Googleは、Android 16 Beta 3が予定通りリリースし、OS開発の重要なマイルストーンである「プラットフォームの安定版（Platform Stability）」に到達したことを発表した。これによりAPIと動作が確定し、開発者はAndroid 16向けアプリをGoogle Playストアへ公開できるようになった。このリリースにはセキュリティとアクセシビリティの新機能も含まれている。
Android 16 Beta 3がプラットフォームの安定版に到達
「プラットフォームの安定版」とは、Androidの開発サイクルにおいて、APIが固定され、アプリに影響を与える動作が最終決定された状態を指す。この段階に達すると、開発者はAndroid 16をターゲットとしたアプリを開発・テストし、Play Storeに公開できるようになる。これはアプリ開発者にとって非常に重要なマイルストーンであり、新バージョンのAndroidに対応したアプリの準備を本格的に進められることを意味する。
GoogleのProduct Management部門のVP、Matthew McCullough氏は公式ブログで「Android 16が今日Beta 3でプラットフォームの安定版に正式に到達しました！」と発表。これにより「APIサーフェスが確定し、アプリ向けの動作が最終決定され、Android 16をターゲットにしたアプリを今すぐPlay Storeにプッシュできます」と述べている。
Android 16 Beta 3の到達したプラットフォームの安定版は、Googleのモバイルプラットフォーム開発における着実な進捗を示している。特に注目すべきは、アクセシビリティに関する改善だ。ブロードキャストオーディオとアウトラインテキストの導入は、多様なユーザーのニーズに応えるGoogleの継続的な取り組みを反映している。また、ローカルネットワーク保護機能は、スマートホーム機器やIoTデバイスの普及が進む中、プライバシーとセキュリティの強化を図る重要な一歩と言える。
Android 16 Beta 3で導入された新機能
ブロードキャストオーディオのサポート
Android 16 Beta 3では、Pixel 9デバイスにおいて、互換性のあるLE Audio補聴器でのAuracastブロードキャストオーディオをサポートするようになった。これはAndroidのオーディオアクセシビリティ強化の一環である。LE Audio標準に基づいたAuracastにより、互換性のある補聴器やイヤーバッドは、空港、コンサート、教室などの公共の場所から直接音声ストリームを受信できるようになる。
この機能は、聴覚障害を持つユーザーにとって日常生活での音声情報へのアクセスを大幅に改善する可能性を秘めている。特に公共の場での案内放送や緊急情報の伝達において、重要な役割を果たすことが期待される。
最大テキストコントラスト用のアウトラインテキスト
視力の低いユーザーはしばしばコントラスト感度が低下しており、物体を背景から区別することが難しい場合がある。Beta 3では、高コントラストテキストに代わる「アウトラインテキスト」が導入された。これはテキストの周りに大きなコントラストエリアを描画し、可読性を大幅に向上させる。
Android 16には、アプリがこのモードが有効かどうかを確認したり、リスナーを登録したりできる新しいAccessibilityManager APIも含まれている。これは主に、ComposeなどのUIツールキットが同様の視覚体験を提供するためのものである。この変更により、サードパーティアプリも一貫したアクセシビリティ体験を提供できるようになる。
ローカルネットワーク保護のテスト機能
Beta 3では、将来のAndroidメジャーリリースで予定されているローカルネットワーク保護（LNP）機能をテストする機能が追加された。これにより、ユーザーはローカルネットワーク上のデバイスにアクセスできるアプリをより細かく制御できるようになる。
現在、INTERNET権限を持つアプリは自動的にユーザーのローカルネットワーク上のデバイスと通信できるが、LNPが実装されると、アプリはローカルネットワークにアクセスするために特定の権限を要求する必要がある。Beta 3では、LNPはオプトイン機能として提供されており、開発者はこの機会を利用してアプリをテストし、ローカルネットワークアクセスに依存する部分を特定できる。
この変更は、スマートホームデバイスやネットワーク接続機器の増加に伴い、ユーザープライバシーとセキュリティを強化するための重要なステップである。ただし、既存のアプリ、特にIoTデバイスとの通信に依存するアプリには大きな影響を与える可能性がある。
Pixelデバイスにバッテリーヘルス機能が追加
Android 16 Beta 3では、GoogleのPixelデバイスに「バッテリーヘルス」統計ページが追加された。この機能開発は2022年10月にさかのぼるもので、設定アプリ > バッテリー > バッテリーヘルスからアクセスできる。
このページでは「バッテリーヘルスステータスの表示とバッテリー寿命を延ばすためのヒント」を提供する。すべてが「正常」であれば、大きな緑色のチェックマークが表示される。最初のセクションである「バッテリー容量」を展開すると、「これは現在のバッテリーが新しい標準バッテリーと比較して保持できる充電の推定パーセンテージです。バッテリー容量は時間の経過とともに減少します」という説明が表示される。
バッテリーヘルス機能は、現在のところPixel 9シリーズとPixel 8 Proで確認されている。この新ページは、バッテリー > バッテリー診断 > 電話が非常に熱いからデバイス温度を確認する機能や、端末情報 > バッテリー情報からサイクルカウントを確認する機能に加わる形となる。
この機能は、デバイスの長期使用におけるバッテリー管理をより透明にし、ユーザーが自分のデバイスの状態を把握しやすくするものだ。近年のスマートフォンのバッテリー交換の難しさを考えると、このような機能はデバイスの寿命を延ばし、サステナビリティに貢献する可能性がある。
開発者向けの重要な変更点
Android 16 Beta 3のリリースに伴い、開発者はアプリがAndroid 16で適切に動作するよう準備を進める必要がある。Googleは特に以下の変更点に注目するよう呼びかけている：
