SpaceXのロケットで打ち上げられる小型衛星により、誰もが宇宙からの自撮り写真を撮影できる画期的なプロジェクト「Space Selfie」が発表された。元NASA技術者で科学系YouTuberのMark Rober氏が主導するこのプロジェクトでは、地球を背景に自分の写真を撮影することが可能となる。
革新的な技術で実現する宇宙からの自撮り
SAT GUSの最も注目すべき技術的特徴は、Google Pixelスマートフォンとカメラシステムの独創的な組み合わせにある。従来の衛星写真とは異なり、このシステムでは地上から送信された自撮り写真をPixelのディスプレイに表示し、それを専用カメラで撮影するという画期的な方式を採用している。
放射線防護は宇宙空間での電子機器の運用における重要な課題だが、SAT GUSではGoogle Pixelを特殊な放射線防護ケースに収納することでこの問題に対処している。この防護システムにより、一般消費者向けの電子機器である携帯電話を過酷な宇宙環境で安定して運用することを可能にしている。
電力供給システムも入念に設計されており、2枚の固定式ソーラーパネルが120Whのバッテリーに電力を供給する仕組みとなっている。この電力システムにより、1日あたり約1,000枚という大量の写真撮影を実現している。さらに、システムの信頼性を高めるため、予備のカメラとPixelを搭載するという冗長性も確保されている。
撮影のタイミングは衛星が利用者の居住地域の上空を通過する時間に合わせて最適化される。利用者は撮影時刻の通知を受け取ることができ、実際に外に出て空を見上げることで、理論上は同じ写真の中に2回写ることも可能となる。この機能により、地球と宇宙をつなぐインタラクティブな体験を提供している。
衛星は地球の低軌道上約600kmの高度を周回する。この軌道高度は、十分な解像度での地球撮影と、安定した通信環境の確保を両立させる最適な位置として選定された。また、この高度であれば大気抵抗による軌道の減衰も比較的緩やかであり、長期間の運用が可能となる。
このように、SAT GUSは消費者向け電子機器の宇宙利用という新しい可能性を切り開くと同時に、一般市民が宇宙空間と直接つながることのできる画期的なプラットフォームとしても注目される。衛星技術の民主化と宇宙教育の促進という観点からも、極めて意義深いプロジェクトと言えるだろう。
プロジェクトへの参加方法と社会的意義
サービスは基本的に米国のユーザー向けとなっており、参加方法は複数用意されている。1つはT-Mobileの顧客向けで、12月3日からT-Lifeアプリを通じて無料コードを取得できる。また、特定のGoogle Pixelユーザーにも招待コードが配布される。さらにこれは日本からも参加が可能かは不明だが、将来のエンジニアを支援する目的で30ドルを寄付することでも参加可能なようだ。
このプロジェクトは単なる娯楽にとどまらず、若者のSTEM(科学、技術、工学、数学)教育への関心を高めることも目指している。寄付金はFIRST RoboticsとGoogle.orgに寄付され、次世代のエンジニア育成に活用される。
衛星は2025年1月、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地からSpaceX Falcon 9ロケットのTransporter 12ミッションの一環として打ち上げられる予定だ。
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