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General Fusion、初の磁化ターゲット核融合プラズマに成功 – 2026年ブレークイーブンへ前進

2025年3月14日

カナダのGeneral Fusionは2025年3月11日、同社の磁化ターゲット核融合(MTF)実証機「Lawson Machine 26(LM26)」において初のプラズマ形成に成功したと発表した。同社は2026年までの科学的ブレークイーブン達成を目指し、次の段階としてリチウムライナーによるプラズマ圧縮実験を計画している。

20年の研究開発が実を結ぶ — 核融合実証機LM26の成果

General Fusionが開発したLM26は、20年以上にわたる技術開発の集大成として、わずか16ヶ月という短期間で設計・組立・運用開始にこぎつけた。同社創設者兼最高科学責任者のMichel Laberge博士は「これまでに24のプラズマインジェクターを構築し、20万以上のプラズマを生成、さらにプラズマ圧縮からの核融合中性子生成も実現してきました」と述べ、「LM26で核融合を起こす準備は整っています」と自信を示した。

LM26で採用されている磁化ターゲット核融合(MTF)技術は1970年代に米国海軍研究所で開発された技術で、磁場と機械的圧縮を組み合わせることで核融合条件を実現する。プラズマとは、太陽や恒星の内部に存在する超高温の物質の第四状態で、核融合反応を起こすために必要不可欠である。

General Fusion: What is Magnetized Target Fusion?

同社の核融合プロセスは以下のように進行する。まず重水素と三重水素(トリチウム)を電気で叩いてプラズマ化し、磁場によってチャンバー内に閉じ込める。高速回転するリチウムの液体壁が中心に空洞を形成し、そこに水素プラズマを注入。次に蒸気駆動ピストンがリチウム壁を押してプラズマを圧縮し、1億度C以上まで加熱することで核融合反応を引き起こす仕組みである。

General Fusion: Magnetized Target Fusion Technology

General FusionのCEO、Greg Twinney氏は「私たちが得意とすることを行っています。機敏に革新的な技術を前進させ、重要な成果を出すことです。他のアプローチとは異なり、MTFは実用的な発電を基本から設計しています。そのため、LM26の次のステップとして家庭や企業にクリーンな核融合エネルギーを届けるための道筋は、他の技術よりも直接的で合理的です」と述べている。

現在のLM26はまだ液体リチウム壁を持たず、固体リチウムと電磁石に依存している。TechCrunchによれば、同社はすでに液体壁のプロトタイプで1,000回以上のテストを実施しているが、すべての要素を統合することは依然として巨大なエンジニアリング的課題だという。

2026年までの科学的ブレークイーブン達成を目指す

LM26は3つの技術的マイルストーンの達成を目指している。第1段階は1,000万℃(1キロ電子ボルト=keV)、第2段階は1,000万℃(10keV)の達成、そして最終目標は商業的に意味のある形での科学的ブレークイーブン相当(100% Lawson基準)の達成である。Lawson基準とは、核融合反応を持続させるために必要なプラズマの密度、温度、閉じ込め時間の関係を表す指標だ。同社は2026年までに科学的ブレークイーブンに到達することを目標としている。

核融合発電における「ブレークイーブン」には2つの定義がある。「科学的ブレークイーブン」は燃料に直接供給されたエネルギー以上を核融合反応が生産することを指し、「商業的ブレークイーブン」は施設全体の消費より多くの電力を生産することを意味する。現在のところ、米国エネルギー省の国立点火施設(National Ignition Facility: NIF)のみが科学的ブレークイーブンに到達している

通常の核融合アプローチには主に2種類ある。一つは大型トカマク装置などによる磁気閉じ込め方式で超伝導磁石を使用し、もう一つはNIFが採用する慣性閉じ込め方式でレーザーを使用する。これらに対しGeneral FusionのMTF技術は、機械的圧縮を用いて短いパルスで核融合条件を作り出すため、コスト効率の良い発電所設計が可能になるという。

カナダ経済への貢献と商業化への展望

General Fusionの技術的進歩は、カナダ政府からの長期的支援によって可能となった。2019年以降、Strategic Innovation Fundから6,900万カナダドルの支援を受け、これが民間資本誘致に貢献。現在までに総額4億4,000万カナダドルの資金調達に成功している。

同社によれば、2019年以降、公的資金1ドルに対して世界の民間投資3ドルをカナダ経済にもたらしており、ブリティッシュコロンビア地域の経済にも約1億4,100万カナダドルを貢献している。

カナダ天然資源大臣のJonathan Wilkinson氏は「General Fusionの取り組みは、カナダが原子力科学技術における強力な革新者であることを裏付けています」と評価。「連邦政府の投資、産業協力、学術研究の組み合わせにより、私たちの原子力産業はカナダでの雇用を増やし、エネルギー経済を保護しながら、世界的な経済機会を捉える態勢が整っています」と述べた。

商業化された場合、1つのGeneral Fusion発電所は約15万カナダ家庭に無炭素電力を供給できる設計となっている。同社の現在の設計では、2台の150MWe(メガワット電気出力)機械を並行稼働させて約300MWeを生産する計画だ。エネルギー需要に近い場所に配置可能で、長距離送電線やパイプラインの必要性を最小化できるという利点もある。

LM26が軌道に乗り、技術的マイルストーンを達成することで、General Fusionは次の10年以内に商業的な磁化ターゲット核融合発電を電力網に供給するという使命に一歩近づくことになる。プラズマ圧縮試験が始まるにつれ、同社はクリーンエネルギーの未来を再形成する準備が整いつつある。


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