米中間の貿易摩擦が激化する中、中国政府が米国の巨大テクノロジー企業であるGoogle、NVIDIA、Intelに対する独占禁止法違反の調査を再開・検討していることが明らかとなった。
中国政府が米テクノロジー企業への独禁法調査を再開・検討
複数の情報筋によると、中国の国家市場監督管理総局(SAMR)は、GoogleとNVIDIAに対する独占禁止法違反の調査を再開した。さらに、Intelに対しても同様の調査を開始することを検討していると報じられている。
これらの調査は、米中間の貿易摩擦が激化する中で表面化しており、中国政府による米国への報復措置の一環である可能性が指摘されている。
調査対象となる企業と懸念事項
Google:Android OSの支配的地位乱用か
Googleに対する調査は、同社のAndroidオペレーティングシステム(OS)が中国のスマートフォンメーカーに与える影響に焦点が当てられている。具体的には、Android OSの市場における支配的地位を乱用し、OppoやXiaomiなどの中国企業を不利な立場に追い込んでいる疑いが持たれている。
この調査は、2019年にも開始されたが、その後棚上げされていた。しかし、米中対立の激化を受けて、2024年12月に再開され、2025年1月にはSAMRの担当者がGoogleの北京オフィスを訪問し、関連情報の提出を求めたと報じられている。
NVIDIA:Mellanox買収時の承諾事項違反か
NVIDIAに対する調査は、同社が2019年にネットワーク機器メーカーMellanox Technologiesを買収した際に、中国当局から課せられた条件に違反している疑いによるものである。
SAMRは2020年にこの買収を承認する際、独占的行為を防ぎ、中国顧客への安定供給を確保するための条件を付与した。しかし、承認後間もなく、業界関係者からの苦情が寄せられ始め、当局はNVIDIAがこれらの条件を遵守しているかどうか調査を進めている。
Intel:中国最大の市場でのビジネス慣行が対象か
Intelに対する調査は、まだ公式に発表されていないが、もし実施されれば、同社の中国におけるビジネス慣行が対象となる可能性がある。中国はIntelにとって世界最大の市場であり、同社はCPU市場で圧倒的なシェアを誇っている。
調査の具体的な内容は不明であるが、Intelの市場支配力を背景とした行為が問題視される可能性がある。
米中貿易摩擦の激化と報復措置の可能性
中国政府による米テクノロジー企業への独禁法調査の再開・検討は、米中間の貿易摩擦が一段と激化しているタイミングで行われている。
Trump政権は中国からの輸入品に対する関税を引き上げ、中国も報復として米国からの輸入品に関税を課すなど、両国間の対立が深まっている。
このような状況下で、中国政府が独禁法調査を貿易交渉の切り札として利用する可能性も指摘されている。清華大学国家戦略研究院の研究員であるLiu Xu氏は、「独禁法調査を貿易交渉の手段として使うことは、論争を引き起こす可能性がある」と指摘しつつも、報復措置としての側面を示唆している。
また、米国政府が中国のAIや高性能コンピューティング分野の発展を抑制しようとする動きを強めていることも、今回の調査の背景にあると考えられる。米国の規制強化に対抗する手段として、中国が独禁法調査を利用する可能性がある。
中国市場における米テクノロジー企業の重要性
もっとも、中国市場は米テクノロジー企業にとって重要な収益源であり、同時に中国企業も米国の技術に依存している状況がある。
Intelにとって中国は最大の市場であり、2024年には世界売上高の29%にあたる155億ドルを中国で売り上げている。NVIDIAにとっても中国は米国に次ぐ第2の市場であり、売上高の13%を占めている。Googleの検索エンジンなどは中国でブロックされているが、広告事業などを通じて収益を得ている。
独禁法調査の結果次第では、これらの企業は中国市場での事業展開に制約を受ける可能性があり、業績への影響も懸念される。
専門家の見解:交渉の道具か、対抗措置か
専門家は、中国政府による独禁法調査を、米中貿易交渉における交渉カードや、米国への対抗措置として捉える見方を示している。
中国の独禁法専門家であるJohn Gong氏は、「中国のスマートフォンメーカーは、Googleの市場慣行について長年不満を抱いてきた」と指摘し、今回の調査がAndroid OSに関するものである可能性を示唆している。
その上でGong氏は、「今回の調査はまだ始まったばかりであり、最終的な決定はまだ下されていない。交渉の余地は大いにある」と述べ、米中間の交渉次第で事態が変化する可能性を示唆した。
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