世界最大のEVバッテリーメーカーCATLが、画期的な高エネルギー密度を誇る全固体電池の試験生産を開始した。現行のリチウムイオン電池を大きく上回る500Wh/kgのエネルギー密度を実現し、2027年の実用化に向けて1,000人規模の専門チームによる開発を加速している。
技術革新がもたらす飛躍的な性能向上
CATLが採用する硫化物方式の全固体電池は、現行の液体リチウムイオン電池と比較して40%以上高いエネルギー密度を達成している。同社のWu Kai最高科学責任者によると、現在の液体リチウムイオン電池では350Wh/kgが限界とされる中、全固体電池では500Wh/kgという画期的な数値を実現。この性能向上は、電気自動車の航続距離を大幅に延長する可能性を秘めている。
現在、同社は実用サイズとなる20Ahセルの試験生産段階に到達している。これは単なる実験室レベルの成果を超え、実際の製品化に向けた重要なマイルストーンとなる。ただし、充電速度とサイクル寿命については依然として改善の余地が残されており、研究開発チームは両課題の解決に注力している。
巨額投資と専門人材による開発体制
CATLは2016年から全固体電池の研究を開始し、2022年末から投資を大幅に拡大。現在では1,000人を超える専門家チームを組織し、年間約10億元(約214億円)の人件費を投じている。この規模は、他の全固体電池開発企業の研究予算が数億元規模にとどまる中で際立っている。
同社会長のRobin Zeng氏は、CATLの全固体電池研究が「他社の追随を許さない」レベルにあると自信を示す。実際、現在の技術成熟度は9段階評価で4に位置し、2027年までに7-8レベルへの到達を目指している。この目標が達成されれば、プレミアムEV向けの小規模生産が現実のものとなる。
CATLの全固体電池開発は、現在36.7%という圧倒的な世界市場シェアを誇る同社が、次世代技術でも主導権を握ろうとする動きを加速させている証拠であり、結果如何ではグローバルなバッテリー産業の勢力図を大きく変える可能性があるだろう。
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