Appleが次世代プロセッサ「M5」チップの開発を進めており、2025年末の発表を目指していることが明らかになった。同社の内部情報に詳しいBloombergのMark Gurman氏によれば、この新チップの登場により、iPad Proシリーズなどのハイエンドデバイスは2025年末から2026年前半にかけて大幅なアップデートを受ける見通しだ。
M5チップ開発の背景
Gurman氏は、最新のニュースレター「PowerOn」の中で最新のM5チップについて言及している。同氏はM5の発売の時期やその機能について、これまでの情報などから発売時期などの推測を展開している。
Appleは現在、M4チップを搭載した新型Macの発売を順次進めている。24インチiMac、Mac mini、そして14インチ・16インチMacBook Proといった主力製品群が、AIタスクの処理能力を大幅に強化したM4チップへと移行する。
M4チップは、Neural Engineの処理能力が前世代から約2倍となる38 TOPS(1秒あたり38兆回の演算処理)を実現。この劇的な性能向上は、次世代M5チップへの布石となる重要な進化と位置付けられている。
現行のiPad Proシリーズは、約18ヶ月ごとにアップデートされてきた歴史がある。M5チップの開発スケジュールを考慮すると、次期iPad Proの発売は2025年末から2026年前半になるとGurman氏は予測している。
ただし、現行モデルが発売されてから約6ヶ月しか経過していないことから、デザインなど外観の大幅な変更は見送られる可能性が高い。主な進化はM5チップによる性能向上に集中すると見られている。
製造プロセスと新技術
M5チップの製造に関して注目すべき点は、TSMCの新パッケージング技術「Small Outline Integrated Circuit Packaging(SoIC)」の採用だ。SoICは、表面実装型の集積回路パッケージの一種で、従来のDIP(Dual In-line Package)と比較して30-50%小さい面積で、厚みも約70%減少している小型の実装形態だ。この技術により:
- チップの3次元積層構造の実現
- 熱管理の効率化
- 電流リーク低減
- 電気的性能の向上
が期待される。
一方で、TSMCの2nmプロセスノードへの移行は2026年以降になる見通しだ。著名アナリストのMing-Chi Kuo氏によれば、ウェハーコストの高さが主な要因とされている。
Xenospectrum’s Take
Appleのシリコン戦略は、着実な進化を遂げながらも慎重なアプローチを維持している。M4からM5への移行において注目すべきは、単なる性能向上だけでなく、SoICなどの新技術採用による質的な進化だ。
特に重要なのは、Neural Engineの大幅な強化が示すAI処理への注力姿勢である。これは、2024年から本格化するApple Intelligenceの展開を見据えた戦略的な判断と考えられる。
ただし、2nmプロセスの採用を急がない判断からは、コスト効率とリスク管理を重視する同社の現実的なアプローチも垣間見える。この堅実な進化戦略は、長期的には製品の安定性と信頼性の向上につながるだろう。
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