YouTubeが、クリエイターとファンの交流を深める新機能「コミュニティーズ(Communities)」を発表した。この機能は、クリエイターのチャンネル内に専用のコミュニティスペースを設け、ファン同士やクリエイターとの直接的なコミュニケーションを可能にするものであり、YouTubeプラットフォーム内でのエンゲージメント強化を目指している。
YouTubeの新機能「コミュニティーズ(Communities)」とは
ニューヨーク市で開催された「Made on YouTube」イベントにて公開されたYouTubeの新機能「コミュニティーズ」は、クリエイターのチャンネル内に設置される専用のコミュニケーションスペースだ。この機能により、クリエイターは自身のコンテンツに関心を持つファンたちと直接交流し、より深い関係性を築くことが可能となる。
「コミュニティーズ」の主な特徴は以下の通りだ:
- ファン同士の交流:チャンネル登録者がお互いにチャットを楽しみ、議論を交わせる場を提供
- コンテンツ共有:ファンが写真や投稿を共有し、他のファンやクリエイターと交流できる
- クリエイターのコントロール:クリエイターが自身のコミュニティページ上で投稿を開始できる人を制御可能
YouTubeのProduct Management部門ディレクターであるBangaly Kaba氏は、イベント中で次のように述べている:「あなたを理解してくれる人々のグループを見つけたときの、あの魔法のような喜びを知っていますよね。コミュニティーズは、ファンの皆さんとそういった関係を築ける場所なのです。これは、あなたとファンの皆さんが、愛するトピックや動画についてより深いつながりを築ける場所です。単にアップロード間の更新を投稿したり、意見やアイデアを求めたりするだけでなく、初めて、登録者が自分たちで議論を始め、あなたや他の人々と交流できるのです」。
既存の「コミュニティ投稿」機能との違いについて、YouTubeは公式ブログで次のように説明している:「現在のコミュニティ投稿機能は、クリエイターの最新の動画や投稿に重点を置いています。しかし、私たちは初めて、登録者同士やクリエイターと直接チャットできる空間を構築したいと考えました」。大きな違いは、チャンネル登録をしていなければ投稿や閲覧が出来ない点だろう。
この新機能は、WhatsAppやInstagramといった他のプラットフォームで提供されているコミュニティ機能に対抗する形で導入されたと見られる。クリエイターにとっては、ファンとの交流のために別のプラットフォームに頼る必要がなくなり、ファンにとっては、好きなクリエイターを応援し、同じ興味を持つ他のファンとつながる場所がYouTube内に直接設けられることになる。
さらに、YouTubeはクリエイターやファンからのフィードバックを基に、以下の3つの主要ポイントを「コミュニティーズ」機能の設計に反映させたという:
- クリエイターとファンがより多くの方法で繋がりたいという要望
- ファンが同じ志を持つ仲間のコミュニティに所属し、包摂され理解されていると感じたいという欲求
- クリエイターが自身のコミュニティをより制御したいという希望
これらのニーズに応える形で、「コミュニティーズ」は設計されている。
「コミュニティーズ」の具体的な活用例と今後の展開
YouTubeは、すでにいくつかの「コミュニティーズ」が活発に機能している事例を紹介している。例えば、Sydney Cummings Houdyshellのフィットネスコミュニティ、Bake With Shiveshのクッキングコミュニティ、Mogswampのゲーミングコミュニティなどだ。
これらのコミュニティでは、ユーザーが自身のフィットネスの進捗を共有したり、クリエイターがファンに新しいレシピに挑戦するよう促したり、ファン同士で友好的なゲーミングチャレンジを楽しんだりと、様々な形で深い会話が生まれ、持続的なつながりが形成されているという。YouTubeは、「これらのコミュニティ全体で、より深い会話と持続的なつながりの形成が見られています」と述べている。
クリエイターにとっては、「コミュニティーズ」機能を通じて、ファンベースとより直接的に関わり、エンゲージメントを高める機会が提供される。例えば、新しいコンテンツのアイデアについてファンの意見を聞いたり、ライブイベントの告知をしたりすることが可能だ。これにより、クリエイターはDiscordやRedditといった外部プラットフォームに頼ることなく、YouTube内でファンとの交流を完結させることができるようになる。
一方、ファンにとっては、好きなクリエイターとより身近に感じられるだけでなく、同じ興味を持つ他のファンとの交流を通じて、新たな友人関係を築いたり、自身の創作活動のインスピレーションを得たりする機会となるだろう。これは、単なるコメント欄での交流を超えた、より深いレベルでのコミュニティ体験を提供することを意味する。
ロールアウトに関して、YouTubeは慎重なアプローチを取っている。現在、「コミュニティーズ」機能は実験段階にあり、モバイルデバイス上の限られたクリエイターのチャンネルでのみ利用可能だ。YouTubeによれば、2024年中により多くのクリエイターに対してテストを拡大し、2025年初頭にはさらに多くのチャンネルにアクセスを拡大する予定だという。
また、初期段階では、コミュニティページでの投稿開始は登録者のみに限定される。これは、コミュニティーズの質を保ち、スパムや不適切なコンテンツを防ぐための措置と考えられる。クリエイターは、自身のコミュニティページで誰が投稿を開始できるかを制御する能力を持つことになる。
この段階的なアプローチにより、YouTubeは機能の改善と最適化を行いながら、安全で有意義なコミュニティ空間を構築することを目指しているようだ。
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