NVIDIAが2025年3月20日に開催予定のGTC 2025において、同社初となる「Quantum Day」を実施することを発表した。この発表は、同社CEOのJensen Huang氏が量子コンピュータの実用化には「20年程度かかる」と述べ、量子コンピュータ関連企業の株価が大幅に下落した直後に行われたものだ。
興味深いタイミングでの量子コンピュータイベント開催
NVIDIAのQuantum Day開催発表は、業界に大きな波紋を投げかけている。その理由は、Jensen Huang氏がCESにおいて「量子システムは実用的なレベルに到達するために必要な量子ビット数から5〜6桁のオーダーで不足している」と指摘し、実用化までに「15年以上、おそらく20年程度」かかるとの見方を示したばかりだったためだ。
この発言を受け、Rigetti、D-Wave、IonQなどの量子コンピュータ企業の株価は約50%も下落。すでに厳しい市場環境にあった量子コンピュータ業界にとって、大きな打撃となった。
D-WaveのCEOであるAlan Baratz氏は、Huang氏の発言を「量子コンピューティングに対する誤った理解に基づく、誤情報の最新例」と批判。IonQのCEOであるPeter Chapman氏も、「今日の古典的なコンピューティングハードウェアは、計算能力と電力要件によって制限されており、社会の最も差し迫った問題の一部を解決することは不可能かもしれない」と指摘し、量子コンピュータの重要性を強調している。
IDCの量子コンピューティング研究マネージャーであるHeather West氏は、より詳細な分析を提供している。「現在開発中のほとんどのシステムはデジタルゲートベースモデルで、これが最も構築が困難なものです。Huang氏が言及したのは、おそらくこれらのシステムでしょう」と説明している。
Quantum Dayの具体的な内容
GTC 2025のQuantum Dayでは、Jensen Huang氏が量子コンピューティングの最新状況について、Alice & Bob、Atom Computing、D-Wave、Infleqtion、IonQ、Pasqal、PsiQuantum、Quantinuum、Quantum Circuits、QuEra Computing、Rigetti、SEEQCなど、業界を代表する企業の幹部たちと共に議論を行う。
イベントでは以下のセッションが予定されている:
- 現在可能な量子コンピューティングの応用と将来の方向性に関する議論
- NVIDIAとパートナー企業による量子コンピューティング開発の進捗報告
- 最新の量子ハードウェアとアプリケーション開発ツールに関する実践的なトレーニング
- NVIDIAによる量子コンピューティング関連の新製品・技術の発表
本日のQuantum Dayの開催発表を受け、これらHuang氏の発言の煽りを受けた企業は軒並み株価が上昇しており、一部は下落前の水準まで戻した物もある。具体的な材料が出たわけでもない中でのここ数日のこうした値動きは、NVIDIAの影響力を物語るものと共に、量子コンピュータに関するまだ不透明な実現可能性を反映した物と言えるのではないだろうか。
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