2024年11月のノルウェーにおける新車販売で、電気自動車(EV)の占める割合が93.6%に達し、同国の電動化への移行がほぼ完了段階に入ったことが明らかになった。この数字は前年同月と比較して大幅な伸びを示している。
驚異的な普及率の詳細
ノルウェー道路情報局(OFV)の発表によると、2024年11月の新車登録台数は11,689台を記録し、そのうち電気自動車が10,940台を占めた。これは前年同月の8,442台から約30%の大幅な伸びを示している。特筆すべきは、従来型の内燃機関車とプラグインハイブリッド車を合わせた販売台数がわずか749台にとどまったことである。このうちプラグインハイブリッド車は154台で、市場シェアは1.3%に過ぎない。
車種別で見ると、TeslaのモデルYが圧倒的な強さを見せている。2024年1月から11月までの累計で14,926台を販売し、新車登録全体の13%を占めている。2位にはVolvoのEX30が6,623台、3位にはVolkswagenのID.4が6,544台、4位にはTeslaモデル3が6,197台と続いており、上位をEVが独占している状況だ。
中古車市場でもEVシフトが顕著に表れている。2024年の中古車輸入台数は前年同期比で46.8%増加し、5,600台を超えた。注目すべきは、この輸入中古車の62%以上がEVであり、その平均車齢はわずか1.75年と極めて新しい点である。これは、ノルウェーの電動化が新車市場だけでなく、中古車市場全体にも波及していることを示している。
さらに興味深いのは、自動車メーカーの販売戦略の変化である。Volkswagen、現代自動車、PEUGEOT、Opel、Fiatといった従来の主要メーカーは、ノルウェーではEVのみの販売に完全移行している。一方、トヨタは唯一、EVとハイブリッド車の両方を販売し続けている例外的な存在となっている。また、中国の新興EVメーカーであるBoya、BYD、Hongqi、Xpeng、Nioもオスロに販売店を開設し、市場の多様化が進んでいる。
政策と市場環境が後押し
ノルウェーの電気自動車普及の成功は、長期的な視野に立った政策設計と、それを支える市場環境の整備が相乗効果を生んだ結果といえる。OFVのディレクターであるØyvind Solberg Thorsen氏は、この成功を「政策主導の方向性とインセンティブの組み合わせが可能にした」と評価している。
同国は2025年までに新車販売を全てゼロエミッション車にするという世界で最も野心的な目標を掲げているが、その達成に向けた取り組みは着実に成果を上げている。実際、既に2021年の時点で非電動車の販売シェアは一桁台にまで低下しており、2025年目標の実質的な前倒し達成を実現している。2024年9月には、ついに国内の電気自動車保有台数がガソリン車の保有台数を上回る歴史的な転換点を迎えた。
しかし、この成功は政策面だけでなく、市場メカニズムとの調和によって支えられている点も重要である。現在のノルウェーは欧州域内で最もEV価格が低い市場となっており、この価格優位性が消費者の選択に大きな影響を与えている。さらに、在庫の充実と納期の短縮、魅力的な金利設定や支払い条件の提供など、消費者にとって有利な「買い手市場」の状況が続いている。
充電インフラの整備も電動化を支える重要な要素となっている。Bloombergの調査によれば、国内には29,473基のパブリック充電器が設置されており、高速充電器については車両100台に対して1基という充実した密度を実現している。これは、消費者の「充電難民」への不安を払拭し、EVへの移行を後押しする重要な要因となっている。
ただし、近年では政策の重点も変化しつつある。EV普及の成功を受けて、一部のインセンティブは段階的に縮小されている。特に2023年からは、50万ノルウェークローネを超えるEVに対して25%の付加価値税(VAT)が導入された。これは単なる財政的な考慮だけでなく、より環境に配慮した方向へと政策をシフトする意図も含まれている。具体的には、たとえEVであっても過度な自家用車依存を抑制し、徒歩、自転車、公共交通機関の利用を促進する方向への政策転換が図られている。
ノルウェーの事例は、明確な政策目標と一貫した支援策があれば、わずか数年で国家レベルの自動車市場の電動化が実現可能であることを実証している。しかし、Thorsen氏が指摘するように、地理的条件や気候要因、特殊用途など、まだEVでは対応できない領域も存在することもまた確かだ。
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