Metaは2024年9月26日に開催されたMeta Connect 2024において、新たな低価格VRヘッドセット「Meta Quest 3S」を発表した。Quest 3Sは、昨年発売されたQuest 3と同等の性能を持ちながら、価格を大幅に抑えた普及価格帯の製品となっている。
Quest 3Sの特徴と価格
Quest 3Sの最大の特徴は、その低価格にある。128GBモデルの価格は48,400円からスタートし、256GBモデルは64,900円となっている。これは、Quest 3の512GBモデルが96,800円であることを考えると、かなり手に入りやすい価格となっている。
性能面では、Quest 3Sは昨年発売されたQuest 3と同じQualcomm Snapdragon XR2 Gen 2プラットフォームを採用している。これにより、Quest 3と同等の処理能力とMR(複合現実)機能を実現している。また、RAM容量も8GBとQuest 3と同等だ。
ディスプレイには、Quest 2と同じ1832×1920の解像度のLCDパネルを採用しており、Quest 3の2064×2208よりも低い解像度となっている。これが、コスト削減の大きな要因となっている。その他、Quest 3との詳細な比較は以下の通りだ。
- レンズ設計: Quest 3Sは、Quest 2と同様のフレネルレンズを採用している。一方、Quest 3はより薄型のパンケーキレンズを使用している。この違いにより、Quest 3Sの本体サイズはQuest 3よりも大きくなっている。
- ディスプレイ: Quest 3Sは、Quest 2と同じ1832×1920の解像度を持つLCDディスプレイを採用している。Quest 3は2064×2208の高解像度ディスプレイを搭載しており、より鮮明な映像を提供する。
- 視野角: Quest 3Sの視野角は96度(水平)で、Quest 3の110度よりも狭い。これにより、没入感に若干の差が生じる可能性がある。
- ストレージ容量: Quest 3Sは128GBと256GBの2モデルが用意されている。Quest 3は現在512GBモデルのみとなり、128GBモデルは廃止される予定だ。
- バッテリー持続時間: 興味深いことに、Quest 3Sは平均バッテリー持続時間がQuest 3よりも長いようだ。これは、より電力効率の良いディスプレイを採用していることが理由と考えられる。
- 重量: Quest 3Sの重量は、Quest 3よりも1グラム軽く、Quest 2よりも9グラム重い。
Quest 2 | Quest 3S | Quest 3 | |
---|---|---|---|
ビジュアル | |||
画面 | 1 × 液晶ディスプレイ | 1 × 液晶ディスプレイ | 2 × 液晶 |
解像度(片目あたり) | 1,832 × 1,920 (3.5MP) | 1,832 × 1,920 (3.5MP) | 2,064 × 2,208 (4.5MP) |
ピクセル/度 | 20 PPD | 20 PPD | 25 PPD |
リフレッシュレート | 60Hz、72Hz、80Hz、90Hz、120Hz | 120Hz | 72Hz、80Hz、90Hz、120Hz |
光学 | フレネル | フレネル | パンケーキ |
視野 | 96ºH × 90ºV | 96ºH × 90ºV | 110ºH × 96ºV |
パススルービュー | 白黒(4 PPD) | カラー(18PPD) | カラー(18PPD) |
光学調整 | 段階的な IPD アイレリーフ (付属のスペーサーを使用) | 段階的な IPD アイレリーフ (付属のスペーサーを使用) | 連続 IPD、段階的アイレリーフ(内蔵) |
IPD調整範囲 | 58mm、63mm、68mm | 58mm、63mm、68mm | 53~75mm |
パフォーマンスとIO | |||
プロセッサ | Snapdragon XR2 Gen 1 | Snapdragon XR2 Gen 2 | Snapdragon XR2 Gen 2 |
ラム | 6GB | 8GB | 8GB |
ストレージ | 128GB、256GB | 128GB、256GB | 512GB (以前は128GB) |
接続性 | Wi-Fi 6、Bluetooth | 不明(おそらくWi-Fi 6E、Bluetooth) | Wi-Fi 6E、Bluetooth |
