Meta(旧Facebook)が次世代VRヘッドセットの開発を本格化させている。BloombergのMark Gurman記者の報告によると、同社は消費者向けの「Quest 4」と、Quest Proの後継となる可能性を持つ新たな高級モデルを並行して開発中だという。
Quest Proの教訓を活かした新戦略
Meta Quest Proは、2022年後半に1,500ドルという高価格帯で市場に投入された同社初の本格的なMR(Mixed Reality)ヘッドセットだった。カラーパススルー、パンケーキレンズ、フェイストラッキング、アイトラッキングなど、当時のQuest 2には無い革新的な機能を搭載していた。
しかし、市場の反応は期待ほど好ましくなかった。発売からわずか5ヶ月後には価格を1,000ドルまで引き下げ、プロシューマー層の取り込みを図ったものの、結果的に発売から2年あまりで製品の販売を終了することとなった。
この経験から、Metaは重要な教訓を得たと考えられる。それは、革新的な技術の実装だけでなく、その技術がもたらす具体的な価値と、ターゲット市場のニーズとの整合性を慎重に見極める必要性であるということだ。現在開発中と報じられている新たな高級モデルにおいては、Quest Proでの経験を活かし、より明確な市場ポジショニングと価値提案を行うことが予想される。
新たな開発の方向性
Gurman氏のレポートによれば、現在Metaは、次世代機の開発において二つの異なるアプローチを進めているという:
- Quest 4
- Quest 3の後継機として位置づけ
- 消費者向け市場を意識した開発
- 具体的な仕様や価格帯は未公表
- 新型高級モデル
- Quest Proの経験を活かした新たな高級機種
- 開発初期段階にあると推測される
- 具体的な製品形態は未確定
この戦略は、多様化するVR/MR市場のニーズに応えるとともに、同社の技術的優位性を維持することを目指したものと考えられる。
Quest 4の開発については、現行モデルであるQuest 3の成功を基盤としている。Quest 3は現在、Quest 3S(48,400円)とともに同社のVRヘッドセットラインナップの中核を担っており、2024年9月には先代機種であるQuest 2の販売を終了している。この状況から、Quest 4の開発では、既存ユーザーの円滑なアップグレードパスを確保しつつ、新規ユーザーの獲得も視野に入れた製品設計が進められていると推測される。
一方、新たな高級モデルの開発は、より挑戦的な取り組みとなっている。Quest Proの経験から得られた教訓を活かしつつも、単なる後継機としてではなく、新たな市場価値の創造を目指していることが報告からうかがえる。特筆すべきは、この開発が以前中止が報じられていた「La Jolla」プロジェクトとは異なる新規のプロジェクトとして進行していることだ。
開発の背景には、競合他社の動向も大きく影響している。特に、Appleが約60万円のVision Proを市場投入したことで、高級セグメントにおける競争環境が大きく変化している。Gurman氏のレポートでは、Vision Proの需要減少も示唆されており、この市場動向がMetaの新型高級モデルの開発方針にも影響を与えている可能性がある。
複雑化する開発ロードマップ
Metaの製品開発状況は、以下のようないくつかの重要な動きが確認されている:
- コードネーム「La Jolla」とされていたQuest Pro 2のプロトタイプは開発中止
- 2027年を目標とした軽量MRデバイス「Puffin」の開発を推進
- 2030年までにAR機能を備えたスマートグラスの発売を目指す
Reality Labs部門のトップであり、MetaのCTOでもあるAndrew Bosworth氏は、Quest Proラインの継続について明確な答えを避けながらも、「Quest Pro 2が出るかもしれないし、出ないかもしれない」と述べていたが、曖昧な発言の陰で同社は開発を進めていたことが窺える。
2027年を目標とした「Puffin」と呼ばれる軽量MRデバイスは「かさばった眼鏡」のような形状になると報じられており、従来のヘッドセットとは異なるフォームファクターを模索する動きとして注目される。さらに、2030年までには同社のOrionプロトタイプの技術を活用したAR機能搭載スマートグラスの投入も計画されている。
これらの開発方針から読み取れるのは、Metaが短期的な製品サイクルと長期的な技術革新を巧みに組み合わせようとしている点である。Quest 4による既存市場の維持・拡大を図りながら、新型高級モデルで技術的優位性を示し、さらに将来的には「Puffin」やAR機能搭載スマートグラスによって、まったく新しい製品カテゴリーの創造を目指すという重層的な戦略が浮かび上がってくる。
Bosworth氏が言及するように、これらの開発プロジェクトは、即座の商業化よりも技術的な可能性の探求を重視する姿勢で進められている。この柔軟な開発アプローチにより、市場環境や技術動向の変化に応じて、開発の優先順位や方向性を機動的に調整できる体制を整えているといえるだろう
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