LG Displayが、有機ELディスプレイ(OLED)技術の長年の課題を解決する画期的な成果を上げたことを報告している。同社は、効率的な青色発光材料である「青色リン光」を用いたOLEDパネルの開発に成功したと発表した。この技術革新により、OLEDディスプレイの電力効率が大幅に向上し、モバイル機器のバッテリー消費電力が10〜20%改善することが期待される。
OLEDの「最後のパズルピース」を解決
OLEDディスプレイは、自発光型の有機物質で構成される次世代ディスプレイ技術として知られている。これらの有機物質は、発光方式によって「リン光」と「蛍光」に分類される。理論上、リン光材料は電気エネルギーを光に変換する効率が100%に近く、蛍光材料の効率約25%を大きく上回る。
しかし、これまでOLEDパネルでは、赤色と緑色には効率の高いリン光材料が使用されていたものの、青色には寿命の問題から蛍光材料が使用されていた。青色は波長が短く、エネルギーが大きいため、青色リン光材料の寿命が短く、ディスプレイの安定性低下を引き起こしていたのである。
この青色リン光材料の開発と実用化は、ディスプレイ業界で「OLEDの最後のパズル」と呼ばれるほど困難な課題だった。LG Displayは、この問題を「2スタック・タンデム構造」と呼ばれる技術で克服した。
具体的には、青色蛍光材料と青色リン光材料を組み合わせた「ハイブリッド」方式を採用し、発光層を2層に積層することで、蛍光材料の長寿命性とリン光材料の高効率性を両立させた。この技術により、従来のOLEDと同等の寿命を維持しつつ、効率を大幅に向上させることに成功した。
2スタック・タンデム構造は、LG Displayが2019年に業界で初めて開発したものだ。当初は耐久性が重要な自動車市場を対象に開発されたが、寿命だけでなく発光効率も向上させたことで、最近ではタブレットなどの情報技術(IT)用途にも拡大されている。
この新技術の実用化により、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器のバッテリー使用時間が10〜20%以上延長される可能性がある。これは、近年需要が高まっている端末内でAIを実行する「オンデバイスAI」の時代に適した技術革新といえる。AI機能の実行には多くの電力を必要とするため、ディスプレイの省電力化は極めて重要な課題となっている。
LG Displayは、米国のディスプレイ材料メーカーであるユニバーサルディスプレイ(UDC)と協力し、青色リン光材料の開発を進めてきた。UDCの青色リン光材料がLG Displayのパネルに適用されたと伝えられており、今後、両社の協力のもと、大量生産に向けた取り組みが行われる見込みだ。
業界関係者によると、LG Displayは年内に量産性能評価を行い、製品化を検討する計画だという。この技術革新により、OLEDディスプレイの性能がさらに向上し、モバイル機器やテレビなど、さまざまな製品分野での応用が期待される。
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