Microsoftが発表した「Copilot+ PC」の第1弾である、QualcommのSnapdragon Xシリーズチップを搭載した「Surface Laptop」が、第三者機関であるSignal65によってテストされ、結果が公表された。これに先立ち、何度か行われたQualcomm自身のテスト結果公表では、驚くべき性能が示されていたが、Signal65のテストもそれを裏付ける物であり、改めてSnapdragon Xシリーズ、そして「Copilot+ PC」への期待を高めるものだ。
Snapdragon X EliteはM3と対等に渡り合える
Signal65によるテストでは、Snapdragon X Eliteを搭載した新しい「Surface Laptop」、Intelの第12世代Core i7を搭載した「Surface Laptop 5」、AppleのM3チップを搭載した「MacBook Air」、Microsoft SQ3(Snapdragon 8cx Gen 3を基にしたCPU)を搭載した「Surface Pro 9 5G」、そして、Intel Core Ultra 7 155Hを搭載したMSIの「Prestige 16 EVO AI」の4つのデバイスが多数のベンチマーク、特に熱テストで比較された。
結論から言えば、QualcommのSnapdragon X Eliteは素晴らしい性能を誇り、IntelのMeteor LakeプロセッサやAppleのM3シリコンを上回る性能をしばしば見せている。また、Surface Laptopのバッテリー持続時間は素晴らしく、M3 MacBook Airすらも上回る良好な物だ。熱特性も良好で、最大負荷時でもそこまで大きな発熱は見られず、低い表面温度を保っている。
発熱テスト
最初に行われた熱テストの結果を見てみよう。Cinebench 2024 のマルチスレッドを走らせた際の発熱を計測したところ、Snapdragon X Elite搭載のSurface LaptopはAlder Lake前モデルやAppleのM3搭載MacBook Airには及ばなかったが、MSIのMeteor Lake搭載ノートPCとは互角であった。ベンチマーク実行中、Snapdragon X Elite搭載Surface Laptopのホットスポット温度は50.3℃、MSI Prestige 16 EVOは56.2℃であった。AppleのM3搭載MacBook Airが最も優れており、ホットスポット温度は45.8℃、前世代のSurfaceは47.1℃だった。
同じベンチマークのシングルスレッドテストにおいては、Snapdragon X Elite搭載Surfaceは37.4℃のホットスポット温度で非常に良好な結果を示した。MacBook Airは35.1℃で再び最上位で、MSIは41.3℃、Surface 5は44.1℃だった。
バッテリー持続時間テスト
次にバッテリー持続時間のテストだ。テストは2種類行われ、1つはローカルビデオ再生、もう1つはProcyon生産性テストである。ここでは、「Surface Pro 9 5G」が追加され、テストを受けている。
Snapdragon X Elite搭載Surface Laptopはどちらのテストでも他のデバイスを凌駕し、バッテリー持続時間で首位となった。ローカルビデオ再生テストでは、MacBook M3 Airが16%少ないバッテリー持続時間で2位、MSIは25%少なく、Surface Pro 9は44%少なく、旧型Surface Laptop 5は58%も少ない結果であり、Snapdragon X Elite Surface Laptopのバッテリー持続時間の半分以下であった。
Procyonバッテリー持続時間テストでは、MSI Prestige 16 EVOが10%少なく、Surface 9 Proが32%少なく、Surface Laptop 5が41%少なかった。MacBook Airの統計は提供されていないが、Signal65によれば、このテストでSnapdragon X Eliteと同等のバッテリー持続時間だったとのことだ。
パフォーマンステスト
最も気になるのはパフォーマンスだろう。Signal65はCinebench、Geekbench、AIワークロードを含むさまざまなコンピュートベンチマークを実施した。Snapdragon X EliteはCinebenchとGeekbenchのマルチスレッドパフォーマンスでトップの結果を出し、AppleのM3がシングルスレッドテストでそれぞれ15%および17%上回りトップだった。
圧巻はAIワークロードだ。この点についてはSnapdragon X Eliteが圧勝である。45TOPSの性能は伊達ではなく、Procyon AIコンピュータビジョンベンチマークでは、SnapdragonはAppleのM3シリコンのほぼ2倍の速さを示し、Microsoft Surface Pro 9 5Gの2倍、IntelのCore Ultra 7 155Hプロセッサの3倍以上のパフォーマンスを示した(旧型Alder LakeチップはNPUがないためこのテストを実行できなかった)。単独で40TOPS以上の性能を示すNPUを搭載するのはSnapdragon X Eliteが初であり、それが故に「Copilot+ PC」は現時点でSnapdragon Xチップ搭載機しかその栄誉に与れないが、面目躍如と行った所か。
メディアエンコーディングテストについて、Handbrakeベンチマークでは、Snapdragon X Eliteは、AppleのM3を25%上回っていた。ただし、この点についてはIntelのMeteor LakeがSnapdragon X Eliteを上回る結果を出している。
Webパフォーマンスについては、AppleのM3はSnapdragon X Eliteを最大で40%上回っている。ただし、Snapdragon X Eliteはその他のデバイスを容易に上回っており、Surface Pro 9 5GのSQ3に対しては2倍近い性能を示している。
グラフィックスパフォーマンスも競争力がある。X EliteはAlder LakeやSQ3チップの約2倍の速さを示し、Meteor Lakeの統合Arc Graphicsは3DMarkテストの2つで22%から35%速かったが、軽いWild Lifeテストでは互角であった。Apple M3も2つのテストで29%から31%速かったが、新しいSteel Nomadテストは実行できなかった。
その他の詳細な結果については、元の結果をご覧頂ければと思う。結果として、Snapdragon X EliteはApple M3やMeteor Lakeチップと対等に渡り合い、旧型のMicrosoft SQ3を大きく凌駕している。ただし、第三者機関によるテストとは言え、Microsoftからの依頼であるためある程度は好意的に行われた点は否めないだろう。その他のレビューやテストにより更なる詳細が明らかになることを期待したい。
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