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最新望遠鏡の観測により、この宇宙がブラックホールの中にある可能性が示される

2025年3月16日

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による最新の観測結果が、宇宙の根本的な理解を揺るがす可能性のある発見をもたらした。カンザス州立大学のLior Shamir准教授が発表した研究によると、深宇宙で観測された銀河の約60%が時計回りに回転しており、この予想外の偏りは、私たちの宇宙がブラックホール内部に存在する可能性や、観測技術の根本的な見直しが必要であることを示唆している。

JADESが明らかにした銀河回転の非対称性

JWSTのJADES(JWST Advanced Deep Extragalactic Survey)プログラムは、かつてない精度で深宇宙の銀河を観測可能にした画期的なミッションだ。Shamir准教授は、このプログラムで収集されたGOODS-S(Great Observatories Origins Deep Survey South)領域のデータを分析。263個の銀河の回転方向を調査した結果、105個が反時計回り(地球から見て銀河系と同じ方向)に回転し、158個が時計回り(銀河系と反対方向)に回転していることを発見した。

この分布は統計的に極めて有意で、偶然発生する確率はわずか約0.0007(3.39σの有意性に相当)と算出された。Shamir准教授によれば、この偏りは「肉眼でも明らかに識別できるほど顕著」だという。

「分析は銀河の形状の定量的分析によって行われましたが、その差は非常に明白で、画像を見る人なら誰でも気づくことができます。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の能力があれば、誰でも数の違いが分かるのです」とShamir准教授は述べている。

この発見の重要性は、現代宇宙論の基盤となる「宇宙原理」に挑戦する点にある。宇宙原理では、大規模には宇宙は等方的(すべての方向に同じ性質を持つ)で均質(場所によらず同じ性質を持つ)であると仮定されている。この原理に従えば、銀河の回転方向は完全にランダムであるべきで、どの方向に回転する銀河も約50%ずつ存在するはずだ。

宇宙がブラックホール内部に存在する可能性

この予想外の観測結果について、Shamir准教授は2つの主要な説明を提案している。

第一の説明は、宇宙自体が生まれたときから回転しているという可能性だ。この考えは「ブラックホール宇宙論」と呼ばれる理論と一致する。この理論によれば、私たちの宇宙全体が、より大きな「親宇宙」のブラックホール内部に存在している可能性がある。

「宇宙が回転しながら誕生した可能性があります。この説明は、宇宙全体がブラックホールの内部であるとする『ブラックホール宇宙論』のような理論と一致します」とShamir准教授は説明する。「しかし、もし宇宙が実際に回転しながら誕生したのであれば、既存の宇宙論は不完全だということになります」

ブラックホールは一般的に回転しているため、その内部にある宇宙も回転の影響を受けると考えられる。このような宇宙では、特定の方向に軸を持ち、その影響で銀河の回転方向に偏りが生じる可能性がある。

論文では、この説明が「楕円体状宇宙」「双極ビッグバン」「等方的インフレーション」などの理論モデルと整合性があることも指摘されている。

観測バイアスの可能性と距離測定への影響

Shamir准教授が提案するもう一つの説明は、地球からの観測に固有のバイアスによるものだ。地球は銀河系の中心の周りを回転しているため、ドップラー効果により、銀河系と反対方向に回転する銀河からの光は、銀河系と同じ方向に回転する銀河からの光よりもわずかに明るく見える可能性がある。

ドップラー効果とは、波源と観測者の間の相対運動によって、観測される波の周波数が変化する現象だ。例えば救急車のサイレンが近づくときは高く、遠ざかるときは低く聞こえる現象と同様に、光の波も観測者に対して近づく光源は青方偏移し、遠ざかる光源は赤方偏移する。

銀河系と反対方向に回転する銀河がより明るく見えるとすれば、遠方銀河の観測では検出しやすくなる。そのため、実際には回転方向がランダムに分布していても、観測上は偏りがあるように見える可能性がある。

「もしそれが事実なら、深宇宙の距離測定を再較正する必要があります。距離測定の再較正は、宇宙の膨張率の違いや、既存の距離測定によれば宇宙自体よりも古いはずの大きな銀河の存在など、宇宙論におけるいくつかの未解決の問題も説明できるかもしれません」とShamir准教授は述べている。

宇宙論における他の未解決問題との関連

この発見の重要性は、他の未解決の宇宙論的問題との潜在的な関連性にもある。論文では、特に以下の問題との関連が指摘されている:

  1. ハッブル定数の緊張関係(H₀テンション):異なる測定方法で得られる宇宙の膨張率に不一致があり、現代宇宙論の重要な課題となっている。
  2. 初期宇宙における成熟した銀河の存在:JWSTは、現在の宇宙の年齢推定では説明できないほど巨大で成熟した銀河を初期宇宙で発見している。
  3. ダークマターと銀河回転の関係:銀河の回転速度と質量の不一致は、通常ダークマターの存在で説明されるが、銀河回転の物理学には依然として多くの謎がある。
  4. 赤方偏移モデルの課題:現在の赤方偏移に基づく距離測定が修正されれば、宇宙の実際の膨張率や年齢の推定値が変わる可能性がある。

Shamir准教授の研究は、『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』誌に掲載された。研究チームはこの発見を検証するため、さらに多くの観測と分析を計画している。

「JWSTの前例のない観測能力と、他の最近の観測結果が宇宙論を革命的に変えつつあります。これらの未説明の観測結果を説明するための研究努力は、今後数十年にわたって続くでしょう」と論文は締めくくられている。


論文

参考文献

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