Microsoftは2025年5月27日をもって、Microsoft Storeで提供されているリモートデスクトップアプリ(Remote Desktop app)のサポートを終了し、新たな「Windows App」への移行を必須とすると発表した。この変更はリモートワーカーやIT部門に直接影響するため、ユーザーは早急に対応策を講じる必要がある。本記事では、影響範囲と具体的な移行方法を解説する。
サポート終了の対象と影響
終了するのはMicrosoft Store版「リモートデスクトップ」アプリ
今回サポートが終了するのは、Microsoft Storeからダウンロードできる「Microsoft リモート デスクトップ」のみである。Windows OSに数十年前から標準搭載されている「リモートデスクトップ接続」アプリは引き続き利用可能で、今回の変更の影響を受けない。

名称が非常に似ているため混乱を招きやすいが、リモートデスクトップ接続アプリはWindows 11の一部であり、何十年も存在しているアプリで、個人アカウントでも利用可能なRDP(Remote Desktop Protocol:リモートデスクトッププロトコル)に依存している機能だ。
影響を受けるサービス
サポート終了後、「リモートデスクトップ」アプリを通じた以下のサービスへの接続がブロックされる:
- Windows 365
- Azure Virtual Desktop
- Microsoft Dev Box
「2025年5月27日以降、Microsoft Storeからの リモートデスクトップアプリ を介した Windows 365、Azure Virtual Desktop、Microsoft Dev Box への接続はブロックされる」とMicrosoftは明言している。
代替となる「Windows App」の特徴
統合されたインターフェース

「Windows App」は2024年9月に正式リリースされた比較的新しいアプリケーションで、Microsoftはこれを「Windowsへの統一ゲートウェイ」と位置づけている。PCやタブレット、スマートフォン、WebブラウザからクラウドPC、仮想デスクトップ、ローカルPCへのアクセスを提供する。

主な機能と改善点
Windows Appが提供する主な機能と改善点は以下の通り:
- 複数のWindowsサービスへの統一アクセス
- カスタマイズ可能なホーム画面
- マルチモニターサポートと動的な解像度調整
- デバイスリダイレクトのサポート
- Microsoft Teamsの最適化
- 簡単なアカウント切り替え
Windows Appを使用することで、デバイスのリダイレクトがサポートされ、Microsoft Teams用に最適化されているため、リモートワークの体験も向上する可能性がある。
移行への準備と対応策
移行対象ユーザーの確認
現在Microsoft Store版のリモートデスクトップアプリを使用してWindows 365、Azure Virtual Desktop、Microsoft Dev Boxに接続しているユーザーは、2025年5月27日までに「Windows App」への移行が必要となる。
一時的な回避策
ただし、現時点では「Windows App」にはいくつかの機能制限があり、すべてのユーザーにとって完全な代替にはならない可能性がある。Microsoftは以下の回避策を推奨している:
- Remote Desktop Servicesの接続:「Windows Appでこの接続タイプのサポートが利用可能になるまで、RemoteApp and Desktop Connectionを使用する」
- リモートデスクトップへの接続:「Windows Appでこの接続タイプのサポートが利用可能になるまで、リモートデスクトップ接続を使用する」
Windows App上でリモートデスクトッププロトコル(RDP)がサポートされるまでは、リモートマシンへの接続にはこの「リモートデスクトップ」アプリが引き続き使用できる。
IT管理者への推奨事項
IT管理者には、期限が到来した時にユーザーが慌てないよう、今から準備を始めるよう促されており、Microsoftの「既知の問題と制限事項リスト」を確認し、移行前にWindows Appで不足している機能を把握することが推奨されている。
Windows Appの制限事項と注意点
アカウント制限
現在、Windows Appを使用するには、学校または職場のMicrosoftアカウントが必要であり、個人アカウントではサポートされていない点には注意が必要だ。
機能の不足
Windows Appには現時点でいくつかの機能制限がある:
- Windowsプラットフォームでは、Remote Desktop ServicesとリモートPC接続をサポートしていない
- プロキシサーバーがプロキシ/HTTP認証を必要とする環境では動作しない
- Active Directory Federation Services(AD FS)によるシングルサインオン(SSO)はサポートされていない
- Private Linkによる接続やローカルスタートメニューの統合も現時点ではサポートされていない
Windows Appがまだすべての接続を完全にサポートするまでの間、一時的な回避策を使用することをMicrosoftは推奨している。
変更の背景と今後の展望
クラウド戦略の一環
この変更はMicrosoftのより広範なクラウド戦略の一環と見られている。Microsoftは「Windowsを完全にクラウドに移行し、AI機能サービスの向上とユーザーのデジタル体験の完全なローミングを可能にする」という長期的な目標を持っており、これに向けての取り組みだろう。
Windows Appの開発経緯
Windows Appは2023年からプレビュー版が提供されており、約1年間のテスト期間を経て2024年9月に正式リリースされた。Microsoft社内では「Windowsへの統一ゲートウェイ」という位置づけがされているものの、ユーザーからの反応は必ずしも肯定的ではなく、そもそも認知度も余り高くないのが現状だ。
ユーザーの反応と懸念
Windows Appは2024年の登場時もあまり熱心に歓迎されてはおらず、一部のユーザーからは「これまでで最も愚かなリブランディング」とも評されている。この評価は単なる名称変更以上の問題、特に機能の制限に対する懸念を反映している可能性がある。
将来的な機能拡張の可能性
現時点でWindows AppにはRDPサポートが欠如しているが、今回RDPサポートへの言及は、Microsoftが最終的にWindows Appで個人アカウントをサポートする可能性があることを意味するものかも知れない。Microsoftの長期的な戦略上、個人ユーザーを含むすべてのユーザーを新プラットフォームに移行させることは理にかなっており、将来的な機能強化が期待される。
リモートワークへの影響
リモートワークが常態化している現代において、リモートデスクトップ関連ツールの変更は多くの企業と個人に影響を与える。特にIT部門は2025年5月までに、組織内のすべてのユーザーが適切なツールに移行できるよう計画を立てる必要がある。この移行期間中、混乱を最小限に抑えるための準備が重要だ。
Source
- Windows IT Pro Blog: Windows App to replace Remote Desktop app for Windows