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Intel、TSMC利用の継続を表明:外注率30%から15-20%へ最適化へ

Y Kobayashi

2025年3月7日

Intelは半導体製造戦略を大きく転換し、以前の「TSMCへの外注をゼロにする」計画を撤回して、長期的にTSMCとのパートナーシップを維持する方針を明らかにした。現在約30%のウェハーを台湾の半導体製造大手TSMCに外注しており、将来的には15-20%程度まで最適化する意向だが、完全な自社製造への移行計画はなくなった模様だ。

戦略転換の詳細と背景

Intelの企業投資家関係部門副社長John Pitzer氏は、Morgan Stanleyが主催したテクノロジー、メディア&テレコム会議で、重要な方針転換を明確にした。「1年前には可能な限り早くその比率をゼロにしようとしていましたが、それはもはや戦略ではありません」とPitzer氏は述べ、「TSMCは優れたサプライヤーであり、彼らとIntel Foundryの間に良い競争を生み出しています」と評価した。

この戦略変更はIntelの経営陣交代と連動している。暫定CEOのDave Zinsner氏とMichelle Johnston Holthaus氏には大きな決定権が与えられており、「世界クラスのファブレス企業と世界クラスのファウンドリーの開発」という二重アプローチを維持しながらも、具体的な実施方法を調整している。特に注目すべきは、ファウンドリー事業を最適化する前に、まずIntelの製品競争力を強化することを優先する姿勢だ。

製品別の製造戦略と18Aの進捗状況

現在、IntelのCore 200シリーズ「Arrow Lake」と「Lunar Lake」プロセッサはTSMCで製造され、その後Intelの先進パッケージング技術を用いて米国内で組み立てられている。このプロセスではTSMCにプレミアム料金を支払う必要があり、粗利益率に大きな影響を与えている。

次世代Core 300シリーズ「Panther Lake」CPUでは、コンピュートチップレットをIntelの最先端18A製造技術を用いて自社工場で製造する予定だ。Pitzer氏は18A技術の進捗について「Panther Lakeは今年の後半に発売予定で、その日程は変更されていません」と強調。「現在の歩留まりは、Meteor Lakeの開発同時期と比較してやや先行している」と付け加えた。

技術面では「数週間前に、Intel 18AのSRAM密度に関する技術論文が出され、TSMCのN2との比較が良好だった」と述べ、競争力を強調。「一般的に、Intel 18AはN3タイプ/N2タイプと比較している」と位置づけを説明した。今年前半には18Aでの最初の外部デザインをテープアウトする予定だという。

製品ポートフォリオと製造バランスの最適化

Intelは全製品の自社製造に固執せず、製品特性に応じた柔軟な製造戦略を採用する方針だ。高価なXeonプロセッサなどの高マージン製品は自社製造を優先する一方、ニッチ製品や各種コントローラーなどは引き続きTSMCを活用する可能性が高い。

これらのコントローラーは通常、トレーリングノード(古い製造プロセス)に依存しているが、IntelはCPU向けに設計された14nmと22nmプロセス技術しか持っておらず、これらのコントローラー製造にはTSMCなどのファウンドリーの活用が合理的だとされる。

最適な外注比率については「20%なのか、15%なのか、我々はそれを検討中です」とPitzer氏は述べ、今後の検討課題であることを示唆した。

半導体業界への影響と今後の展望

Intelの戦略転換は、単独ファウンドリーへの依存リスクを軽減する業界全体の傾向を反映している。地政学的緊張が高まる中、複数のサプライヤーとの関係維持は重要な戦略となっている。

また、この決定は半導体製造の複雑さと先端プロセス開発の難しさを示している。Intelのような巨大企業でさえ、すべての製造を自社で行うことの課題に直面し、現実的なバランスを模索している。

Intelは4月29日にSan Jose Convention Centerで「Intel foundry Day」を開催予定で、ファウンドリー戦略の最新状況が発表される見込みだ。半導体業界の競争激化の中、この戦略調整は業界全体に影響を与える重要な動きとなるだろう。


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