NVIDIAの最新GeForce RTX 50シリーズGPUの一部に「ROP(Render Output Unit)不足」と呼ばれる製造上の問題が発見され、これによる性能の低下がユーザーの間に広がっているが、PC販売業者のCyberPowerPCが出荷前に全ユニットのROP数を検査する保証プログラムを導入した。
RTX 50シリーズで発生したROP不足問題
NVIDIAが発売したGeForce RTX 50シリーズ「Blackwell」GPUファミリー(RTX 5090、RTX 5080、RTX 5070 Ti、RTX 5070)の一部に、設計上あるべきROP(Render Output Unit)の数が不足している問題が発覚した。
ROPはグラフィックボードの重要なコンポーネントで、レンダリングパイプラインの最終段階でピクセル処理やフレームバッファへの書き込みを担当する。これはゲームやグラフィック処理のパフォーマンスに直接影響する要素であり、ROP数が少ないとレンダリング能力が低下することになる。
NVIDIAの公式声明によれば、この問題は以下のモデルの0.5%未満に影響しているとのことである:
- GeForce RTX 5090
- GeForce RTX 5090D
- GeForce RTX 5080
- GeForce RTX 5070 Ti
NVIDIAによれば、この問題によるグラフィックパフォーマンスへの平均的な影響は約4%と見積もられている。ただし、AI処理や演算処理には影響がないとしている。
この問題はTechPowerUPのレビューラボによって最初に発見された。GPU-Zというハードウェア診断ソフトウェアを使用した際に、実際のROP数が仕様書に記載された数値より少ないことが確認されたのである。NVIDIAは製造過程での異常が原因であるとし、すでに製造ラインでは修正されたと述べているが、すでに出荷された製品については個別対応となっている。
なお、RTX 50シリーズは初期ロットでブラックスクリーン問題も発生しており、これはドライバーアップデートで修正された模様だが、ROP不足問題はハードウェア自体の問題であるため、交換以外の解決策はない。
業界では、この問題は「ROPゲート」と呼ばれ始めている。過去の技術業界の大きな問題が「〇〇ゲート」と呼ばれる慣例にならったものだ。
CyberPowerPCが導入したROP保証プログラムの詳細
PC販売業者のCyberPowerPCは、この問題に先手を打って対応するため、GeForce RTX 5090、5080、5070 Tiビデオカードを搭載したすべてのシステムが出荷前に正しい数のROPを持っていることを確認する「ROP保証プログラム」を業界で初めて開始した。
このプログラムでは、GPU-Zソフトウェアを使用して各GPUのROP数を検査し、仕様通りの値を満たしていることを確認する。VideoCardzの報告によれば、この検査は約10秒程度で完了するとされ、ユーザーが後から問題を発見し、返品や交換の手続きをする手間を省くことを目的としている。
CyberPowerPCのWebサイトには現在、RTX 50シリーズGPUを搭載したPC製品ページに以下のメッセージが表示されている:
「CyberPowerPCは、GeForce RTX 5090、5080、5070 Tiビデオカードを搭載したすべてのシステムが出荷前に正しい数のROPを持っていることを確認します」
この取り組みは、高額なグラフィックカードを購入する消費者に安心感を提供するとともに、返品処理(RMA)に関連するコストと手間を削減する狙いもあると見られる。特に、RTX 5090のような高額モデルは2,000ドル(約30万円)前後という価格帯の製品であるため、完全な性能を得られないことへの消費者の失望を防ぐ意味合いも大きい。
業界と消費者への影響と対応策
この「ROPゲート」問題は、ハイエンドGPU市場に少なからず影響を与えている。RTX 50シリーズの購入を検討しているユーザーの間では、この問題を懸念して購入を躊躇する動きも見られる。たとえNVIDIAが影響を受けるのは0.5%未満と主張していても、高額な投資に対して完全な製品を求める消費者心理は無視できない。
NVIDIAの対応に関しては批判の声も上がっている。影響を受けたユーザーは自分でボードメーカーに連絡して交換を依頼する必要があり、ドライバーによる自動検知や通知システムなどの直接的なサポートは提供されていない。VideoCardzは「これは本来、ドライバーによる簡単なチェックとポップアップ通知で解決できた可能性がある」と指摘している。
消費者のための確認方法
すでにRTX 50シリーズGPUを購入したユーザーは、以下の手順で自分のカードが影響を受けているかを確認できる:
- 窓の杜等の配布サイトから無料のGPU-Zソフトウェアをダウンロード
- ソフトウェアを起動し、「Graphics Card」タブでROP数を確認
- ROP数が仕様より少ない場合は、購入したボードメーカーまたは販売店に連絡して交換手続きを進める
なお、転売業者から購入した場合、保証や交換プロセスがさらに複雑になる可能性があり、正規販売店からの購入が推奨される。
業界への波及効果
販売業者が独自の検査プログラムを導入する動きは、消費者保護の観点からは歓迎される一方、本来はNVIDIA自身が対処すべき問題を販売業者が負担しているという見方もあり、小売業者がハードウェアを送り出す前にこれらのチェックを実行しなければならないのは少し悲しい状況と言えるだろう。
今後、他のPC販売業者も同様の保証プログラムを導入する可能性があり、この問題はRTX 50シリーズの評判や売上にも影響を与える可能性がある。また、今回の問題は、最新テクノロジーの初期採用者が直面するリスクについても再考させるきっかけとなっている。
技術の進化とともに製品の複雑さも増しており、こうした製造上の問題は完全には避けられないかもしれない。しかし、問題発生時の企業の対応姿勢や、CyberPowerPCのような販売業者が取る消費者保護のための追加措置は、今後のハイエンド市場における信頼性と透明性の重要な指標となるだろう。
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