国立研究開発法人理化学研究所は、スーパーコンピューター「富岳」にIBMの次世代量子システムを連携させることを発表した。
米国の量子コンピューター会社QuEraも、国立研究開発法人産業技術総合研究所にオンプレミスのシステムを導入する予定だ。
理研がIBM量子コンピューターを導入
IBMは、神戸にある理化学研究所計算科学研究センターにIBM Quantum System Two量子コンピュータを導入することで合意したと発表した。
この量子システムは、133量子ビットのHeronプロセッサーを搭載し、理研の既存のスーパーコンピューター「富岳」と統合される。配備のスケジュールは明らかにされていない。
計算科学研究センター量子 HPC 連携プラットフォーム部門 部門長の佐藤三久博士は「最先端の NISQ の量子コンピュータは今、量子ビット数の増加と忠実度の向上に伴い、実用的な段階に踏み出しつつあります。HPC (High Performance Computing) の観点から見ると、量子コンピュータは、従来スパコンで実行されてきた科学アプリケーションを高速化し、スパコンではまだ解くことのできない計算を可能にする装置です。理研の科学の総合力と『富岳』をはじめとする最先端のスパコン開発及び運用の経験を生かして、量子・HPC 連携コンピューティングのためのシステムソフトウェアの開発に取り組んでいきます」と、述べている。
IBMフェローでIBM量子担当副社長のJay Gambetta氏は、「スーパーコンピュータ『富岳』に初めて量子システムを直接連携させるIBMと理研の合意は、量子を中心としたスーパーコンピューティングによって定義される未来に向けた行程において記念碑的なマイルストーンとなります。この取り組みにより、従来型のコンピューティング・リソースを使用して量子計算と量子通信を組み合わせるモジュール式で柔軟なアーキテクチャーの推進に向けて業界を前進させ、両方のパラダイムが連携してますます複雑化する問題を解決できるようにします」と、述べている。
2020年に発売された富士通製の「富岳」は、発売当時世界最速のスーパーコンピューターだった。2022年に米国政府のFrontierに追い抜かれたものの、現在は世界で4番目に強力なシステムであり、442ペタフロップス(持続時間、Linpack)、理論上のピークは537ペタフロップスである。稼働に必要な電力は20メガワット弱となる。
理研はすでに富士通製の量子コンピューターを2台導入しており、Quantinuum社(IBMも出資している)からシステムを調達する契約を結んでいる。
QuEra社、産業技術総合研究所に量子コンピュータを納入
米国の量子コンピュータースタートアップQuEra社は、東京の産業技術総合研究所(AIST)に量子コンピューターを納入すると発表している。
中性原子技術をベースとするQuEraは、産総研から65億円の契約を獲得し、NVIDIA GPUを搭載するスーパーコンピューター「ABCI-Q」と並んでオンプレミスに設置される量子コンピューターを納入すると発表した。
QuEraの北川拓也社長は次のように述べています。「産総研が日本での設置に当社の技術を選んでくれたことを光栄に思います。このパートナーシップは、量子およびAIアプリケーションに焦点を当てた計算機研究において新たな基準を設定し、科学と技術の発展に向けた相互の献身を浮き彫りにするものです。私たちは、日本の企業や団体と量子コンピューティングの新たな地平で協力できることを楽しみにしています」と、述べている。
QuEraのゲートベースコンピュータは、2025年にオンプレミスでの設置が予定されている。
産総研が所持するスーパーコンピューターABCI-Qは富士通が製造し、2,000以上のNVIDIA H100 Tensor Core GPUを500以上のノードに搭載し、NVIDIA のQuantum-2 InfiniBandで相互接続される。2024年3月に発表され、来年早々に導入される予定だ。
産総研量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT/AIST)副センター長の堀部雅弘氏は、「QuEra社の最先端技術を我々の既存の計算インフラに加えて導入することは、日本の量子技術の戦略にとって重要な一歩です。 この提携は我々の計算能力を向上させ、AI、エネルギー、生物学といった分野の実用的応用の開発を促すでしょう」と、述べている。
以前は専用のラボに保管され、クラウド経由でアクセスできるようになっていたが、量子コンピューターは、過冷却式であれレーザー式であれ、オンプレミスで導入されるようになってきている。標準的なラックに収まるものであれ、特注の大型筐体であれ、スーパーコンピューティング・センターに導入されるものが増えているほか、コロケーション施設にもいくつか設置されている。
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