Trump大統領が導入した新たな関税措置は、カナダ、メキシコ、中国からの輸入品に適用され、これまで中国EC大手が活用してきた少額貨物免税(De Minimis)制度の抜け穴を塞ぐことを目的としている物だ。これにより、SheinやTemuといった中国発のオンライン小売業者に大きな影響が出ると見られる。
De Minimis ルールとは?中国EC企業隆盛の背景
米国のDe Minimis(デミニミス)ルールとは、800ドル以下の少額輸入品に対し関税を免除する制度である。この制度は、煩雑な通関手続きを簡略化し、迅速な貿易を促進するために設けられた。しかし、近年、特に中国を拠点とするeコマース企業がこの制度を利用し、大量の低価格商品を米国の消費者に直接送り込むことで、関税を回避している実態が問題視されている。
Bloombergの報道によると、米国の法律では、800ドル以下の輸入品は、個人購入者宛に適切に梱包・表示されていれば、ほとんどの場合、無税で米国に輸入可能である。このDe Minimisルールは、中国のeコマース小売業者にとって、安価な商品を米国の消費者に直接出荷する上で大きな恩恵となっている。
Trump関税、De Minimis免税措置を停止
2月1日、Donald Trump大統領は、カナダ、メキシコからの輸入品に25%、中国からの輸入品には10%の関税を課す大統領令に署名した。これらの関税措置では、De Minimisルールの免税措置を適用しないことが明記されている。
De Minimisルールの変更が、新たに発令された関税のみに適用されるのか、既存の貿易関税にも適用されるのかは不明確である。しかし、貿易弁護士らは、Trump政権がDe Minimisルールの免税措置の取り締まりを強化する姿勢は、既存の対中、対カナダ、対メキシコ関税にも広く適用される可能性があると指摘する。
Shein、Temuら中国EC大手への影響
今回のDe Minimisルールの変更は、Alibaba(アリババ)、JD.com(京東商城)、PDD Holdings(拼多多)傘下のTemu(テム)、Shein(シーイン)といった中国のオンライン小売業者に直接的な影響を与える可能性がある。野村ホールディングスのエコノミストの調査によると、少額貨物の輸入は、中国から米国への輸出の10分の1以上を占めるという。
米国税関・国境警備局(CBP)の推計によると、米国の消費者と企業は、昨年の最初の9ヶ月間だけで、この抜け穴を利用して世界から約480億ドル相当の貨物を輸入した。
米議会の中国共産党に関する特別委員会は、800ドルの閾値を悪用することが、米国の消費者に直接販売する中国企業が、強制労働によって生産された商品の販売を防ぐための米国法を回避するための主要な手段となっている可能性があると指摘する。同委員会は、SheinとTemuが、米国に毎日搬入されるすべてのDe Minimis貨物の30%以上、つまり昨年は1日あたり約60万個の貨物を占めていると報告する。
De Minimisルール見直しに対する賛否両論
De Minimisルールの見直しについては、米国国内でも賛否両論がある。米国商工会議所や全米製造業者協会などが率いる複数の業界団体は、De Minimisルールの維持を強く求めている。彼らは、この制度の変更が「米国の企業、労働者、消費者に多大なコストを課し、米国経済に新たなインフレ圧力を加え、米国の港湾におけるサプライチェーンの混乱を悪化させる」と主張する。
米国商工会議所のJohn Drake副会頭は、AP通信に対し、閾値を引き下げることは、多くの中小企業にとって大幅な増税になるだけでなく、多くの企業が通関業者を雇って貨物を処理する必要が生じると指摘した。「議会が2016年に水準を引き上げたのには理由がある。米国のビジネス界にとって競争上の優位性となるだけでなく、少額貨物に関税を課すことは、実際には割に合わないことも認識していたのである」と述べている。
一方、元米国通商代表部(USTR)代表のRobert Lighthizer氏は、2023年の下院委員会で、De Minimisルールを完全になくすか、50ドルまたは100ドルなど、はるかに低い金額に引き下げるよう議会に促した。同氏は、外国企業がこの「抜け穴」を利用し、「店舗で働く人々、製造業で働く人々を失業させている」と批判する。
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