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2025年モバイルアプリ市場、AI活用で新たな成長段階へ – Adjustレポート分析

2025年3月16日

アプリ分析プラットフォームAdjustが発表した「モバイルアプリトレンド2025」レポートによると、2022年に落ち込みを見せたアプリ市場は完全に回復軌道に乗り、2024年のグローバルアプリインストール数は前年比11%増、セッション数は4%増を記録した。AIの実用化とプライバシー規制への適応が進む中、業界は次なる成長ステージに突入している。

回復するアプリ市場と実用化段階に入ったAI技術

2022年の市場低迷から脱したアプリエコノミーは、2025年に向けてさらなる飛躍が期待されている。Adjustによれば、米国だけでも2025年のモバイル広告費は2,281億1,000万ドルに達し、デジタル広告費全体の66.4%を占める見通しだ。これは2024年の2,020億ドル、2021年の1,450億ドルから大幅に増加する数字となる。

特筆すべきは、AIと機械学習の位置づけの変化だ。2024年に生成AIが脚光を浴びたが、2025年にはこれらの技術が単なる流行から実用的な戦略ツールへと進化すると指摘されている。マーケターの88%が日常的にAIツールを使用し、69%が業務にAIを統合している現状を踏まえ、予測分析、インクリメンタリティテスト、リアルタイムのキャンペーン最適化などの分野で実際の効果を発揮するという。

Adjust CEOのAndrey Kazakov氏は「2025年のモバイル業界では、高品質なコンテンツを生成するためにAIが幅広く使用されるでしょう。AI主導の自動化により制作プロセスが効率化され、パーソナライズされたユーザー体験がモバイルアプリの価値を大きく向上させます」とコメントしている。

プライバシー重視の時代におけるユーザー信頼の獲得

プライバシー規制は引き続き業界の大きな課題だが、NielsenIQの調査によると、この変化に対する抵抗は9%低下している。代わりにプライバシーを最優先にしたテクノロジーの採用が増加しており、データ解放、成長の促進、ユーザーの信用構築につながっているという。

注目すべきトレンドとして、App Tracking Transparency(ATT)オプトイン率の上昇が挙げられる。2025年第1四半期には、世界平均で32%から35%へと上昇した。カテゴリー別では、ゲームアプリが39%と最も高く、Eコマースとショッピングアプリは28%から35%に増加している。これは、ユーザーのプライバシーに対する理解と信頼が徐々に高まっていることを示している。

カテゴリー別市場動向: 3大セクターすべてで成長加速

Eコマース/ショッピングアプリ:モバイルが小売りの中心に

Eコマースアプリは2024年に大幅な成長を遂げ、インストール数は前年比17%増、セッション数は13%増となった。地域別ではMENAが最も急成長し、インストール数は前年比55%増、セッション数は21%増を記録。LATAMもインストール数27%増、セッション数21%増と好調だが、北米は対照的にインストール数39%減、セッション数29%減と急落している。

レポートによれば、モバイルコマースは現在、世界中のEコマースの売上高の73%を占めており、2025年までにその収益は前年比21.3%増の2兆5千億ドルに達すると予測されている。米国では、2024年のホリデーシーズンのオンライン売上高が前年比9%増となり、モバイル主導のシーズンとなったことも指摘されている。

ゲームアプリ:ハイパーカジュアルとハイブリッドカジュアルの勢い

2024年のゲームアプリは、セッション数が前年比0.6%減少したものの、インストール数は4%増加した。地域別ではLATAMとMENAが成長をけん引し、LATAMはインストール数8%増、セッション数7%増、MENAはインストール数10%増、セッション数5%増となった。対照的に、北米はインストール数11%減、セッション数14%減と大幅に減少している。

サブカテゴリー別では、ハイパーカジュアルゲームがインストール数で27%、セッション数で11%と最大のシェアを獲得。戦略ゲームは2024年に前年比83%増と最も成長率が高く、カジノゲームとアーケードゲームのセッション数もそれぞれ32%増、23%増と大きく伸びている。

Adjustのコンテンツ・インサイトディレクターであるTiahn Wetzler氏は「市場の変動期を経て、モバイルゲームは再び成長軌道に乗っている」と述べている。

ファイナンスアプリ:仮想通貨の復活が成長を後押し

ファイナンスアプリは2024年にインストール数が前年比27%増、セッション数は24%増と大幅に成長した。特にバンキングアプリはインストール数33%増、セッション数19%増、仮想通貨アプリはセッション数が45%増と急成長している。

地域別ではAPACがインストール数41%増で最も成長し、ヨーロッパはセッション数63%増と突出した結果となった。LATAMもインストール数29%増、セッション数50%増と好調だが、北米はセッション数20%増に対しインストール数は7%減少している。

収益面では、ファイナンスアプリの月間アクティブユーザー数の平均収益(ARPMAU)が世界的に2023年の3.4ドルから2024年は4.1ドルに増加しており、収益化の改善が見られる。

マルチチャネル体験とウルトラカジュアルゲームの台頭

レポートでは、2025年の重要なトレンドとして、シームレスなマルチチャネルユーザー体験の提供が挙げられている。コネクテッドTV(CTV)、デスクトップ、PC/コンソールゲーム、ソーシャルプラットフォームなど、消費者は様々なプラットフォームを横断してブランドとつながることを期待している。CTVの広告費は成長を続けており、米国では2025年に343億ドル、2027年には424億ドルに達すると予測されている。

また、ハイパーカジュアルゲームの台頭も注目ポイントとして挙げられている。これらのゲームはシンプルなメカニズムと普遍的な訴求力を持ち、大量のダウンロードと迅速なユーザーエンゲージメントを生み出すとされる。特に、CPM(1000回表示あたりの広告費)が低いベトナムのような市場で効果を発揮しているという。

2025年に向けたマーケティング戦略のポイント

Adjustは、2025年に向けてマーケターが注力すべき戦略として以下のポイントを挙げている:

  1. チャネルの多様化: ペイドインストールの割合が増加する中、複数のネットワークパートナーと連携することで獲得コストを最適化
  2. プライバシー保護と次世代計測: 規制に準拠しながらもデータを最大限に活用するための技術導入
  3. AIと機械学習の実用的活用: インクリメンタリティ分析やマーケティングミックスモデリングなどの高度なツールを活用
  4. コンテクスチュアルターゲティング: 購入意欲を示すユーザーにリーチするための戦略的アプローチ
  5. リエンゲージメントの強化: 特にEコマースとファイナンスアプリでは、リアトリビューションのシェアが増加

Adjust日本ゼネラルマネージャーの佐々直紀氏は「AIの進化は、モバイルアプリ市場の成長を大きく後押ししています。日本市場でも、ユーザーの利便性を高める新たな取り組みが加速しており、アプリの成長がさらに勢いを増しています。こうした環境の中で、マーケターにはAIやデータをいかに活用するかが、これまで以上に求められています」と述べている。


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