台湾南部を襲った震度6.4の地震により、世界最大の半導体製造企業TSMCが複数の製造拠点で生産を一時停止する事態となった。1月21日深夜0時17分に発生した地震により、同社は従業員の安全確保のため中部および南部の製造施設で作業を中断。現在は徐々に生産を再開しているものの、完全復旧までには数日を要する見通しだ。
地震発生とTSMCの初期対応
震源は嘉義県庁の南東約38キロメートル、深さ10キロメートルに位置し、人口密度の低い山間部での発生だった。台南市では震度5を記録し、TSMCの主力工場が立地する南部科学園区にも強い揺れが伝わった。これを受けて同社は直ちに標準的な緊急時対応手順に従い、従業員の避難と施設の安全確認を実施した。
地震による人的被害は27名の負傷者にとどまり、建物被害も比較的軽微だったと報告されている。TSMCの施設においても、耐震設計された重要機器への深刻な損傷は確認されていない。
なお、Electronics Weeklyによると、TSMCのFab 18 (5nm および 3nm プロセス) とFab 6 (8 インチ ウェハ ファブ) がある台湾南部サイエンス パークのディレクターは、負傷者はいないと述べている。
先端半導体生産への影響と復旧状況
TSMCは地震発生後、構造物の安全性検査を完了し、水道、電力、職場安全システムが正常に機能していることを確認。ただし、最先端の半導体製造装置は精密な調整が必要なため、地震による微細な影響が懸念される。
同社の報告によると、地震直後から復旧作業を開始し、設備の70%以上が短時間で復旧したようだ。しかし、先端チップ製造機械は繊細で精密なため、地震によって製造工程にエラーが生じ、使用可能なチップの歩留まりが下がった可能性もある。TSMCが日本経済新聞に語った所では、完全な生産能力の回復までには数日を要する見込みだ。これは、製造装置の再較正や品質検査に時間を要するためと見られる。
しかし、この数日の遅れが、数か月、あるいは数年先まで注文を入れている米国の多くの顧客に影響が出る可能性があるとも述べている。
グローバルサプライチェーンへの影響
TSMCは、Apple、NVIDIA、AMDなど世界的なテクノロジー企業向けに最先端半導体を製造している。今回の地震による生産遅延は、これら顧客企業の製品供給に影響を与える可能性があるものの、その程度は限定的とみられている。
しかし、この事態は台湾の半導体産業が抱える構造的なリスクを改めて浮き彫りにした。TSMCは事業継続性強化のため、アリゾナ州での工場建設を進めているが、その生産能力は全体の約10%にとどまる見通しだ。さらに、米国工場で製造されたチップの後工程(パッケージング)は依然として台湾で行われており、完全な地理的分散にはまだ時間を要する。
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