにより研究者は、核融合出力の実現に不可欠なプラズマの安定性と性能を、どのように制御し最適化するかを調べることができる。
JT-60SAはまた、フランスで建設が進められている国際的な巨大核融合炉であるITERが、核融合が消費エネルギー以上のエネルギーを生み出せることを実証するのにも役立つ。ITERには、JT-60SAが試験・検証する技術や運転ノウハウが活かされる。
世界最大の核融合実験であるITERをフランスに建設させるための妥協案として、日本はJT-60SAと他の2つの小型核融合施設を建設する機会を得た。これは2007年の日本とEU間の協定の一部であり、1980年代半ばから稼働していた日本の古いJT-60原子炉の改良も含まれていた。核融合炉は完全に一から作り直されたが、その費用は公表されていない。
JT-60SAは「Super Advanced」の略で、高さはITERの約半分、ITERの6分の1にあたる135立方メートルのプラズマを保持できる。ITERの科学部門を率いるAlberto Loarte氏によれば、このプラズマはITERに有益な情報を提供することが期待されている。
遅延と希少同位体重水素の使用
Scienceによれば、核融合炉の完成には15年以上を要し、予想よりもはるかに長かったようだ。本来は2016年に運転を開始する予定だったが、多くの困難に直面した。設計の見直し、調達問題への対処、2011年3月の東日本大震災からの復旧などが必要だった。そして2021年3月、試験中に深刻な問題が発生した。超伝導磁気コイルの1つがケーブルでショートし、電気的接続が損傷してヘリウム漏れを起こし、冷却システムに影響を及ぼしかねなかったのだ。
その時、回路の電流は浅かった。「電流がもっと大きかったら、もっとひどいことになっていたかもしれません」とQSTのプロジェクトを率いる白井宏氏は言う。「私たちは幸運でした。JT-60SAチームは100以上の電気接続部の絶縁を修正しなければならず、2年半を要した。この事故はまた、ITERの技術者たちにコイルの試験に対する慎重な姿勢をもたらした。
JT-60SAには、水素とその同位体である重水素しか使用しないという欠点がある。トリチウムはエネルギー生産に適した燃料であるため、ITERでは2035年から重水素-トリチウムを使用する予定である。
日本はまた、2050年までに商用核融合発電への足がかりとなる実証実験炉DEMOの建設を目指している。白井氏は、民間の資金によって支えられている核融合エネルギーへの他のアプローチが、この分野に参入してくることを喜んでいると述べた。彼は、新しいアイデアを持っている人たちとは喜んで協力したいと語った。「この分野に人が増えるのは素晴らしいことです」。
Sources
コメント