JobSchedulerの変更
Android 16ではJobSchedulerのクォータがより厳格に適用される。アプリがトップにある間、フォアグラウンドサービスが実行中、またはアクティブスタンバイバケットにある場合に適用が行われる。setImportantWhileForegroundはno-opになり、新しい停止理由STOP_REASON_TIMEOUT_ABANDONEDは、アプリがジョブを停止できなくなったことを検出した場合に発生する。
これらの変更は、バックグラウンドでのジョブ実行をより厳格に制御することで、バッテリー消費とシステムリソースの最適化を図るものである。
ブロードキャストの変更
優先度を使用した順序付きブロードキャストは、同じプロセス内でのみ機能するようになる。クロスプロセスの順序付けが必要な場合は、他のIPCを使用する必要がある。
この変更は、アプリ間通信の安全性と効率性を高めるための措置だが、複数のアプリ間で連携するシステムには影響を与える可能性がある。
ARTの変更
リフレクション、JNI、またはその他の方法でAndroidの内部にアクセスする場合、アプリが動作しなくなる可能性がある。Googleは「これは決してベストプラクティスではない」と注意喚起し、徹底的なテストを推奨している。
インテントとセキュリティ
Android 16では、インテントリダイレクト攻撃に対するセキュリティが強化されている。開発者はインテント処理をテストし、絶対に必要な場合にのみ保護機能をオプトアウトするよう推奨されている。
16KBページサイズ対応
アプリが16KBページサイズに対応していない場合、新しい互換モードフラグを使用できるが、最高のパフォーマンスを得るためには16KBへの移行が推奨されている。
これらの変更は全体として、ユーザー体験の向上とセキュリティの強化を目指すものであるが、開発者は既存のアプリがこれらの変更によって影響を受けないよう、早期のテストが必要となる。
2025年のAndroidリリース計画
GoogleはAndroid 16の開発ブログで、2025年のAndroidリリース計画についても言及している。2025年には2つのAndroid APIリリースが予定されている：
- Q2（2025年第2四半期）：Android 16の安定版リリース。アプリに影響を与える可能性のある動作変更を含む2025年唯一のリリース。
- Q4（2025年第4四半期）：機能更新、最適化、バグ修正が含まれるマイナーリリース。現行の非SDK四半期リリースと同様に、意図的なアプリ破壊動作の変更は含まれない。
GoogleはAndroidの四半期リリースを継続し、Q1およびQ3のアップデートでは継続的な品質向上のための段階的な更新を提供する予定である。また、GoogleはデバイスパートナーとともにQ2リリースをできるだけ多くのデバイスにもたらすための追加の取り組みを行っている。
Google Playのアプリに対するターゲットAPIレベル要件と関連日付については変更がなく、年に1回のメジャーAPIレベルに関連する要件が継続される予定である。
この2つのAPIリリース計画は、Androidのリリースサイクルにおける重要な変化を示している。これはデベロッパーがより計画的に開発を進められるようにするとともに、エコシステム全体の安定性を高めることを目指していると考えられる。
将来の設定アプリリデザインの可能性
Android Authorityによると、GoogleはAndroidの設定アプリの大規模なリデザインを準備している可能性がある。Android 16 Beta 3のコードを調査した結果、より「表現力豊かな」設定アプリのデザインに取り組んでいる兆候が発見された。
新しいデザインでは、Material Design 3のスイッチが採用され、各項目が別々の視覚的に区別されたカードに配置され、サブページが存在する場合には小さな矢印アイコン（キャレット）が使用される予定である。また、ほとんどのページでは、デフォルトでヘッダーが最上部に配置されるようになる。これにより、開発者オプションページなどで一目で表示できる項目数が増加する。
このリデザインはAndroid 16 Beta 3には含まれておらず、いつリリースされるかは不明のようだ。Android 16の安定版リリース、Android 16の四半期リリース、あるいは来年のAndroid 17アップデートで導入される可能性がある。また、Googleがこのデザインを完全に破棄する可能性もある。
このような設定アプリのリデザインは、Android OSの全体的なユーザーエクスペリエンスに大きく影響する可能性がある。設定アプリはすべてのAndroidデバイスで最も重要なアプリの一つであり、メニューやトグルの数の多さに対処するために、ベンダーができるだけナビゲーションを容易にすることが重要だ。
Android 16 Beta 3の入手方法
Googleによると、サポートされているPixelデバイスを登録すれば、このベータ版と今後のAndroid Betaアップデートを無線（OTA）で入手できる。Pixelデバイスを持っていない場合は、Android StudioのAndroidエミュレータで64ビットシステムイメージを使用できる。
すでにAndroid 16 Beta 2を使用しているか、Androidベータプログラムに参加している場合は、Beta 3へのOTAアップデートが提供される。
Android 16での開発に最適な環境として、Googleは最新のAndroid Studio（Meerkat）の使用を推奨している。セットアップが完了したら、以下のことを行うことが推奨されている：
- 新しいSDKに対してコンパイルし、CI環境でテストし、問題があればフィードバックページのトラッカーで報告する
- 現在のアプリの互換性をテストし、Android 16での変更による影響を確認する
- アプリをAndroid 16を実行しているデバイスまたはエミュレータにインストールし、広範囲にテストする
ベータビルドをインストールすると、すべての今後のプレビューとベータ版に対するOTAアップデートが自動的に提供される。
Source
- Android Developers Blog: The Third Beta of Android 16
