バーベキューの緊張をほぐす会話の多くは、「仕事は何をなさっていますか?」というようなものだ。
「大学で化学を教えています」と、私たちは答えるが、次に訪れるのは沈黙だ。新しい友人はたいてい、学生時代は化学が嫌いだったか、ひどい成績だったと言うだろう。
あるいは、最近のニュースの内容によっては、シャンプーに含まれるパラベンや、プラスチックに含まれるBPAが犬を毒するとか、あらゆるものに含まれる「永遠の化学物質」PFASについて話し始めるかもしれない。
化学にはイメージの問題があることは認めざるを得ない。
化学のイメージ問題
6歳になると、多くの子どもたちはすでに「化学」という言葉に否定的な感情を抱くようになる。
一般の人に化学物質とは何かと聞けば、悪いものだと答えるだろう。製品は自らを「化学物質不使用」と宣伝している。(世の中のあらゆるものは化学物質でできているのだから)科学的な意味はないが、消費者には響く主張である。
メディアはしばしば化学のイメージを悪くする。科学に関するポジティブなニュースは、ある病気の画期的な治療法が、最終的に患者への使用が承認されるかもしれない何年も前に発表されたとか、宇宙で見つけた最新の面白そうなものが話題になったとか、そういうことが多い。
一方、化学に関するニュースはネガティブなものが多い。列車の脱線事故による有毒化学物質の流出、アンモニア漏れによる避難勧告、倉庫火災による有毒煙の拡散で屋内にとどまるよう指示された住民などである。
現代世界は化学の上に成り立っている
しかし、世界中の誰もが、現在の生活水準の多くを化学者の進歩に負っている。空気中の窒素から肥料を作るハーバー・ボッシュ法がなければ、世界の人口の半分は十分な食事をとることができなかっただろう。アスピリンからRNAワクチンまで、現代の医薬品はすべて化学の発見によるものである。
多くの携帯電子機器を可能にするリチウム電池も化学の賜物である。まだまだ続く。
そして、実際にそうなるだろう。
あなたが目にするほとんどすべてのものを製造できる材料は、化学者によって開発された。鉱石から金属を分離するのは化学である。軽量プラスチック、ポリマー、複合材料の合成は化学である。ソーラーパネルはもちろん、コンピューターやインターネット革命を可能にしたシリコンの精製も化学である。白色LEDによるエネルギー効率の高い照明の開発も、化学の賜物である。
化学そのものも、他の学問分野、特に物理学の進歩によって可能になった。20世紀初頭に量子力学が発見されたことで、化学の理論的理解が進み、今では多くの化学反応や化学挙動が、高度なコンピュータープログラムを使って予測できるようになった。
同時に、化学者による分子や原子の研究は、より深い理解を求める物理学者に重要なデータを提供した。
化学と未来
化学者たちは、未来のための解決策にも取り組んでいる。
例えばバッテリー。今日の充電式電池の元となっているリチウムは希少な元素である。リチウムの単離は困難であり、その抽出には環境面での欠点がないわけではない。多くの化学者が代替物質の開発に取り組んでいる。未来の電池は、例えばナトリウムをベースにしたものになるかもしれないし、まだ開発されていない他の化学物質になるかもしれない。
次世代の太陽電池には新しい材料が必要だ。これらの材料は化学者によって合成され、装置で急速にテストされている。化学者たちは、シリコンと協力して太陽光からより多くの使用可能エネルギーを引き出せる材料や、太陽電池を非常に軽量で柔軟なものにできる材料を発見している。
クリーンな燃料として水素を製造するには、必要な化学反応をより速く行うための新しい触媒が必要になる。
化学者たちは臨床医と手を携えて、稀な疾患から残念ながら一般的な癌に至るまで、疾病治療の解決策に取り組み続けている。私たちは新しい抗生物質や医療機器用の抗菌コーティング剤を開発している。
化学者はまた、自然界や、私たちが自然界にどのような影響を与えているのかを研究している。気候変動は、大気中にCO₂を放出する化学反応にその根源があるかもしれませんが、気候を安定させるには、CO₂を捕獲して貯蔵したり、他のものに変換したりする新しい方法を発明することも必要だ。
中心的な科学
化学の数え切れないほど重要な応用はさておき、純粋な好奇心から生まれる基礎的な化学研究は極めて重要である。この仕事は、私たちがまだ知らない問題の解決につながる。
化学は時に「古い」科学とみなされることがある。高校では教えられるが、実社会での仕事の準備にはならない。せいぜい、化学はひどく汚染された産業に就職するためのものだと思われがちだ。
しかし、そうとは限らない。先日、子供の誕生日パーティーで、開業医のカップルが私たちの一人に仕事は何をしているのかと尋ねた。化学の話をすると、いつものような反応が返ってくるのではなく、「あなたは医学の全分野を可能にするのですね」という嬉しい驚きの答えが返ってきた。
これまで見てきたように、化学は過去と未来の社会の進歩の中核をなす学問である。今でも中心的な科学なのである。
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