人類史上最も遠方に位置する人工物である、NASAの探査機ボイジャー1号は、読み取り不可能な科学技術データを地球に送信し続けている。この異常の原因はこれまで不明だったが、NASAのエンジニアたちは、フライト・データ・サブシステム(FDS)と呼ばれる、テレメトリ変調ユニット(TMU)と無線送信機がデータを送信する前に、ボイジャーの科学・工学データをパッケージングする役割を担うコンピュータの壊れたメモリの一部に原因がある事を確認した。
3月上旬、チームは “poke”コマンドを発行し、コンピュータのソフトウェアコードや変数(コマンドや探査機の状態によって変化するコード内の値)を含むFDSメモリの読み出しを宇宙船に返送するよう促しました。この読み出しデータを使って、研究チームはFDSメモリの約3%が破損し、コンピュータが正常な動作を行えなくなっていることを確認しました。
原因として疑われているのは、機能していない1つのチップである。このチップは、FDSメモリの影響を受けた部分の一部を保存する役割を担っている。
NASAによれば、この問題の原因としては、宇宙からの高エネルギー粒子の衝突か、単に製造から46年と言う歳月によるシリコンの老朽化の2つが考えられるという。
宇宙船のデバッグと修理は簡単な仕事ではない。ボイジャー1号は、ヘリオポーズ(太陽からの高エネルギー粒子と磁場の泡)の外側の領域である星間空間に進入した人類初の物体である。これほどの遠距離では、電波の到達にも長い時間がかかり、宇宙船にコマンドを送ってから地球で回答を受け取るまで、45時間かかる。
そのため、エンジニアが使用不可能なメモリハードウェアなしでFDSを正常に動作させる方法を見つけ、宇宙船が再び使用可能な科学技術データを送信できるようになるまでには、数週間から数ヶ月かかるかもしれない。
だが、NASAはまだ諦めていないようだ。今後の作業により、ボイジャー1号が再び科学・工学データの送信を開始できるようになるだろうと楽観視している事を述べている。
この探査機は1977年に打ち上げられ、土星と木星を通過した。その双子であるボイジャー2号も恒星間空間にあり、こちらは正常に稼働してNASAとの交信を継続している。
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