コネクタ | USB-C | USB-C | オプションのドック用USB-C コンタクトパッド |
入力 | タッチv3(単三電池1本) ハンドトラッキング、音声 | タッチプラス(単三電池1本) ハンドトラッキング、音声 | タッチプラス(単三電池1本) ハンドトラッキング、音声 |
オーディオ | ヘッドストラップ内スピーカー 3.5mm補助出力 | ヘッドストラップ内スピーカー | ヘッドストラップ内スピーカー 3.5mm補助出力 |
マイクロフォン | はい | はい | はい |
バッテリー | 1.5~2.5時間(3,640mAh) | 2.5時間(4,324mAh) | 2.2時間(5,060mAh) |
重さ | 503グラム | 514グラム | 515グラム |
センシング | |||
ヘッドセットトラッキング | インサイドアウト(外部ビーコンなし) | インサイドアウト(外部ビーコンなし) | インサイドアウト(外部ビーコンなし) |
コントローラー追跡 | ヘッドセット追跡 (ヘッドセットの視線が必要) | ヘッドセット追跡 (ヘッドセットの視線が必要) | ヘッドセット追跡 (ヘッドセットの視線が必要) |
視線追跡 | いいえ | いいえ | いいえ |
表情追跡 | いいえ | いいえ | いいえ |
車載カメラ | 4 × IR | 2 × RGB、4 × IR、 2 × IRフラッドLED | 2 × RGB、4 × IR |
深度センサー | いいえ | いいえ | はい |
価格 | |||
希望小売価格 | 42,800円(128GB)、52,800円(256GB) | 48,400円(128GB) 64,900円(256GB) | 96,800円(512GB) |
これらの特徴により、Quest 3Sは新しくVRやMRを体験したいユーザーや、Quest 2からのアップグレードを考えているユーザーにとって、魅力的な選択肢となりそうだ。
ソフトウェア面では、両モデルともに同じMeta Horizon OSを搭載しており、機能面での違いはほとんどない。Quest 3Sは、Quest 3用に最適化されたゲームやアプリケーションをそのまま利用することができる。
価格戦略としては、Quest 3Sの導入により、Metaは幅広い価格帯でVRヘッドセットを提供することが可能となった。これにより、より多くのユーザーにVR体験を提供し、市場シェアを拡大することを目指していると考えられる。
Quest 3Sは、2024年10月15日に発売される予定で、現在予約を受け付け中だ。また、2025年4月30日までにQuest 3SまたはQuest 3を購入した顧客には、『Batman: Arkham Shadow』ゲームと3ヶ月分のMeta Quest+サブスクリプションがバンドルされる。
最後に、Quest 3Sの導入に伴い、MetaはQuest 2及びQuest Proヘッドセットを年末まで、もしくは在庫が無くなり次第販売を終了することも発表している。Meta曰く、新たな始まりには別れがつきものとのことだ。
Xenospectrum’s Take
Meta Quest 3Sの発表は、年末商戦の始まるこの時期に、VR市場に少なからぬ影響を与えそうだ。5万円を切る価格設定は、VR、MRを試してみたい多くの消費者にとって魅力的であり、導入へのハードルを大きく下げる物となるだろう。
しかし、アナリストたちが指摘するように、Metaはこの価格設定で利益を出すことは難しいだろう。これは明らかに市場シェア拡大を狙った戦略であり、長期的にはMetaのエコシステムを強化することにつながるかもしれない。
一方で、ハードウェアの違い、特にディスプレイの解像度や視野角の違いは、ユーザー体験に影響を与える可能性がある。VR体験の質を重視するユーザーにとっては、依然としてQuest 3が魅力的な選択肢となるだろう。
Quest 3SとQuest 3の並行販売は、Metaが異なるニーズを持つユーザーに対応しようとしていることを示している。これにより、VR市場全体の成長が促進される可能性があるが、同時に製品ラインアップの複雑化も懸念される。
今後、Quest 3Sが市場でどのように受け入れられるか、そしてこの戦略がMetaのVR事業にどのような影響を与えるかを注視する必要がある。VR技術の普及と進化が加速する中、消費者にとっては選択肢が増え、より手軽にVR体験を楽しめるようになることは間違いないだろう。
Source
コメント