NordVPNがVPNブロックを回避するための新プロトコル「NordWhisper」を発表した。このプロトコルは、通常のWebトラフィックを模倣することで、VPN検出を困難にする新技術を採用しているものであり、検閲の厳しい環境下でも、より自由で安全なインターネットアクセスを提供する技術となり得る可能性に繋がる物になるかもしれない。
NordWhisperプロトコルとは?仕組みと従来のVPNプロトコルとの違い
NordVPNは、VPN接続をブロックするネットワーク環境下での利用を想定した新しいプロトコル「NordWhisper」を発表した。このプロトコルは、空港、カフェ、オフィス、学校など、インターネットセキュリティフィルターが厳格な環境において、よりスムーズで安定したブラウジング体験を提供することを目的としている。
NordWhisperプロトコルの最大の特徴は、その動作方法にある。従来のVPNプロトコルであるOpenVPNやWireGuardとは異なり、NordWhisperは「Webトンネリング技術」を基盤としている。この技術により、VPN接続の挙動を通常のインターネットトラフィックに擬態させることが可能になる。
多くのVPNプロトコルは、特有のトラフィックパターンや動作を示すため、ネットワーク管理者によって検出され、ブロックされる可能性がある。これに対し、NordWhisperプロトコルは、Tor ProjectがTorブラウザ向けに開発したブリッジング技術と同様に、トラフィックを偽装することで、高度なネットワークフィルターによるVPN暗号化の認識を困難にする。
NordWhisperプロトコルのメリット・デメリット
NordWhisperプロトコルの導入により、ユーザーはVPNブロックが敷かれた環境下でも、VPN接続を維持しやすくなるというメリットを享受できる。これにより、検閲が厳しい地域からのインターネットアクセスや、学校や職場などのネットワーク制限下でのプライバシー保護が容易になる。NordVPNのCTO、Marijus Briedis氏は声明で「ネットワーク制限を回避するだけでなく、最も制限の厳しい環境でも、人々が安全かつ自由に働き、コミュニケーションを取り、不可欠なサービスにアクセスできるようにすること」が NordWhisper の目的であると述べている。
一方で、NordWhisperプロトコルには、通信速度が従来のVPN接続よりも遅くなる可能性があるというデメリットも存在する。NordVPN自身も、NordWhisperプロトコルは「従来のVPN接続よりも遅くなる可能性がある」と注意喚起しており、通常はVPN接続がブロックされている状況でのみ使用することを推奨している。高速な通信速度を必要とするオンライン動画視聴などの用途には、NordLynxなどの他のプロトコルが適している場合がある。
NordVPN、VPNブロック回避技術の開発背景と今後の展開
NordVPNがNordWhisperプロトコルを開発した背景には、VPNがブロックされやすいネットワーク環境下でも、ユーザーに安全で信頼性の高いインターネットアクセスを提供したいという強い意志がある。VPNブロックは、業務の中断や重要なサービスへのアクセス制限に繋がり、ユーザーの利便性を著しく損なう可能性がある。
NordWhisperプロトコルは、このような課題を解決するために開発された。NordVPNは、一部のネットワークがアクセス範囲を制限する現状に対し、すべての人が自由、安全、そして途切れることのないブラウジングを享受できる権利を持つべきだと主張している。
ただし、NordVPNはこれが違法行為を助長する物ではないことを合わせて警告している点には注意が必要だ。
免責事項:NordWhisperや他のプロトコルを使用する際、NordVPNは違法行為を助長したり誘発したりすることはありません。どのプロトコルを使用しても、すべての適用される法律、規制、契約、およびポリシーに従って使用してください。
NordWhisperプロトコルは、Windows、Android、Linux版のNordVPNアプリに段階的に導入されており、今後、他のプラットフォームへのサポートも拡大予定である。具体的な提供時期は未定だが、NordVPNアプリの接続設定からNordWhisperプロトコルを有効にすることが可能になる予定だ。
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