VESA(Video Electronics Standards Association)が新たなディスプレイ性能基準となる「DisplayHDR True Black 1000」と「ClearMR 21000」認証を発表。2025年初頭から対応製品の登場が期待される。高輝度有機EL(OLED)とモーションブラー低減技術の進化を反映した新基準は、ゲーミングモニターと映像制作用途の両方をカバーする。
DisplayHDR True Black 1000が切り開く新時代
映像周辺機器に関する業界標準化団体VESAは、ディスプレイの性能基準に関する重要なアップデートを発表した。その目玉となるのが、有機ELディスプレイ向けの新基準「DisplayHDR True Black 1000」である。この規格は、有機ELディスプレイが1000ニトのピーク輝度を実現できるようになった技術革新を反映している。
この新基準の意義は、従来の有機ELディスプレイが持つ特徴である「完璧な黒」の表現能力を維持しながら、より明るい映像表現を可能にした点にある。IntelでVESAのタスクグループ議長を務めるRoland Wooster氏は、この進化が有機ELディスプレイにとって「重要な転換点」になると指摘する。特に注目すべきは、これまでプロフェッショナル向けの映像制作現場では十分な輝度が得られないという理由で敬遠されがちだった有機ELディスプレイが、コンテンツクリエーション用途への本格参入を果たせる可能性が開かれた点である。
DisplayHDR True Blackは、発光型ディスプレイのHDR品質を規定する業界初の完全オープンな規格として知られている。この規格は、HDRコンテンツを鮮やかかつ生き生きと表示し、色彩と対比を正確に再現することを保証している。Samsung Display社のHojung Lee氏によれば、HDRコンテンツへの消費者需要が高まる中で、優れた画質と検証済みのディスプレイ性能の重要性は、かつてないほど高まっているという。
進化するモーションブラー対策
VESAが発表したClearMR規格の新グレードは、次世代ディスプレイにおけるモーション性能の飛躍的な向上に対応するものだ。2022年に初めて導入されたClearMR規格は、デジタルディスプレイにおけるモーションブラーを評価する新しい品質指標として確立されてきた。今回、この規格に「ClearMR 15000」「ClearMR 18000」「ClearMR 21000」という3つの新しい性能帯が追加された背景には、480Hz以上の超高リフレッシュレートディスプレイの登場がある。
特筆すべきは、この規格における評価手法の革新性だ。Clear Motion Ratio(CMR)と呼ばれる指標は、画面上のクリアな画素とブラー(ぼけ)のある画素の比率をパーセンテージで明確に数値化する。これにより、消費者は異なるメーカーの製品間でモーションブラーの程度を客観的に比較できるようになった。最上位となるClearMR 21000は、ブラーのある画素に対してクリアな画素が195倍という圧倒的な比率を実現している。
GIGABYTEのシニアディビジョンディレクターであるJackson Hsu氏は、この新基準について「モーション品質の評価における重要なブレークスルー」と評価している。同社は2025年のフラッグシップゲーミングモデルにおいて、この新しいClearMR規格を完全に統合し、様々なアプリケーションにおいてブラーのない、没入感のある視覚体験を提供することを約束している。
業界大手が続々と対応を表明
主要メーカーの対応も素早い。LG Electronicsは早くも世界初のClearMR 21000認証を取得した480Hz 有機ELゲーミングモニター「27GX790A」を発表。MSIもDisplayPort 2.1a対応のQD-OLEDモニターでClearMR 21000認証を取得する計画を明らかにした。Samsung Displayも両規格への対応を表明しており、2025年1月7日からのCESでは、これらの新製品が続々と公開される見込みだ。
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