U.S. Geological Survey (USGS)の研究チームは、アーカンソー州南西部のスマックオーバー層から、推定500万~1,900万トンの大規模なリチウム鉱床を発見したと発表した。この量は、2030年に予測される電気自動車用バッテリーの世界需要の9倍に相当する規模である。
画期的な発見の詳細
発見されたリチウムは、地下約1,000~3,400メートルに位置するスマックオーバー層の塩水(かん水)に溶け込んだ状態で存在している。USGSの研究チームは、機械学習を活用した新しい調査手法により、この巨大なリチウム資源の存在を特定することに成功した。
USGSのDavid Applegate所長は「このリチウムは、エネルギー転換に不可欠な重要鉱物である。米国内での生産増加は、雇用創出や製造業、サプライチェーンの強靭化に大きな影響を与えるであろう」とコメントしている。
環境への影響と採掘方法
従来のリチウム採掘は、露天掘りや蒸発池方式が一般的で、環境への負荷が大きいことが課題であった。しかし、アーカンソー州の場合、すでに石油やガス、臭素の生産過程で汲み上げている塩水からリチウムを抽出できる可能性がある。
Center for Biological DiversityのGreat Basin部門ディレクター、Patrick Donnelly氏は「電気自動車やバッテリー貯蔵は化石燃料からの転換に重要である。しかし、リチウム生産が地域社会や環境に与える影響にも注意を払う必要がある」と指摘している。
経済的影響と今後の展望
この発見により、米国のリチウム資源量は現在の推定値と比較して35%~136%増加する可能性がある。2022年時点で、米国は必要なリチウムの25%以上を輸入に依存していたが、この鉱床の開発により、輸入依存度を大幅に削減できる可能性が生じている。
研究チームの主任研究者であるKatherine Knierim氏は「南西アーカンソーのこの地域だけでも、米国のリチウム輸入を代替できる量が存在する」と述べている。
Xenospectrum’s Take
この発見は、米国のクリーンエネルギー転換において戦略的に重要な意味を持つものだ。特筆すべきは、既存の油田・ガス田インフラを活用できる点であり、これにより環境負荷を最小限に抑えながら、効率的な資源開発が可能になると考えられる。
ただし、商業生産に向けては、Direct Lithium Extraction(DLE)技術の実用化や環境影響評価など、複数の課題をクリアする必要がある。今後は、この資源開発と環境保護のバランスを取りながら、持続可能な開発モデルを確立できるかが焦点となると考えられる。
論文
- Science Advances: Evaluation of the lithium resource in the Smackover Formation brines of southern Arkansas using machine learning
参考文献
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