ベルギーの高圧送電網運営会社Elia Transmission Belgium(ETB)が進める世界初の人工エネルギー島「Princess Elisabeth Island(プリンセス・エリザベス島)」の建設プロジェクトが、重要な転換点を迎えている。欧州投資銀行(EIB)は最近、このプロジェクトに対して6億5000万ユーロ(約1,080億円)の融資を承認し、欧州の未来のエネルギーインフラ整備における重要性を改めて示した。
この革新的なプロジェクトは、ベルギーのオステンド沖合約45キロメートルに建設が予定されており、完成時には3.5GW(ギガワット)の電力を統合的に処理し、300万世帯以上への電力供給を可能にする。本プロジェクトの特筆すべき点は、単なる発電施設ではなく、北海に点在する巨大な洋上風力発電所からの電力を効率的に陸上へ送電するハブとしての機能を担うことにある。
プリンセス・エリザベス島は、世界で初めて高圧直流(HVDC)と交流(HVAC)の両方のインフラを備えたエネルギーハブとなる。この複合的なアプローチにより、従来の相互接続システムよりも効率的な設計が実現される。
現在、オランダのフリッシンゲンにおいて、島の基礎となるケーソン(中空のコンクリート製の巨大な構造物)の建設が進められている。これらは後に海中に沈設され、砂で充填されることで島の土台となる。環境への配慮も特徴的で、海鳥の繁殖場所となる棚や、海洋生物の生息地となる人工礁が設計に組み込まれている。
しかし、このプロジェクトは深刻なコスト上昇問題に直面している。当初22億ユーロと見積もられていた建設費用は、ロシアのウクライナ侵攻後のサプライチェーンの混乱や、欧州全体での再生可能エネルギーインフラ需要の急増により、70億ユーロ以上にまで膨らんでいる。
ベルギーのエネルギー相Tinne Van der Straetenは「このコスト増加は大きな懸念事項である」と述べながらも、「私たちには、このような変革的な大規模プロジェクトが必要なのです」と、その重要性を強調している。
EIBのRobert de Groot副総裁は、「プリンセス・エリザベス島プロジェクトは、ベルギーと欧州のエネルギー安全保障と独立性を高めるための重要な礎石となる」と述べ、近隣諸国との相互接続を促進する本プロジェクトの戦略的重要性を強調している。
2024年から2027年にかけての建設が予定されているこのプロジェクトは、EUが掲げる2030年までに再生可能エネルギーの割合を42.5%まで引き上げるという目標達成に向けた重要な施策となる。また、将来的には英国やデンマークなど近隣諸国との電力網の相互接続ポイントとしても機能し、より安定した電力供給の実現に貢献することが期待されている。
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