Microsoftが、Windows 11におけるパスキー機能の大幅な拡張を発表した。この動きは、同社が掲げる「パスワードレスの未来」というビジョンの実現に向けた重要な一歩である。パスキーは、フィッシング攻撃やデータ侵害に対して脆弱なパスワードに比べ、より安全で使いやすい認証方法として注目を集めている。
今回の発表では、Windows 11に新たに導入される機能として、サードパーティのパスキープロバイダーとの連携、改良されたWindows Helloエクスペリエンス、そしてMicrosoftアカウントを介したパスキーの同期機能が明らかにされた。これらの機能は、今後数ヶ月のうちにWindows Insiderチャンネルを通じて提供される予定だ。
サードパーティパスキープロバイダーとの連携
Windows 11に導入される新しいパスキー機能の中核を成すのは、サードパーティのパスキープロバイダーを統合するためのプラグインモデルである。この新しいAPI支援により、1PasswordやBitwardenなどの人気パスワードマネージャーがWindows 11プラットフォームに直接統合されることが可能になる。
この連携により、ユーザーは異なるデバイス間でパスキーを一貫して使用することが可能になる。例えば、モバイルデバイスで作成したパスキーをWindows 11 PCでシームレスに利用できるようになり、デバイス間の認証体験が大幅に向上する。
Microsoftは、この機能をさらに詳しく説明するため、10月14日から16日にかけて開催される「Authenticate 2024」カンファレンスでWindows Securityセッションを行う予定である。このセッションでは、サードパーティプロバイダーとの統合について、より詳細な情報が共有されると期待されている。
新しいWindows Helloエクスペリエンス
Windows 11の新機能の中でも特筆すべきは、パスキーの作成と使用に関する新しいWindows Helloエクスペリエンスである。このアップデートにより、ユーザーインターフェースが大幅に改善され、より直感的なパスキー管理が可能になる。
新しいエクスペリエンスでは、ユーザーがパスキーをサポートするWebサイトにアクセスすると、パスキーの保存方法を選択するプロンプトが表示される。ユーザーは、Microsoftアカウントにパスキーを保存するか、別の方法で保存するかを選択できる。
Microsoftアカウントにパスキーを保存する場合、ユーザーは一度限りのセットアップを完了する必要がある。このプロセスでは、エンドツーエンドの暗号化を通じてパスキーを保護するための復旧キーの保存が求められる。セットアップ後は、顔認証、指紋認証、またはPINを使用してWindows Helloで認証を行い、パスキーを安全に保存および使用することができる。
この新しいエクスペリエンスにより、ユーザーはより簡単かつ安全にパスキーを管理できるようになり、パスワードレス認証の採用が促進されることが期待される。
パスキーのクラウド同期機能
Microsoftは、Windows 11デバイス間でパスキーを同期する新機能も発表した。この機能により、ユーザーは一度作成したパスキーを複数のWindows 11デバイスで利用できるようになる。
パスキーの同期プロセスは以下のように機能する:
- ユーザーが新しいパスキーを作成し、Windows Helloを使用して保存する。
- パスキーはMicrosoftアカウントと同期される。
- 別のWindows 11デバイスにMicrosoftアカウントでログインする。
- 一度限りのセットアップを完了する。
- 同期されたパスキーを新しいデバイスで使用できるようになる。
この同期機能により、ユーザーは複数のデバイスで一貫したログインエクスペリエンスを享受できる。ユーザーがすべきことは、Windows Helloで認証するだけである。
セキュリティ面では、パスキーはエンドツーエンドの暗号化で保護され、さらにデバイスのTPM(Trusted Platform Module)によって保護される。これにより、デバイスが侵害された場合でもパスキーの安全性が確保される。
パスワードレスな未来に向けた業界の動き
Microsoftの今回の発表は、テクノロギー業界全体がパスワードレス認証に向けて動いていることを示す最新の例である。この動きは、FIDO(Fast IDentity Online)アライアンスを中心に、主要プラットフォーム提供者が協力して進めているものだ。
先月、Googleもパスキー機能の拡張を発表しており、業界全体でパスワードレス認証の採用が加速していることが明らかになっている。この傾向は、フィッシング攻撃やデータ侵害に対して脆弱な従来のパスワードに代わる、より安全な認証方法への移行を示している。
Microsoftは、Windows 11におけるパスキーの可用性を高めることで、ユーザーが必要とする場所で常にパスキーを利用できるようにすることを目指している。同社は、Windows 11での体験、柔軟性、耐久性を考慮しながら、パスワードレスの未来への道を切り開いていく姿勢を示している。
業界全体のこの動きは、ユーザーの認証体験を向上させるとともに、オンラインセキュリティを大幅に強化することが期待されている。
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