Appleは、プロフェッショナル向けのデスクトップコンピュータ「Mac Studio」の新モデルを発表した。M4 MaxおよびM3 Ultraチップを搭載し、最大512GBのユニファイドメモリ、Thunderbolt 5に対応するなど、大幅な性能向上を実現している。
新型Mac Studioの概要と主要スペック

新型Mac Studioは、外観デザインは前モデルを踏襲したまま内部を大幅に刷新している。最大の特徴は、M4 MaxとM3 Ultra(M4 Ultraではなく)という2つの異なる世代のチップを選択できる点だ。「Ultraは常にMaxよりも上位」というAppleのネーミング規則に従えば、M3 Ultraは世代が一つ前でありながら実際にはより高性能なプロセッサとなる。
「新しいMac Studioは、これまでAppleが作った中で最もパワフルなMacです」と、Appleのハードウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントであるJohn Ternus氏は述べている。新型Mac Studioは、プロのクリエイターやエンジニアリング分野のユーザーをターゲットに、その要求に応える究極のデスクトップPCとして位置づけられている。
M4 Max搭載モデル
M4 Max搭載モデルは以下のスペックを備える:
- 最大16コアCPU(10パフォーマンスコア、4エフィシェンシーコア)
- 最大40コアGPU
- 36GB~128GBのユニファイドメモリ
- 512GB~8TBのSSDストレージ
M3 Ultra搭載モデル
一方、M3 Ultra搭載モデルは:
- 最大32コアCPU(24パフォーマンスコア、8エフィシェンシーコア)
- 最大80コアGPU
- 96GB~512GBのユニファイドメモリ
- 1TB~16TBのSSDストレージ
Appleによれば、M3 Ultraは「これまでに作成した中で最も高性能なチップ」であり、実質的に2つのM3 Maxダイをシリコンインターポーザーで接続して作られている。1840億のトランジスタを搭載し、800GB/s以上のメモリ帯域幅を実現している。M4 Maxと比較して、CPU/GPUを多用する高負荷なワークロードで約2倍のパフォーマンスを発揮する。
注目すべきは、M3 UltraがM4 Maxよりも1世代前のアーキテクチャを採用しているにも関わらず、性能面では上回っている点だ。これは、M3 Ultraが2つのM3 Maxチップを組み合わせたことによる、コア数の多さが要因となっている。
最大512GBメモリ、16TBストレージ – プロの要求に応える拡張性

M3 Ultra搭載モデルは、パーソナルコンピュータ史上最大容量となる最大512GBのユニファイドメモリを搭載可能。これにより、6,000億以上のパラメータを持つ大規模言語モデル(LLM)を完全にインメモリで実行できるなど、AI開発においても強力なパワーを発揮する。ストレージは最大16TBまで拡張可能だ。
M4 Max搭載モデルも最大128GBのユニファイドメモリに対応。大量の画像処理や複雑な楽曲制作など、メモリ負荷の高い作業も快適に行える。
革新的な接続性と拡張性


新型Mac Studioの大きな改良点として、Thunderbolt 5テクノロジーの採用が挙げられる。これにより、最大120Gb/sという前世代の3倍の転送速度を実現している。M3 Ultra搭載モデルでは、前面と背面のすべてのUSB-CポートがThunderbolt 5に対応するが、M4 Max搭載モデルでは背面ポートのみがThunderbolt 5対応となる。
ポート構成は以下の通り:
- 背面:4つのThunderbolt 5ポート、10Gbイーサネットポート、2つのUSB-Aポート、HDMIポート、3.5mmヘッドフォンジャック
- 前面:2つのUSB-Cポート(M3 UltraモデルではこれもThunderbolt 5)とSDXCカードスロット
特筆すべきは、M3 Ultra搭載モデルでは最大8台の6K解像度Pro Display XDRまたは4台の8Kディスプレイをサポートする点だ。これにより、映像プロフェッショナルやデザイナーは複数の高解像度モニターを接続した作業環境を構築できる。
性能比較と実世界のパフォーマンス

新型Mac Studioは前世代と比較して大幅な性能向上を実現している。M4 Max搭載モデルは、M1 Max搭載の前世代と比べて以下の性能向上を示す:
- Adobe Photoshopでの画像処理:最大1.6倍高速
- Xcodeでのコードコンパイル:最大2.1倍高速
- ProResトランスコード:最大1.2倍高速
- Topaz Video AIでのビデオ処理:最大1.6倍高速
一方、M3 Ultra搭載モデルは、M1 Ultra搭載の前世代よりさらに大きな性能向上を達成している:
- LM Studioでの大規模言語モデル(LLM)のトークン生成:最大16.9倍高速
- Maxon Redshiftでのシーンレンダリング:最大2.6倍高速
- Oxford Nanopore MinKNOWでのDNA配列解析:最大1.1倍高速
- Final Cut Proでの8Kビデオレンダリング:最大1.4倍高速
実際のデモでは、M3 Ultra搭載モデルがCinema 4DとLM Studioを使用してPythonスクリプトでアセット配置を行う作業を、通常1日かかるところを数分で完了させている。また、今年リリース予定のCyberpunk 2077をフルレイトレーシングで60fpsで動作させるデモも行われたとのことだ。
Appleによれば、M3 Ultraは特にCPU/GPUを集中的に使用し、大量のメモリを必要とするワークロードにおいて、M4 Maxの約2倍のパフォーマンスを発揮するとのことだ。
価格と発売情報

新型Mac Studioの価格設定は以下の通り:
- M4 Max搭載ベースモデル:328,000円(36GBメモリ、512GB SSD)
- M3 Ultra搭載ベースモデル:668,800円(96GBメモリ、1TB SSD)
最上位構成のM3 Ultraモデルは、512GBのメモリと16TBのストレージを搭載し、価格は200万円を超える。M3 Ultraモデルは追加の冷却システムを備えているため、M4 Maxモデルより約900g重い。
注目すべきは、Mac ProはまだM2 Ultraを使用したままで、今回更新されていない点である。こちらがいつ更新されるのか、それともAppleはこれを廃止の方向に持って行きたいのかは不明だ。
新型Mac Studioは本日から予約受付を開始し、3月12日より販売開始。同日には新型M4搭載MacBook Airも発売される。
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